第154話 154.残された魔導士の左腕の秘密

<真也>


やっと正気に戻った街道の隅で一斉に伏せていた人達が動き出した。

俺とアリシャも散乱した馬車の残骸の所まで歩いて行ってみると、馬車は全壊

馬車を引いていた馬も襲撃者の射出した火球により即死状態だった。


散乱した馬車の破片と死んだ馬を通行の邪魔にならないように空間庫に収納

男が爆散した所では


『空間庫に爆散した男の破片限定で収納』


襲撃者の居た辺りで伏せていた通行人はもれなく、自爆した襲撃者のミンチ肉を被って酷い状態になっていたからな・・・


皆にはお礼を言われると同時に魔導書を使わないし言霊も紡がず魔法を発動した事に驚かれた。

こんな事を起こせば、魔導士は確実に市民から排除されてゆくだろうな・・・


男が居ただろう場所に落ちていた男の左腕を見ると

オークの魔石を握っているみたいだ。

アリシャが恐る恐るその握っている物を見ながら

「真也あの灰色の物体は何でしょうか?」

と聞いて来た。

アリシャにはあれがオークの魔石だとは思わなかったんだろう。

「あの灰色の石みたいなのはオークの魔石だ。赤い部分がほんの少し残ってるだろ?それにほんの少し魔力が残留している」


そのオークの魔石は殆ど色が灰色に変色し。ほんの少し赤い所が残っていた。

「強制的にオークの魔石の魔力を吸い出して攻撃力に変換したのだろうな・・」

「魔導士の使う『オーバードライブ』をオークの魔石を使って実現したんですね。魔石の魔力を魔石が灰色になるまで使い切るなんて有る意味怖いですね」

「そうだな。奴の手を見てみろ!!少し焼け爛れてるから使った反動は有るみたいだから奴にとって非常事態って事だったんだろう。戦争時や緊急時しか使わないんじゃないか?」


奴の腕も空間庫に収納

後でジェード宰相にでも見せて対策を考えてもらおう。


襲撃者が無理やり馬車を奪って街道で暴走させ悲鳴が上がっていたから


「みなさ~~ん、お怪我をされた方は居ませんか~」


と声を上げながら街道を歩いてゆくと

「お~い馬車に跳ね飛ばされた親子がこっちに居るぞ~」

って男性が呼んでくれるので手を振っている方へ行ってみると


20代前半だろう男性

同じく20代前半だろう女性

そしてそして5歳くらいの女の子


が街道に隅に寝かされていたが・・

全員全身骨折で重傷

子供がいて直ぐに逃げれなかったんだろう


「アリシャ女の子の治療を頼む。俺は父親と母親を治療する」

ってお願いして

俺とアリシャで同時に治療を開始する。


「スゲーなお前さん達」

「何で魔導書無しで魔法を使えるんだ」


治療魔法で治って行く3人を見て通行人が話している声が聞こえて来る。

夫婦だろう男性と女性、そして女の子の意識が戻って

治療されたのは解ったのだろう


「あ・・ありがとうございます。ただ私達魔法での治療費をもっていません。どうやってお支払いをしたら良いのでしょう・・」

そう言って男性は困り顔になっている。


「治療費なんて要りませんよ?」

って言ったのだが

「では嫁の体でお支払いとかでしょうか?」


おい!!

『何鬼畜な事を言ってるんだ?』

って思いながらも

「そんな事しませんので安心してください。でも魔導士ってそんなにお金を取るんですか?」

「私みたいになった者の治療費なんて、数十人の魔導士が集まって治療魔法を使うので金貨10枚は取られるのが普通なんです。本当にお金の嫁も要らないのでしょうか?」


『嫁をおれが貰うって・・・鬼畜だ~~魔導士ってそんな要求してたのか?』


「はい私達が善意でした事ですからお金なんか取れませんし取りません。もしも何かしないと気が済まないって言うのならば、困った人を見かけたならば、出来る範囲でいいですから助けてあげてください」


そう言って空間庫からハンバーガーを3つ取り出して3人に渡して

「うちの店で昨日から売り出したハンバーガーという食べ物です良かったら食べてみて下さい」


そう言って3人に手を振って次の場所に移動してゆく。


「おにいちゃんおねえちゃんありがとう」


って言って女の子が手を振ってくれ、父親と母親が深く頭を下げてくれていた。

俺とアリシャは

「みなさ~~ん、お怪我をされた方は居ませんか~」

「今さっきの魔者で怪我をされた方は居ませんか~」


そんな呼びかけと治療を繰り返し負傷者11人を治療

やがり馬車に跳ねられた為に全員が重傷者だった。

その度にハンバーガーを渡して宣伝をしておいた

その位は許して欲しい。


だけど治療する度に

『治療費が払えないので体で支払いを、嫁の体で支払いを・・、娘の体で支払いを・・・』

なんて言われるとその度に胸が苦しくなってくる


『どんだけ魔導士は腐ってるんだ!!』


そう思わざるを得なかった。


つづく・・・

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