第132話 おっさん、プロジェクトを立ち上げる

 俺はライニーアを離れた所で地球に戻った。


「なんや、けったいな顔しとるな」


 そうアルマに言われた。


「一つ区切りがついた。後二つだ。魔力通販メールオーダー


 おっ、ベティナのガラクタがリストにある。

 まずは魔力駆動の心臓部を買って。


 俺は会社に出社した。


「あれっ、社長さっき帰られたのでは」

「用事が出来た。この商品を解析して模造品を作りたいのと利用法を探りたい」


 俺は魔力駆動の心臓部を出した。


「ちょっと失礼します。壊しても構わないですかね」

「ああ、スペアは沢山ある」


「これは、魔力回路の集積回路ですか。これを解析して作るとなると大学に協力を依頼するか。どこかの企業と組んだ方がよろしいのでは」

「効率の良い方で進めてくれ」


 俺はそれから会社に泊まり込み業務をした。

 しばらくして集められたのは言語、電気回路、プログラム、レーザー加工の専門家だった。


「最初に言っておく、集められたサンプルは発掘品だと思ってほしい。詮索には答えられない」

「ほう、オーパーツという訳ですね。言語学者としては未知の言語は腕がなります」


「俺の専門は回路だけど、魔力回路も共通する部分があるな」

「それはどのような」


 と俺は尋ねた。


「色々な塗料で魔力回路は書かれているが、一つ塗料が一つの部品で外周の円はアースみたいな感じになっているな」

「ほう、なるほど」

「電気回路は電波を出したり熱を発したり色々とエネルギーに変換している。魔力回路はこの出力が未知だ。これさえ解き明かせば理解は早いと思う」


「プログラム担当です。この魔力駆動の心臓部はワンボードマイコンだと思うんですよね。当然プログラムも乗っている。これは目に見えないけど吸い出しが可能です。ひと昔はゲームの吸い出しなんかが流行ったものです。とうぜんこの部分は電気回路担当さんに頑張ってもらわないと」


「レーザーでこの小さい回路が刻めるかは分からない。集積回路みたいに印刷した方が早いんじゃないか」

「次回はその担当も呼ぶよ」


「魔力回路だけど、御社の製品はアナログICだな。それを組み合わせて回路を形成している」

「アナログICってのは電気回路がパックになっているって事でいいのか」

「ああ、そうだな。それの資料をありったけ欲しい」

「未知の言語で書かれているがいいか」


 書物はアルリーのしかないからな。

 後は俺が覚えた知識だけだ。


「そこは言語学者先生の出番だろう」

「はい、頑張って翻訳します」


「この魔力集積回路の解析は早いと思う。デジタル回路のもっともの基礎はダイオードとトランジスタだ。これは一方通行とスイッチの役割だ。後はこれに抵抗やらコンデンサーがくっつく。まあ他にも部品はあるが説明しても分からないだろう」

「いくらかは分かるが、専門の知識は説明する必要はない」

「とにかくダイオードとトランジスタの役割を担っている箇所が分かれば早い」

「まずはそれを目指すか」


 魔力集積回路の解析事業が始まった。

 地球の科学力を舐めるなよ。

 魔力駆動の心臓部なんてすぐに真似してやる。

 魔石の新たな利用方法が広まれば、魔石燃料推進機構の嫌がらせになるだろう。

 俺への攻撃は激しくなるだろうが、それがなんだ。

 跳ね返してやるよ。


 家に車で移動、犬小屋からベンケイが出て来たので撫でてから家に入る。


「少し根を詰めすぎとちゃう」

「今日からゆっくりするよ」

「うち、少し心配や」

「なんとなく落ち着いたと思う。気は晴れないが、少し後悔の念が薄れた」

「せやったら、ええけど」


 なんだかな。

 嫁に心配を掛けてばかりだ。

 うさ晴らしをしたい気分になった。


 ダンジョンに行き、俺は俺の攻略成功に100万円賭けて、プロ用の階層へいく。

 モンスターをメイスで叩きのめしながら、最下層を目指す。

 ラスボスまではあっけなく終わった。

 ラスボスは象ほどのネコ科のモンスターだった。

 メイスで叩くが効いたふうがない。


 ラスボスが火炎を吐く。

 俺はミスリルの盾を出して防いだ。

 何の攻撃ならこのボスに効くかな。


 しょうがない。


嫁召喚ワイフサモン、アルマ、エリナ、モニカ」

「装備なしやなんて」

「そうよ、ちょっと急すぎ」

「準備不足」


「悪かった。どうも俺はお前達が居ないと駄目らしい」


 その言葉を聞いて嫁達の機嫌が少し直る。

 俺は会話の最中もせっせとバッテリーを出した。


「やってくれ」

「暗黒の神よ。怨讐の雷を放て。弩砲バリスタ


 モニカが魔法を使い電撃をラスボスに叩き込んだ。

 爆発するラスボス。


「一億円ぐらい賭けで儲けたから、何でも言ってくれ」

「ぬいぐるみが良い」


 エリナがそう言った。


「よし、高級なのを百個ぐらい取り寄せよう。ああ、ロボット内臓の高いぬいぐるみもあったな」


 嫁達の機嫌も完全に直ったらしい。

 本当に俺は駄目な男だ。

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