真の聖女が現れたと、平民出身の私は何も与えられずに追放されてしまいました。でも隣国の皇太子が迎えに来てくれました。
克全
第1話:婚約破棄追放
「アイリス、平民のお前を聖女として遇し、私の婚約者としてきたのは、他に聖女がいないから仕方がなかったからだ。
だが、ついに、由緒正しいガイス公爵家から真の聖女が現れた。
これでお前のような平民と結婚しなくてすむ。
平民で力の弱いお前をこれ以上聖女にしていては、国の威信にかかわる。
今日まで満足に聖女の役目を果たせなかった罪で、私との婚約を破棄し、王都から追放する。
国外追放にされなかった事を感謝しろ」
愚かで身勝手な王太子が、好き勝手な事を言っています。
聖女として遇したとか、婚約者にしてやっていたと言っていますが、嘘です。
無理矢理王宮に閉じ込めた上に、公式の場では儀式着を無理矢理着せられ、無給で働かせられていました。
普段の食事も寝る場所も、平民出身の使用人と同じでした。
最後も何も与えずに追放刑ですか、人として最低ですね。
「近衛騎士、王都から放り出せ」
「無理矢理放り出さなくても、自分の足で出て行きます」
騎士に無理矢理連行されるのは腹立たしいですから、自分で出て行きますよ。
それにしても、真の聖女ですか。
私が手抜きしていましたから、聖女の力を勘違いしているようですね。
高慢なこの国の令嬢達を、神が愛でるとは思えませんから、偽者でしょうね。
これが下級貴族なら、私が会った事のない、清廉潔白な令嬢という事もあり得ますが、公爵家の令嬢なら儀式の場で全員に会っていますからね。
「ふん、勝手にしろ」
自分の思い通りに動かないと、直ぐに機嫌を悪くする子供のような王太子。
帝王学など学ぶこともなく、甘やかされて育てられたのでしょうね。
学ぼうと思えばいくらでも自分を高められるのに。
学びたいと渇望しても、その機会を与えられない平民がたくさんいるというのに。
聖女の私がこの国を出て行ったら、多くの民が苦しみむことになるのですよね。
王侯貴族など滅んでも心は痛みませんが、民が苦しむのは嫌ですね。
「おい、自分で出て行くと言って、途中で逃げるんじゃないだろうな。
そんな事をすれば、必ず探し出して殺すぞ」
ああ、いやだ、いやだ、いやだ。
私の後ろを歩きながら監視している近衛騎士が、偉そうに脅かしてきます。
私に助けられていた事も理解せず、偉そうに上から目線で命令する。
こんな連中のために力を使うのは本当に嫌ですね。
「最初から信用しなければいいだけだ。
もし逃げられたら俺達が処罰されるのだぞ。
馬車に乗せて、城門の外に放り出せば、それで任務は完了だ」
前を歩いていた近衛騎士が憎まれ口を叩きます。
その眼には、平民など虫けら同然という気持ちが宿っています。
平民が下手に逆らったら、平気で殺す性格のようです。
黙って馬車に乗って出て行った方がいいですね。
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