第136話 おっさん、仇を仕留める3人目

 ずしんとボディに来た。

 頭が駄目なんで、防御に使っている品物の耐久性を削りに掛かったな。

 当てるのなら体の方が当て易い。


 銃声がした場所に行くとトラばさみが仕掛けてあった。

 見事引っかかったが、魔力壁のおかげで問題はない。

 こんな装備は持っていなかったはずだ。

 この場所はヴィスの狩場なんだろう。


 普段はここにモンスターを追い込んで仕留めるという事をやっていたと思われる。


 ボディにずしんと来た。

 考えている場合ではないな。

 銃声がした場所に急ぐ。

 むっ、トラップがないな。

 だが、妙な臭いがする。

 血と臓物が腐った臭いだ。

 その時、頭上から黒い何かが俺に覆いかぶさった


 俺はそれを無我夢中で払いのけた。

 なんだ。

 ただの黒豹のモンスターか。

 俺はまた大ヒルとかもっとおぞましい何かだと思った。

 それなら、精神に大ダメージなんだが。


 唸るなよ。

 分かったから。

 俺はメイスを出して黒豹の背骨を叩き折った。


「力も増しているって訳」


 ヴィスの声が聞こえた。


「無敵かもよ」

「冗談。タネがあるはずよ」


 そして、また腹に弾丸が一撃。

 はいはい、また銃声のした場所に行くと何かあるんだろ。

 行かないという選択肢はないんだけどな。

 行くとなんと落とし穴。

 また、古典的な。

 穴の底には鉄の杭が上を向いて何本もある。

 モンスターだったら、これでいいんだろうが。

 どうなんだ。


 俺、俺はもちろん引っ掛かった。

 ダメージはゼロだけどな。


 いい加減に学習しないとな。

 穴を上がった所にボディに来たので、次の狙撃ポイントを予測して場所を移動した。


 そうしたら、ワイヤーと手榴弾を使ったトラップがありましたよ。

 俺の体に手榴弾の破片が刺さろうと飛ぶが、魔力壁でなんともない。

 服がボロボロになったので着替える余裕もある。


「いいかげん死んでくれない」

「嫌だね。俺は復讐者。地獄から舞い戻った男だ。二度も地獄に落ちるほど間抜けじゃない」



 それからはもう、ヴィスが諦めたのか。

 トラップは無しの銃撃のみになった。

 森の追いかけっこは日が暮れるまで続いた。


 ふっ、夜になったな。

 ヴィスは夜目が効くから、自分の方が有利だと思っているだろうが。

 俺には現代製品という味方がある。


 赤外線ゴーグルの出番だ。

 ふふっ、油断したな。

 俺に見えないと思って直接見える所に出て来たぞ。

 丸見えだ。

 俺は人形を出して、ほふく前進でヴィスの後ろに回った。

 人形が銃弾をくらい、しぼみ倒れる。

 ダッチワイフと呼ばれる人形だよ。

 悪いか

 実際に地球にいた時に買った訳ではないが。

 ネット通販で調べた事があるから、魔力通販で買える。


「やった。遂に倒したわ」

「残念」

「なんで」


 振り返った瞬間。

 メイスで一撃。


 馬鹿だな。

 仕留めたと思った時ほど危険だって教わらなかったのか。

 創作物、特に映画では有名だぞ。


 ヴィスの死骸をアイテムボックスに入れて、後一人だなと呟いた。

 ヴィスの死骸は後で埋めてやろう。

 少なくとも最後の闘いは卑怯じゃなかったと思う。

 手段は罠と銃撃だが、この場から逃げなかった。

 戦士として葬ってやろう。


 墓標にするためヴィスの銃も持っていく事にした。

 コンパスを頼りに街に帰る。

 門は夜なので堅く閉まっていた。

 しゃあない。

 ここで朝まで過ごすか。


 モンスターの吠え声を聞きながら、考える。

 ダカードはどんな男なんだ。

 俺が思うに見栄っ張りで内心は臆病な男に見えたのだがな。

 犯罪に踏み切らせた切っ掛けがあるはずだ。

 何か、俺が知らないピースがあるような気がしてならない。


 色々と考えている間に夜が明けて門が開いた。


「あんたは昨日の。妹さんには会えたかい」

「ああ、会えたよ。たっぷりスキンシップをした。死ぬほどな」

「そうか、良かったな」


 俺は宿に行き、パティの部屋をノックした。


「パーティメンバーは始末した。ダカードの行先は分からない。ただ、良い所の出だと聞いた」

「ええ、そうね」

「何か知っているのか」

「相槌を打っただけよ」


 とにかく一つ片付いた。

 後一人。

 手掛かりは学園都市フォルドゥだな。

 これに賭けるしかないだろう。

 パティは相変わらず何か隠している。

 ダカードに会えばはっきりするだろう。


 俺の予想では俺と同じ理由で仇討ちなんだが。

 殺したいという殺意みたいな物が感じられない。

 やっぱり借金か。

 いやいや、違うな。

 何か必死さはある。

 まあ良い。

 いずれ分かる時が来るに違いない。

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