第1話 クローン少女


              ☆☆☆その①☆☆☆


「ここは……?」

 綺麗に整理された部屋は、白い壁と天井。

 窓からの景色は、駅前のマンションと青空と、遠くに豊かな緑。

 室内には、棚や机など一般住宅っぽい感じで、六畳ほどの広さで、よく見ると寝ているベッドは一般的な木目のベッド。

 最初は病院かと思ったけど、なんだか普通の住宅っぽい。

「どこ? ここ」

 起き上がってキョロキョロしたら、枕元に二人の人物が座っていた。

「お、目が覚めたか! よ!」

 片手をあげて挨拶をくれたのは、サングラスをかけた黒服の中年男性で、頭髪は無し。

 そんな「個性としてはよくいる無個性な外見のオジさん」など頭に残らず、少年の意識が捉えて離さないのは、男性の少し後ろに座している少女の方だ。

「ぅおぉ…なんて、可愛い娘が…っ!」

 長い黒髪がサラサラな美少女は、大きな目が少し釣り目で強気っぽくて、ブレザーに包まれた肢体は巨乳で括れで巨尻。

 白いソックスを纏った美脚は足首に向かって細く、足下も小さくて儚げだった。

 少女は、ベッドの上で起き上がった人物を見て、頬を染めて美顔を逸らす。

「ここは天国か?」

 と思って、視界の端の鏡に映った肌色に気を取られて、見る。

 鏡の肌色は、裸の美少女だった。


              ☆☆☆その②☆☆☆


 小柄な身体だけどバストは大きく、童顔でセミロングな茶髪と少し垂れ目で大きな瞳。

 白い肌はなめらかで、大きな双乳はタップリと重そうだけど柔らかそう。

 先端には桃色の微突がツンと上を向いて、自己主張をしていた。

「おおおっ、おっぱいがいるぞおっぱいっ!」

 興奮して叫びながら、鏡の中で揺れるバストを見て、無意識に自分の姿だと感じて、本能で鷲掴みにして揉んでみる。

「うおおっ、なんて柔らかいんだあああっ! 女のおっぱいっ、サイコーっ!」

 と興奮して、ハっと気づく。

「って、俺 おんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 驚いて思わず立ち上がると、ずり落ちたタオルケットの下は全裸。

 細いウェストや、少し大きなヒップ。

 スラりと伸びた脚と小さな足首を、胡坐座りで確かめたり。

 そして何より、それなりの大きさが誇らしかった男性器は見る影もなく、替わってスベスベつるつるな縦スジが。

「うわあああああああああああああああああああっ! 本物のバツバツバツだあああああああっ! 写真じゃまくてっ、目の前に本物だああっ! うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 全身を触ってみると、柔らかくてスベスベで暖かい。

 鏡に映った自分だけでなく、触った自分もかなりの美少女。

「おっおっ、女の子だよ! 裸の女の子だよっ! 誰この娘 誰っ!?」

 興奮しながらニヘラニヘラしながら、エロい媚顔で更に鏡に食い入っていると、黒髪の美少女が恥ずかしがりながらも慌てて、タオルケットを手に駆け寄ってきた。

「ちょっ、ちょっとあなた、さっきから何してるのよっ!」

 裸の小柄少女にタオルケットが掛けられて、一部始終を観察していたサングラスの男性が、ホっとしている様子だった。

「うむ、調査通りの反応だ!」

 手渡されたタンクトップとホットパンツを着ながら、再びベッドに腰かける。

 気持ちが落ち着いてくると、交通事故に遭った記憶が蘇り、自分の身体が男ではない事に、ようやく思い当った。

「おっ、俺は一体…!? この身体は…っ!? な、何がどうなってるんですか!? あなたは誰ですかっ!? っていうか隣の黒髪美少女は誰ですかっていうか名前とスリーサイズはっ!? 俺のスリーサイズもぜひっ!」

 矢継ぎ早に質問を繰り出すロリ巨乳な感じのエロ少女に、黒髪少女は羞恥し驚いて、サングラスの中年男性は笑っている。

「まぁ落ち着き給え、順を追って話そう。まず私の名前は…まあ『サングラス』とでも呼んでおくれ」

 明るくそれだけを名乗ると、隣に腰かける美少女が、怪訝そうな美顔で会釈をくれる。

「彼女の名前は『紅美尋(くれない みひろ)』だ。そして君の名前は『白鏡優(しろかがみ ゆう)』だ」

 君の名前と教えられて、反論をする。

「優…いやいや、俺の名前は香我美勇士郎だし。っていうか、俺の愛読書がないっ!」

 本気で狼狽しながら、無修正の海外製ヌードグラビア雑誌を探してキョロキョロ。

 そんな優に、美尋は呆れ、サングラスは相変わらず笑っている。

「君は一ヶ月ほど前に、エロ本を眺めつつ下校中、駅前で交通事故に遭った。気絶した香我美勇士郎くんは病院に運ばれてすぐに回復。その日のうちに帰宅をして、今は日常に戻っている」

「…? それが俺でしょ?」

 まだ理解できていない優に、サングラスは優しく解説を続ける。

「ま、その交通事故の際、病院で香我美勇士郎くんの血液を採取し、遺伝子情報を取り出して作り上げたクローン。それがキミ、白鏡優くんだ」

「………え…?」

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