第22話 決戦
進軍中の豊影の軍の元にも天羽家が千葉の下半分を統一した情報が伝わっていた。
「殿、このまま進軍しますか?」
伊藤の問いかけに豊影は険しい顔で
「もちろん、やつらは俺に何度も恥をかかせたから」
豊影は若い兵に向かって低い声で
「お前ら、ここでまた俺に恥を掻かせることになったらわかってるだろうなぁ‼」
若い兵達は震えながら
「はい、わかってます‼」
「ならいい」
この様子を隣で見ていた伊藤は
「若い兵は大変だなぁ」
と呟きながら笑っていたのであった。
豊影軍は進軍を続けた。
そして
城の最上階から見張りをしていた士郎が慌てて長経の元に行き
「経丸、豊影軍が城下町にまで進軍をしてきたぞ」
「よし、作戦通りに頼むよ‼」
「はい」
緊張で体を震わしている士郎に経丸は笑顔で
「士郎、あなたなら大丈夫だから」
士郎は声を震わせながら
「そうだよな、大多喜の英雄外岡士郎なら大丈夫だよな」
そう言って士郎は経丸の手をぎゅっと握りしめ弱気な自分に覚悟を決めるように大きな声で「気持ちー‼気持ちー‼」と叫んだ。
稲荷は士郎の出陣を確認してから久留里城から大軍を率いて進軍中の片倉の元に向かい無事合流し
「片倉さん、もう一時間後には戦が開始されると思います」
「わかった」
士郎は城を出て城下町まで行き天河軍を迎え討つ態勢を整えた。
向かってくる豊影軍に士郎は大声で
「ばかたれ~豊影は男の恥‼」
士郎隊は士郎の言葉を大声で復唱する。
大声で豊影軍を罵倒したことによって気持ちが高ぶり調子に乗った士郎は
「愚か者どもかかってこい‼」
士郎を先頭に士郎隊は豊影を挑発する感じで踊りだし、豊影軍に向かって放尿を開始した。
豊影は怒り狂い、怒鳴り散らすように
「奴らは、俺らをバカにしてるな‼」
伊藤は豊影をなだめるように
「殿、落ち着いてください相手にしてはいけません」
伊藤は必死に怒り狂う豊影をなだめた。
「やれ臆病サル、やーいやーい山に帰れー!」
士郎は間抜けなサルが描かれた旗を振り回した。
豊影は遂に頭にきて
「今から奴らを攻撃する」
伊藤は慌てて
「殿、落ち着いてください、これは奴らの罠かも知れません。今はまだ様子を見るべきです」
豊影は低い声で怒鳴るように
「お前は俺がバカにされているのに黙ってろと申すのか」
伊藤は豊影の迫力に怯えて小さい声で
「しかし」
豊影若い兵達に低い声で怒鳴り付けるように
「お前ら、奴らをひねり潰してこい」
若い兵達は震えながら
「はい‼」
若い兵達は豊影の恐怖に必死になりながら
物凄い勢いで士郎隊にめがけて突撃して来た。
「来た来た、バカめ作戦通りだ」
士郎隊は大多喜城の第一要塞大手門を閉めて大多喜城に向かって逃げ始め。豊影軍は閉められた大手門をぶっ壊して凄まじい勢いで流れ込んできた。
「今だ、放てー‼」
士郎は用意していた弓矢隊に号令した。
弓矢隊は士郎の号令に合わせ一斉に矢を放った。
待ち構えられて矢を撃ち込まれた豊影軍は少し怯んだがしかし大軍の少しの兵が討たれたにすぎない。
「怯むな、進めー‼」
豊影のこの一言で豊影軍は態勢を整え士郎隊に向かって行く。
士郎は大声で
「武具を捨て退却じゃー」
士郎隊は逃げる、これも作戦通りだった。
大手門から城までは約六百メートルその道のりの間に途中、途中で待機していた城兵が横から槍で刺したり上から石を投げたり水をかぶせたりして豊影軍を混乱させた。
凛は本丸から戦況を見て笑いながら
「ほらひのちゃん見てみて、豊影軍が細く長く延び切って統率も取れないでしょ」
ひのはじっくり戦況を見て
「豊影は凛ちゃんの手のひらで完璧に踊らされている、凄いもしかしてこのまま勝てるのではないですか」
凛は自信満々に
「そりゃ、勝てるよ勝つために戦うんだから」
ひのは呟くように
「凛ちゃんかっこいいなぁ」
凛は笑顔で
「ありがとう、ひのちゃん」
その頃士郎隊を追いかけていた天河軍が足を止めた。
「どうしたんだ、あのあほサル、それがしにビビったのか?」
「殿、これ以上こんな小大名相手に犠牲を出すわけにいきません」
伊藤は士郎達を追うのをやめるように豊影に進言した。
「そうだな」
豊影は落ち込んだ感じで同意し
「皆の者撤退するぞー!」
撤退しようとする豊影軍を見て士郎は
追いかけてこなきゃ作戦通りいかないじゃないかくそサル
士郎は大声で
「あほサル目かかってこい!」
豊影は高笑いしながら
「もう、お前の挑発には乗らない」
ヤバい、このまま追って来なくなったら作戦がぱぁーになる
士郎は何とかしようと考えた。
そして士郎はひらめいた。
「おい、サル鼻毛出てるぞ」
「嘘、どれどれ」
豊影は鼻の下を確認し始めた。
「嘘だよー、ウキキ、ウキキ。あっ間違えたこれはお前の鳴き声だった」
士郎は騙された豊影の顔を見てその場で腹を抱えて笑い始めた。
豊影は士郎にぶちぎれて
「おのれー、俺をバカにしたそいつだけは必ず討ち取れー‼」
豊影は再び士郎隊に襲い掛かる。
「逃げろー‼」
士郎隊は逃げ始めた。
その様子を本丸で見ていた凛は経丸の肩をポンと叩いて
「経丸さんいよいよ出番ですよ」
「わかりました」
「ご武運を祈ります」
「任せて」
経丸はふぅーと息を吐き
いよいよだな、父上の仇をなんとしても取らないと
経丸は顔がこわばっていた。
豊影軍は遂に士郎隊を本丸の門の前まで追い詰めた。
豊影は得意げな顔で
「もはやこれまでだな、貴様あの世で態度を改めるがよい」
士郎はニヤリと笑った、そして大声で
「かいもーん」
すると本丸の門が開いた。
開けた門の中から経丸が兵を率いて出てきた。
「経丸・・・」
豊影はビックリした顔で言った。
経丸は豊影のビックリした顔を見てニヤリとし
「はなてー‼」
いきなり一斉射撃をくらった豊影軍は大混乱に陥った。
「今だかかれー」
天羽軍は豊影軍に突撃していった。
統率の取れてない豊影軍はあっという間に崩れた。
豊影軍は退却を開始したが城を出ようとしても横やりや上からの投げられる石に混乱しさらに追い打ちをかける経丸と士郎の攻撃を振りっ切って何とか逃げるが逃げた先に大軍を率いて片倉が待ち構えていた。
豊影軍は完全に逃げ場を失った。
そして大混乱に陥った豊影軍を士郎達は
「天瞬羽突‼」
「懸命守覚‼」
「気持ちー‼気持ちー‼」
と叫びながら次々と討ち取って行った。
豊影は逃げようとしたがその前に片倉が立ち塞がった。
豊影は慌てて震えながら
「どうしてお前がここに」
片倉は豊影に刃をむけながら
「お前みたいな卑怯者は戦わず逃げるってことはわかってるんだよ」
豊影はいきなり片倉に土下座し
「頼む、片倉。この通り命だけは助けてくれ」
片倉は吐き捨てるように
「立て、豊影」
豊影は恐怖で体中震えながら立ち上がりいきなり片倉に襲いかかったが片倉は簡単に豊影を斬り捨てた。
片倉は斬り捨てた豊影を見て
「ちっ、影武者だったか。あいつもしかしてここに来てないんだな」
この戦で天羽家は豊影軍に勝ち更に有名になったが豊影は戦にも来てなかったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます