第103話 おっさん、遺跡を探索する

 遺跡は荒野にぽつんと建っていた。

 外観はビルそっくり。

 文明が進むと似たような外観に行き着くのかもしれない。


 ここに辿り着くまでが一苦労。

 モンスターが出るわ出るわ。


 俺は弱いので後ろの方で邪魔にならないようにしていた。

 とにかくそんなこんなで遺跡に到着。

 ビルの中は荒れ放題で、土ぼこりどころかモンスターの骨なんかもあった。

 エレベーターを探すと奥の方にあった。

 生きてないだろうなと思いながら、ボタンを押す。


「下がってろ」


 言われて俺は慌てて下がる。

 エレベーターではなく蜘蛛のモンスターが扉を開けて現れた。

 おいおい、びっくり屋敷かよ。


 危なげなく退治。

 蜘蛛のモンスターを解体して素材を採る。


 ここのモンスターは退治してもしばらくすると復活するのだそうだ。

 同じモンスターではないと思うから、縄張りの問題なのだろうな。

 殺されると新しいモンスターがエレベーターの扉の向こうを縄張りにする。

 そんなところだろう。


 やっぱり移動は階段だった。

 そして、三階の廊下に行き、扉の前に立った。

 扉は暗証番号を入れると開く仕組みだ。


「電源は生きているとは思えないから、壊すしかないと思うぞ」

「電源ってなんだ」

「扉を動かす力だよ」

「それならたぶん生きているさ。魔力駆動だからな」


 さいですか。

 こういう時はローテクだな。

 ルーペでボタンのすり減り具合をみる。

 2と4と5と8の傷が多い。

 普通に考えて四桁の暗証番号か。

 組み合わせは4×3×2で24通りか。

 すぐに可能だな。


 十四回目で扉は開いた。


「分解屋、お手柄だ」

「こんなの子供でも分かる」


 部屋に入ると荒らされた形跡はなく、資料などがキャビネットに収まっていた。

 資料を一つ抜き出すとボロボロと崩れた。

 それなりに年月が経っているんだな。

 三百年ぐらいだろうか。

 素人には分からない。


 金庫はなかったが、机の引き出しに金属製品が幾つか存在した。

 鍵のかかった机もあったが針金とスキルで難なく開ける事ができた。


「これはなんだ」


 俺は金属板を手にして尋ねた。


「おう、それは魔力駆動の心臓部だ」

「貰っていいか」

「ああ、いいぞ」


分解ディサセムブル


 隙間があったのでこじ開けるようにイメージして分解した。

 中には平べったい四角い魔石と導線があった。

 魔石を見ると中に模様がびっしりとある。

 この感じはまるで集積回路だ。

 魔力回路の集積回路ってところだろう。

 ミシンやバイクもこれを使って動いているんだろうな。

 ブラックボックスの中身が分かった気分だ。


 親方が機械部分以外は触るなと口が酸っぱくなるほど言っていたが、集積回路では理解が及ばないのも当然だ。

 たぶん親方の事だから、一度、傷つけて修理不可能になってしまったのだろう。

 それがトラウマにでもなっているに違いない。


 むっ、ガタガタと何かうるさい。

 せっかく気分よく考え事をしていたのに。

 突然通気口のフィルターがはじけ飛んだ。


「下がってろ」


 通気口から現れたのは2メートルほどのヒルのモンスターだった。

 どす黒い体表がおぞましい。


「とりゃ」


 仲間が剣を抜いて叩き切るも切れたふうがない。

 銃を撃っても体表より先に弾丸が進まない。


拘束バインド


 魔法使いが腰の火種いれから火を取り出してキャビネットの書類に火をつけた。

 その火を触媒に魔法を発動。

 ヒルのモンスターは炎にまとわりつかれわずかに縮んだ。


 サビの臭いの煙が充満して辺りを満たす。

 ダクトが前の何倍もの音量でガタガタと音を立てる。


「撤退するぞ」


 俺達は這う這うの体でビルから撤退した。


 野営の準備をして、蜘蛛のモンスターの足肉を焚火で炙りかぶりつく。

 戦利品もある程度得たので彼らもホクホク顔だ。


「どうよ。お宝探しは」

「危険と隣り合わせだということが良く分かったよ」

「でも楽しいだろ」

「ああ、そうだな。ロマンがある仕事だ」


「パーティメンバーになってくれるか」

「俺はどっちかと言うとダンジョンに興味がある」

「残念だ。俺達はダンジョンはやらないな。遺跡専門だ。ちなみに参考までに聞くが、トラップの分解の方がロマンがあるかい」

「いや、俺は故郷に帰りたいだけだ。その為にはダンジョンを攻略しないと」

「そうか、目的があるんじゃな。気が向いたら俺達の仕事も受けてくれ」

「ああ、その時は頼む」


 この世界にもダンジョンはある。

 ただし、攻略にあまり人気はないみたいだ。

 遺跡の方が実入りもよくて、危険も少ない。

 おまけにお宝に出会えれば一発で大金持ちになるギャンブル性もある。

 ダンジョンに行ってくれるパーティを見つけないと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る