第8話豊影
昇ってきた朝日を背中に浴びながら経丸は背筋良く少し息をきらしながらハイペースで走り込んでいた。経丸は毎朝10キロを走るのと片倉と木刀を振り込むことを毎日の日課としている。
経丸が走り込みが終わって城内で木刀を振り込んでいると
『殿、おはようございます殿宛に手紙が来ております』
『片倉さんわざわざありがとうございます後で拝見しますのでそこにおいといてください』
『はい、わかりました』
その頃怪我をしている女の子の部屋で
『凜ちゃん、女の子の調子はどう?』
稲荷は女の子が心配になって手当てをしている。凜に様子を訪ねに来た。
『まぁしばらく安静にしてれば大丈夫です』
『よかったぁ』
稲荷はホッとしてふぅーと息をはいた。
どんどんどん
『この慌ただしい足音は兄貴ですね』
『えっわかるの?』
士郎は音をたてながら戸を開けて
『凜、殿を見なかった』
『ねっ』
稲荷は少し驚いた感じで
『ほんとだ』
『えっ、何が何がすごいの?』
『別に何でもないよ』
『ねぇ、教えてよ』
士郎は凜の事をくすぐる。
『わかったよ、兄貴の足音を当てただけだよ』
士郎は冷めた感じで
『へぇー』
『あんたが聞いたんだからね』
『で、俺何しに来たんだっけ』
凜はあきれた感じで
『殿を探してたんじゃないの?』
『あっそうだ、でどこにいる?』
『一人で部屋にこもってるみたいよ』
『あっそうか部屋か、部屋だけは見てなかったわ、なるほどな、ありがとう』
『普通、部屋から見に行くけどなぁ』
凜はため息をついた。
経丸は一通の手紙を読んでいた。その手紙に『天羽長経を預かっている、そちらにお返ししたいためこの手紙に書いてある場所に一人で来ていただきたい』と書かれていた。
経丸は手紙を読んですぐさま用意をしてその場所に向かった。
片倉は薪を割っている時に経丸が向かって行く姿を目撃した。
手紙を送った主、豊影は士郎より30歳以上上でサルみたいな顔の男である。
森の中で豊影は
『奴はこんな森に呼んでも一人で来るのか伊藤』
『もちろん来るでしょう、奴はまだ子供、考えが浅はかでございます。何も疑う事無く来るでしょう』
『そうだとよいが、仮に一人できてめちゃくちゃ強かったらどうする』
『心配しなくても平気ですよ殿、そのために兵を率いてきたんですから』
『まぁな』
しばらく豊影達は経丸を待っていると経丸は手紙を持って現れた。
経丸は大きな声で
『天羽経丸ただいま到着しました』
伊藤は森の茂みから出てきて。
『ご苦労様です』
伊藤は経丸に頭を下げた。
『天羽経丸殿、お話があります。先日経丸様が連れて行かれたひのを返して欲しいのです』
『ひのちゃんを?』
『はい、ひのをです』
『そうですか、でも今城の中にいますよひのは、それより我が父上はどこにおられるのですか?』
伊原は目つきが変わった。
『父上、そんなもの最初からいませんけど』
『えっ!』
『殿、どうぞ。』
豊影は手を挙げた。その合図で兵が一斉に経丸を囲んだ。
経丸は状況を把握できない。
『何事ですか』
豊影は低い声で
『お主のせいでな謀反人のひのを殺せなかったんだよ。お主はひのを殺すのを邪魔しただけではなく私の部下をあんな目に遭わせてくれたな』
経丸はビックリした声で
『ひのが謀反人?』
『何も知らずにでしゃばりやがって、だからお前を殺す。そしてその後ひのを捕らえる』
豊影は凄んだ顔で経丸に言った。そしてまわりの男達に向かって
「借りを返す時が来た、お主ら天羽経丸を捕らえよ」
一斉に男達が経丸に襲いかかってきた。経丸は全く状況を理解できなかったが、とりあえず逃げようと思ったが相手の数の多さに逃走は不可能と悟り死を覚悟した。
どうせ死ぬなら1人でも多く倒そう我の人生ここまでだ。
経丸は敵に突っ込んでいこうとしたその時だった。
「お前ら、攻撃をやめー」
この男の叫び声に経丸は振り返った。
「殿、お待たせしました」
豊影をを押さえつけている片倉の姿があった。
「片倉さん」
経丸は驚きと嬉しさが入り交じった声で片倉の名前を叫んだ。
『貴様、いきなり何者だ』
片倉に取り押さえられてる小太りのやつが言った。
「人に聞くときはまず自分から名乗れ」
片倉の切れるような目線が男を怯えさせた。
「豊影だ」
豊影の声はとても震えていた。
「なぁ豊影殿、この兵を撤退させて欲しいのですが」
片倉は優しい口調で言った。
「何を言うか」
豊影は強気で反抗した。すると
「速やかに撤退させないのならそなたの首をこの場ではねますぞ」
片倉は鋭い目付きで天河をにらみながら低い声で言った。
その目を見て豊影は
こいつは本気で殺る目だな。
天河は本気で片倉を恐れて
「お前ら撤退だ」
「はっー」
豊影達はものすごい勢いで撤退していった。
片倉は急いで経丸のところに駆け寄った。
「殿、ご無事でしたか?」
『すみません片倉さんご迷惑をおかけして』
「我は当然の事をしたまでです」
経丸は震える体を必死に片倉にばれないようにおさえようとした。
片倉はそれを感じ気づいてないふりをした。
この出来事が豊影との長い戦いのきっかけになることをまだ誰も知らなかったのである。
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