第20話 おっさん、ゴブリン・ダンジョンへ行く

 次は、ゴブリン・ダンジョンだな。

 馬車を乗り継ぎ、ゴブリン・ダンジョンがある村にやってきた。


 村は盛況で、宿屋が幾つも立ち並び武器屋、防具屋、道具屋、道場などがある。

 もう少し規模が大きくなれば町と言っても良いと思う。


「きゃ」

「エリナ、もっと腰を落として構えてよく狙え」

「的中」

「モニカは上手いな」

「うちも頑張りまっせ」

「アルマはだいぶ慣れたな」

「はいな。二人に負けんよう頑張らんと」


 道場でクロスボウの試し撃ちの真っ最中だ。


「よし、装備品を配るぞ。ドロップ品のポーションだ」

「これって、私達の借金にはならないわよね」


「おう、必要経費だ。俺が持つよ」

「そう、それなら良いわ」


「それと切り札に唐辛子スプレーだ。目に入るととても痛いから、仲間に当たらない様に使え」

「試してみたいんやけど」

「的に向って吹き付けると良い。ダンジョンで使う時は風を考慮に入れろよ」


 三人は唐辛子スプレーを的に向って吹き始めた。


「なんや楽しい道具やな」

「ええ、面白いわ。なんとなく癖になる感じね」

「噴射快感」


「装備品の用意はこんなので良いだろう。さあ実戦だ」


 ダンジョンの入り口はどこも代わり映えしない。

 アルマとモニカは落ち着いているが、エリナの顔が強張っている。


「エリナ、そんなに緊張しなくても」

「ゴブリンよ、コブリン。村人が食われてしまう事もあるのよ」

「落ち着いて遠くからクロスボウを撃てば、何てことないさ」

「ええ、分かっているわ」


「俺が冒険者で奴隷の三人はポーターだ」

「そうか、言っておくが冒険者は自己責任だからな」


 俺はダンジョン入り口の受付で告げる。

 受付の門番は俺達をじろじろ見て返答した。


 初心者に言われるような事を言われた。

 なんでだろ。


「さあ、やるぞ。復唱! ご安全に!」

「「「ご安全に!」」」


 第一陣のゴブリンが二体やってくる。


「黒き毒針の一撃を思い知れ」


 モニカが先陣を切った。

 矢は見事ゴブリンの額を貫いた。

 モニカは相変わらず妙な事を口走っているな。


「私も」


 エリナのクロスボウを持つ手が震える。

 だが、問題なく矢はゴブリンの腹に突き刺さった。

 一撃とは行かなかったみたいだ。

 アルマが痛みに硬直したゴブリンに止めを刺す。

 やれているな。

 俺は魔力壁の訓練でもするか。



 しばらく経って休憩がてら、三人の様子を見る。

 おーおー、やっているな。


「闇よ一筋の光になって貫け」


 モニカの言葉が面白い。


「猛き暗黒の一角獣よ突進せよ」


 なんか面白くってずっと聞いていたい気もしたが、魔力壁の訓練を再び開始した。


 突然、悲鳴がエリナから聞こえた。

 視線をやるとエリナが剣を持ったゴブリンに腕を少し切られた。

 アルマが切り札として渡していた唐辛子スプレーをゴブリンに吹き付ける。

 そして、アルマはクロスボウで冷静に止めを刺した。


「大丈夫か? ポーションを飲め!」


 俺は駆け寄り言葉を掛けた。


「油断したわ」


 言ってから、エリナはポーションを飲んだ。


「油断大敵」


 モニカは相変わらず攻撃の時以外はあまり喋らない。


「アルマさんありがとう」

「うちは年長やし、気にせんでもええのよ」


「門番の視線の意味が分かったぞ。防具のせいだ。俺達自殺志願者みたいに思われたんだな。俺がゴブリンに楽勝だったから感覚が狂ってた。急いで村に戻って揃えるぞ」


  ◆◆◆


 ダンジョンそばの防具屋に入った。


「店主、三人に防具を見繕ってくれ」

「女物か。女物は数がないな。駄目だな。店にあるのは調整が必要だ」

「どれぐらい掛かる」

「三日だな」

「調整が必要ない奴とかないのか」

「チェインメイルと腕当てと脛当ては大丈夫だろう」

「重そうだな」

「軽い鎧は皮鎧だな。装着するには直さないと」

「しょうがない、チェインメイルと手足に着ける奴を一式。それと鎧下を貰おう」

「まいどあり」


「どうだ」

「重いけど耐えられる」

「アルマはレベルが高いからな。二人はどうだ」


「こんなの着て剣劇は無理」

「重量過多」

「レベルが上がるまでの辛抱だな。さあ、再戦だ」


 三人はダンジョンでの行動で汗だくになった。

 ダンジョンの仕事は重労働だ。

 女性が少ないのもうなずける。


 それから、二十日あまりで姉妹はレベル10を超え。

 アルマは元から高かったからレベル12になった。

 俺は魔力壁のスキルを無事に習得。

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