第2話 おっさん、ボスを倒す
俺のスキル魔力通販は文字通り、魔力で物を買うスキルだ。
でも、このスキルというか俺に問題がある。
俺は7年前に地球から転移してきたわけだが、どういう訳かレベルが上がらない。
地球人特有の問題なのかは分からない。
レベル1なら5匹倒せばレベルが上がるスライムを俺は500匹倒した。
それでも上がらないので、そこで俺は諦めた。
一般的にレベルが上がると魔力や筋力が上がる。
魔力の上がらない俺は、初期魔力100で一日一回100円の物までしか買えない。
ちなみにゴブリンプリンスに使った水風船はレモンの汁、鷹の爪、ゴム風船で作り全て100円以下の物だ。
魔力通販にも制約がある。
魔力通販は今まで地球の商店で手に取った品物しか買えない。
銃で無双なんてのは出来ない訳だ。
それでも、ありがたい事にネット通販で商品の説明を見たのは手に取るに含まれるらしい。
海外の銃の通販サイトを見ておかなかったのが悔やまれる。
俺のスキルに関する問題はこんなところだ。
問題はそれだけではなかった。
この世界の仕組みにも問題がある。
まともな仕事をするにはギルドに所属しなければいけないが、加入には保証人が必要だ。
俺の保証人になってくれる人は誰もいない。
保証人が要らない商業ギルドは莫大な加入金が要る。
とてもではないが無理がありすぎて涙が出そうだった。
俺がどのように暮らしていたかというと、スラムに流れ着き言葉を覚えながら道の修繕などの仕事をしていた。
ステータスでスキルを見てアイテムボックスと魔力通販のスキルを知って商人になろうとした。
だが、加入金の金貨100枚を聞いて断念。
帰還の情報を集める為にポーターを始めた。
本当は冒険者になりたかったのだが、保証人もいないしレベルも上がらないし戦闘に役立つスキルもないしでしょうがない。
裏技もあるんだが、これも事情があって使えない。
それは、魔力を一時的に増やす方法だ。
魔石に魔力を入れておいてスキルを使う時に上乗せする事が出来る。
だけど、魔石が手に入らない。
魔石を手に入れるには買うかモンスターを倒すかだ。
売っている魔石は大抵、結合魔石で大きくて良いお値段がする。
モンスターは強くてレベル1の俺では倒せないし、スライムは魔石を持っていない。
スキルを覚えるための裏技もあった。
ダンジョンで出てくるスキルオーブを使えば何年も修行しなくともスキルを獲得出来る。
スキルオーブがもの凄く高いのでこの手も使えない。
さて、ステータスでもチェックしておくか。
「ステータス」
――――――――――――――
名前:山田 無二 LV1
魔力:32/100
スキル:
収納箱
魔力通販
――――――――――――――
やっぱり、何度見てもレベル1だな。
持ち物は食料、野営道具、衣類、俺の私物、今日出たドロップ品と魔石しかない。
ドロップ品は身代わり人形、ディフェンス・ブースト・ポーション、幸運力アップの腕輪だな。
身代わり人形があるのは有り難い。一度攻撃を防いでくれるだけでも生存の確率が上がる。
作戦も一応考えた。よし、行くぞ。
覚悟を決めてボス部屋の扉を開ける。
よし、ボスはまだ出現してない。
ガランとした空間が死に誘っている様にも思えた。
でも、これなら、なんとかなりそうだ。
扉を開けたままにして、小麦粉をアイテムボックスから出す。
そして、包装を破り次々に投げ込む。
小麦粉は百円以下で買える食材として沢山蓄えてある。
部屋にもうもうと小麦粉が立ち込めた。
俺はディフェンス・ブースト・ポーションを飲み、幸運力アップの腕輪を装備。
そして、右手にライター、左手に身代わり人形を握り締め部屋に飛び込んだ。
ボスが出現したのを見て、俺はライターを点けた。
「小麦粉爆発拳!」
次の瞬間大爆発。
身代わり人形がボロボロと崩れる。
幸運力アップの腕輪も崩れた。
焦げくさい臭いが充満する。
服もボロボロだが、俺はなんとか生きている。
ボスモンスターめ。
小麦粉爆発拳、思い知ったか。
煙が晴れるとボスモンスターであるキングミノタウロスは間抜けな事に寝ていた。
いや、気絶しているのかも。
胸が上下しているところから、確実に生きていると思う。
しぶといな。
コンボ攻撃だ。
「磯部餅クラッシュ!」
俺は覚悟を決めてキングミノタウルスに駆け寄る。
起きてくれるなよ。
気絶したままでいてくれ。
俺はキングミノタウロスの口を開けて、餅をこれでもかと突っ込んだ。
喰らえ餅30個、喉につまらせて死ね。
キングミノタウロスは覚醒して喉をかきむしる。
もう一丁コンボだ。
「100円ショップ・ダンベル乱舞!」
俺はキングミノタウロスに馬乗りになり、一キロのダンベルで殴打を繰り返した。
なにが致命傷になったのか分からないがキングミノタウロスは魔石になった。
やった、倒せた。
大分ふざけて技名を叫んだが、こんなの普通のテンションじゃやってられない。
「こんどこそ。ステータス!」
――――――――――――――
名前:山田 無二 LV1
魔力:32/100
スキル:
収納箱
魔力通販
――――――――――――――
はぁ、レベル上がらずか。
失意のどん底で、魔石を拾い次の部屋に続くドアを開け入った。
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