お題小説 「夕方」「図書館」「愛憎」

だいふく(くろあん)

悲しみの溜まり場

私が学生だ。現在図書館に閉じ込められている。


私は久しぶりに街の外れにある古い図書館にいくことにした。

その図書館はというと、ほとんど人がいなく私以外に利用しているものをみたことがなく、お世辞にもいいとは言えない。

まぁ、隠れ家としてはもってこいだろう。

少し前は、毎日のように通っていたが、本がスマホさえあれば読める時代になり、なにより、好きな本の趣向が変わったというのも大きいだろう。

なぜ理由になるのかは、あの図書館は悲しい話やバットエンドの話など確かに面白いが明るくはならない話ばかり置いてあるのだ。

そして、私は、そのような話がすきであったが、今はある漫画に出会ったことで明るく元気が貰えるような作品がすきになったので行く理由が無くなったわけだ。

しかし、人間不思議なものでふと思い出すと無性にいきたくなるものだ。なにより、その図書館で特にお気に入りだった。

夕暮れのようなオレンジ色の少女が出てくる作品それが読みたくなったのだ。そんな理由で図書館にたどり着いた私は、その本を探した。

しかし、それはなかなか見つからずやっと探しあてて数ページ読み進めたところで眠ってしまっていた。

目を覚ました頃には、あの本に出てくる少女のような鮮やかな夕方の空が見えていた。

門限があったこともあり、急いで帰らねばといつものように扉を開けようと力いっぱいおしたところびくともしなかった。


まぁ、そんな経緯で私は途方に暮れている訳だが、大きな変化があった。

オレンジの髪の少女が本棚の影からこちらを伺っているのだ。

あの本に出てくる少女のようだとそんなことを思いながら、少女に声をかける。

「キミも閉じ込められたのかい?それとも裏口とかあるのかな?」

そんな問い掛けに少女は、一切答えず、

「まぁ、私のこと気が付きもしてないってわけ!それに何よあなたが大事そうに持っているその本、私のことあんなに好きって言ってたのになに!浮気なの!そうでしょうねぇ、さぞ足しそうだ物ねぇ、その本ポカポカして読むと元気が貰えるんでしょうねぇ!もぉームカつくあんたなんか知らない。」

そうまくし立て少女は、あっかんべーをして去っていく。

少女を慌てて追いかけながら私はふと窓を見る。

その空は先程より少し暗くなによりくすんでいた。

やっと追いついたところで少女は立ち止まり、激しく息を吐く私に話しかける。

その大半は罵倒であったが、傷つける意図はないのだと理解出来た。

息が落ち着いたところで本の内容が頭をよぎる。

『少女はある罪を犯しました。それはそれは大層な罪である場所に閉じ込められてしまいました。そこは悲しい話が毎日のようにやってくるのです。少女は話を管理し、夜になったら布団に入った寝るのがお仕事です。もしお仕事をしない悪い罪人がいたら"夜"に食べれてしまうでしょう。』

ぼーとしていたのだろう。

「逃げるわよ」

と大きな声が私の意識をはっきりとさせる。

よく周りを見ると不自然に影が濃く広くなっているのが分かる、と言うより明らかに近づいてきているのだ。

慌てている私を少女は、その体から到底出るとは思わない力で私を投げ飛ばす。

私の近くにあった本棚は、その影に沈んでいく。その後は訳もわからず彼女について逃げ回った。

そして私たちは、開けることの出来ない出口への追い詰めらていった。

「あなたならここから帰れるでしょ、早く帰りなさいよ。」

「そうしたいのはやまやまだが、帰ろうと押してみたが一向に開かないんだ。」

「あんたねぇそんなことも忘れたのここの扉はあべこべなのよ。押す以外にも色々試しなさいよ。まったく、あんたは前からバカね。」

そんな話をしながらも扉を開けることが出来た。扉は横に開けるタイプになっていた。

お礼を言おうと後ろを振り向いた時窓が目に入ったそれは真っ暗闇の"夜"であった。


その影は洪水のように私たちのまじかまで迫っていた 。

私を突き飛ばそうとするその手を掴む。

同じことがあったきがしたから。

その時は掴むことが出来たかったからだと思った。私たちは、その影に飲み込まれる。

そこは、色々な物語がごったになって、私事かき混ぜられているような感覚になった。

私が溶け出ていく。その中はまるで愛憎のような『読まれたい』という気持ちに満ち満ちていた。

しかし、彼女を離すまいと彼女さえ離さなければいいのだと私は思った。


私は誰かに抱き寄せられた気がした。

もう何を見ているかも分からない目に金髪の青年が私と少女を抱えながら上へとあがっていくそんな光景が写った気がした。

なんだかポカポカとして、心が明るくなるのを感じた。


私は街の外れの山の中で2冊の本を大事そうに抱えて倒れていたそうだ。

これは後から聞いた話だが、あの場所に図書館などなかったそうだ。そして、昔

「図書館に少女を置いて言ってしまった」

と泣きながら言っていたそうだ。


私のお気に入りの本がひとつ増えた。

『悲しみの溜まり場』という名前の童話集、ほとんど悲しい結末だが、1話だけオレンジ髪の少女という作品だけは希望のある終わり方をしている。

少女はある男によって連れ出される彼女を冒険はこれから始まるのだと。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お題小説 「夕方」「図書館」「愛憎」 だいふく(くろあん) @daikuro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ