え!? この状況でも入れるデスゲームがあるんですか!?

ちびまるフォイ

デスゲームは保険適用ないです

「こ、ここはいったい……どこだ?」


目を覚ますと薄暗い部屋に閉じ込められていた。

どこかで監視していたのか、タイミングを見計らったように声が聞こえる。


『おはよう。これから君はデスゲームに参加することとなる』


「ふ、ふざけるな! ここから出せ!」


『今、君の体には遅効性の毒が注入されている。

 そしてこの部屋のどこかにあるワクチンを探さないと死ぬだろう。

 せいぜい死力を尽くして頑張りたまえ』


「あ、おい!!」


一方的に切られてしまった。

部屋を見渡しても何もない。


「……あれ?」


部屋にはもうひとりの人がいた。


「はじめまして、私デスゲームの保険の営業をやってマス。

 よろしければ保険に入りませんか?」


「え!? この状態からでも入れる保険があるんですか!?」


「もちろんでございます。命を落とす危険の伴うデスゲーム。

 それこそ保険にぴったりの場所でしょう?」


「……い、いやいやいや! よく考えたら意味ないじゃないか!

 だってここから出られなかったら保険金もなにもないだろう!?」


「いえいえ、お客様、命を落としてお金を払うなんていたしません。

 デスゲーム保険では命を保険適用させていただきますよ」


「は?」


「復活させるってお話ですよ」


「そんなことできるわけないじゃないか!」


「信じなければそちらで結構ですよ。私はここにおりますので、いつでもお声がけください」


「あんたもデスゲーム参加者ならちょっとはワクチン探しを手伝えって!」


「あ、いえ。私はあなたが睡眠薬で眠らせて車に押し込められるところを見て、

 これは保険営業のチャンスとばかりにこっそり尾行してここへ入っただけです」


「社畜の鏡か!!!」


デスゲーム保険屋なんか放っておいて必死にワクチン探しをすすめる。

けれど、時間ばかりすぎてしまいヒントも何もわからない。


体への変調を感じ始めいよいよ死期がすぐそこまで近づいてきたと感じる。


「だ……ダメだ……もう……」


「保険、入りますか?」

「この状態からでも入れるのかよ……」

「もちろんでございます」


「わかったよ! もうなんでもいい! 保険適用してくれ!」


「承知いたしました。ライフイズマネー。命あっての物種です」


その数秒後には心臓が停止したのがわかった。

遅れて血液が行き届かなくなった脳が止まり、眠るように死を受け入れた。




「ぷはっ! い……生きてる!?」


「デスゲーム保険適用ですね」


「本当に死なないんだ……」


「保険料はあなたの口座から差っ引いておきました」


「もう命がつなぎとめられたんだからなんだっていいさ」


毒の時間制限がなくなったので、部屋をしらみつぶしに探した結果ワクチンを見つけた。

ワクチンを手に取るとゲームクリアという声とともに扉が開いた。


「やった出られる!」

「おめでとうございます」


「というか、あんたデスゲームに自主的に参加したのなら

 入り方も出る方法もわかってたんじゃないか?」


「それを明かしてはデスゲーム保険の営業ができないじゃないですか」

「クズか!」


毒づいた矢先、次に広がる光景に目を疑った。

終わったはずのデスゲームに続きがあった。


『おめでとう、よくぞ第1ゲームをクリアしたようだ。

 だがこれで最後ではないぞ。最後まで命の最後の光を私に見せてくれ』


「うそだろ……こんな……終わったんじゃないのか……」


「この状態からでも入れるデスゲーム保険がありますが、いかがですか?」


「そんな金ねぇよ!! さっきのぶんで使っちゃったよ!!」


おどろおどろしい金属の人体破壊装置が目の前に控えている。

これから行われるデスゲームから逃れるすべはなかった。


 ・

 ・

 ・


その様子を見ていたデスゲームの仕掛け人は、あるときからモニターに参加者が映らなくなったのに気づいた。


「おかしいぞ? さっきまでデスゲーム第三の部屋にいたはずなのに……」


「もうデスゲームは終わりだ」


「お、お前は!? バカな! デスゲームの部屋に閉じ込められていたはず!!」


仕掛け人の前にはさっきまでデスゲームで騒いでいた参加者が立ちふさがった。

モニターしている部屋まで特定されてしまったら、もうやることはひとつ。

これまでのデスゲームのツケを払わされる。


「ば、バカな! どうしてクリアできたんだ!

 最後の方のデスゲームなんかクリアさせるつもりなんてなかったのに!」


「人間、死ぬ気になればなんだってできるんだよ!」


仕掛け人の視線の先にはほくほく顔のデスゲーム保険営業マン。


「お前まさか、デスゲームの都度死にまくって強引に突破したのか!?

 もうそれゲームとして成立してないじゃないか!」


「どういう方法で突破しようがお前をこの手で復讐できるなら問題ない」


「お前のような身よりのない貧乏人のどこに

 なんども保険復活できる金があるんだ!」


「これから死ぬしか無いお前に話してどうなる! くらえーー!!」


「ひいぃぃぃ!! お助けーー!!」


みっともなく縮こまるデスゲーム仕掛け人。

振り上げたこぶしが振り下ろされると、その鼻先でこぶしが開いた。


「この状況からでも入れる保険があるぞ?

 今入れば俺に殺された後でも復活できるがどうする?」

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え!? この状況でも入れるデスゲームがあるんですか!? ちびまるフォイ @firestorage

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