夢織り人の館

OZさん

第1話

 僕は絵が好きで、よく画廊や美術館に行ます。もっとも難しい抽象画や絵画理論がわかるわけではないので、もっぱら風景画が中心です。絵をみるとき、間近でみる入が多いようですが、僕はタッチがどうのといった技術的なことには関心がないので、少し離れたところから眺めるようにして、気にいった絵をさがすことにしています。そして、気にいった絵がみつかると、少しずつ後に下がりながらみていくんです。

 最初目についていた絵筆の跡が、だんだん溶けあっていって、不意に今までバラバラだった絵が一つにまとまる瞬間があるのです。それは、まるで絵の中の世界が現実になったような、絵に描かれている世界と僕がいる世界の、どっちが本物なのかわからなくなるような、そんなふしぎな瞬間です。

 もちろん、そんなことはめったにありません。でも、まるで絵の中にひきこまれたようになって、気がつくと何時間も絵の前に立っていたということも、何度かあります。

 僕がこれからお話しようと思うのも、ある絵にまつわるそんなふしぎな話です。

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