第4話 白衣の森民と死ななきゃ治らない病気野郎 後編

 お酒の名前で騒ぐローリア様に、レックさんが名前の意味を伝えて試飲させると、納得した顔で瓶を受け取り、天空へと帰っていった。

 ちなみに"神殺し"の意味は、"美味し過ぎて神様でも飲み過ぎ、そのまま寝入ってしまう"という事らしい。

 再びレックさんに抱かえられ、村へと向かった。

 程なくして村の門にたどり着くと、門番に合図を送って中に入れてもらう。

 村の中に入ると、私達は私の家へと向かった。


「ユキカ! よかった無事で!」

「お母さん!」


 私は上半身を乗り出してお母さんに抱きついた。もちろん、レックさんが身体を支えてくれている。


「レックさん、またユキカを助けていただき、ありがとうございました」

「自分は当然の事をしただけですよ。本当は小一時間くらい説教してやりたいところですが、本人が一番分かっているでしょうから一言だけ。ユキカ、お前に何かあったら、お父さんやお母さんだけでなく、俺も悲しむ事を忘れないでくれ。相手を悲しませるようなものは愛情とは呼ばないぞ?」


 レックさんのその言葉に、私を大切に思ってくれている事を感じて嬉しくなった反面、レックさんにそう言わせてしまった自分の未熟さに悲しくなった。


「……ごめんなさい。レックさん。ごめんなさい……」

「分かってくれればいい」


 抱き直してくれたレックさんが優しく頭を撫でてくれる。途端に、幸せな気持ちでいっぱいになった。


「それではユキカを部屋で休ませます。エリザさん、少ししたら身体を拭きにきてやって下さい。俺だとユキカが恥ずかしがって大変なので」

「分かりました。ユキカをお願いしますね、レックさん」


 部屋に入ると、私はベットに寝かされた。そしてレックさんが頬を撫でてくれる。


「今日は大変だったな、ユキカ。俺が傍にいてやるから、ゆっくり休め」

「レックさん…… 大好き…… おやすみなさい……」


 レックさんの手、温かい、

 その心地よさと身体の疲労で、私の意識は眠りの淵へと沈んでいった。


◆◆◆


 トントントン…… ガチャ


 部屋のドアがノックされ、エリザさんが湯桶と手拭いを携えて入ってきた。


「ユキカは眠ってしまいましたか」

「エリザさん、後はお願いします。俺はいつもの部屋で薬を作りますので」


 自分の荷物と籠に入った薬の材料を持って出ていこうといたが、エリザさんに止められた。


「レックさん、ここにいてあげて下さい。この子、レックさんの気配がなくなると、すぐ目を覚ますと思いますので」

「……分かりました。ここで作る事にします」


 ベッドの方を見ないようにしながら、荷物から道具を取り出して薬を作る準備を始める。


 シュル……シュルル……

 ゴリゴリゴリゴリ……


 エリザさんがユキカの服を脱がせて身体を拭く衣擦れ音と、俺が薬草を擂り潰す音だけが部屋に響く。


「……レックさん。この子は治療士になれますか?」


 ゴリゴリゴ……

 エリザさんの問い掛けに、薬を作る手を止めて答える。


「治療術を駆使して、人を治療するという意味では、ユキカは立派な治療士になれます。才能なら自分なんかより余程あります。ただ……」

「ただ?」

「治療士をしていると、生命の選択を迫られる時が必ずあります。その時、ユキカが正しい選択を出来るのか。それは分かりません。それが出来てこそ、一人前の治療士なんですが……」

「生命の選択……」

「自分は勿論、6柱神すら全てを思い通りになんて出来ない。全てを救いたくても救えないんです。2人の人が助けを求めてきても、どちらか片方しか救えない。そんな時に一番駄目なのは、選べない事。それは結局、誰も救わないと決めたのと同じです。でも、もし、片方を選んで助けたとして、もう片方の遺族は自分達に理不尽な怒りをぶつけてくる事もあります。理屈では分かっていても、人、ですからね。ユキカは優しい娘ですから、出来ればそういう目に合わせたくはないのですが……」


 ゴリゴリゴリゴリ……

 俺は止めていた手を再び動かし始めた。薬草ではなく、別の何かを擂り潰すかのように……


「……レックさん、ユキカと添い遂げてやってくれませんか?」


 んったく、ガーネットといい、何で母親が娘をこんな浮浪者に嫁がせたがるんだ……

 気付かれない程度に溜め息をついてから、エリザさんに答える。


「自分の生き方では、ユキカに人並みの幸せを与えてあげる事が出来ません。それでもユキカが自分と共に生きる事を望んでくれるのであれば……」


 再び手を止め、顔を上げてから、俺は2人の方へ振り返る。


「俺は全てを賭けてユキカを守ります」


 その言葉を紡いだ瞬間、ユキカの身体がピクンと動いた。ユキカめ、寝た振りして聞いてやがったな?

 エリザさんは、俺の言葉に満足そうな笑みを浮かべると、ユキカの頭を優しく撫でた。


「ふふっ♪ それでは私はこれで。ユキカをお願いしますね、レックさん♪」


 湯桶と手拭いを抱え、エリザさんは嬉しそうに笑いながら部屋を出ていった。

 俺は薬を作り終えると、ユキカの部屋の片隅に常備してある薬瓶に移し換えて、運搬用台車に載せておく。これで明日分の薬は出来た。明日は追加の材料と食材の調達に出ないとな。

 ユキカの様子を見る為に、静かにベッドに近付く。ユキカはよく眠っている……ように見える。

 俺が頬を撫でてやると、目を瞑っているユキカの顔に笑みが浮かんだ。


「ユキカ。お前がどんな道を選んだとしても、俺はお前を見ていてやる。だから、安心しろ」


 そう言葉を掛け、前髪を手で優しく掻き上げると、露になった額に口づけをした。ある治療術を掛けながら。


「おやすみ、ユキカ」


◇◇◇


「……レックさん、ユキカと添い遂げてやってくれませんか?」

「自分の生き方では、ユキカに人並みの幸せを与えてあげる事が出来ません。それでもユキカが自分と共に生きる事を望んでくれるのであれば……」

「俺は全てを賭けてユキカを守ります」


 お母さんが身体を拭いてくれている時に少し目が覚めたから、眠った振りをしながらお母さんとレックさんの話を聞いていた。

 ちょっとお母さん! そういうのは本人に言わせて! でも、ありがと!!


――自分の生き方では、ユキカに人並みの幸せを与えてあげる事が出来ません。それでもユキカが自分と共に生きる事を望んでくれるのであれば……

――俺は全てを賭けてユキカを守ります


 レックさんの言葉を頭の中で反芻する。レックさんは私を受け入れるとはっきり言ってくれた。後は私の覚悟だけだ。

 レックさんがペゼットさんを生き終わらせた時、私はとてもショックを受けた。私に弓や山刀の使い方や狩りの仕方を優しく教えてくれたペゼットさんがあんな風になってしまった事もショックだったけれど、何より、誰よりも優しく、生命を大切にするレックさんが、あんなに簡単に相手の生命を奪った事の方がショックだった。

 でも、その理由はさっきのお母さんとの会話で分かった。一番駄目なのは選べない事。例え心を痛める人がいたとしても、そして自分が批判されようとも、やるべき事はやらなければならない。

 あの時、ペゼットさんを生き終わらせなければ、ペゼットさんはまた、村の人達に危害を加えていただろう。

 もし、私が止めて、ペゼットさんが助かったとして、それで村の人達が傷付けば、私は一生後悔し続ける事になっただろう。

 レックさんは、その業を背負ってくれたのだ。私の為に。

 今度の出来事で、私は自分の未熟さを痛感した。治療士としての力量だけでなく、治療士として生きる覚悟でも。

 でも、私の気持ち、感情は、レックさんとこれからずっと一緒にいたいと思っている。

 しかし、私が未熟なままでは、私が背負うべきものまでレックさんにずっと背負わせ続ける事になる。

 それに目を瞑って、自分の感情を押し通すのは、決して愛ではないと思う。


 私は、どうすればいいのだろう?


 目を閉じたまま悩んでいた私の頬に何かが触れた。温かい。レックさんの手だ。思わず頬が緩む。だって気持ちいいんだもん。

 そして、その温もりと共に掛けられた言葉。それは、今、私が一番聞きたかった言葉だった。


「ユキカ。お前がどんな道を選んだとしても、俺はお前を見ていてやる。だから、安心しろ」


 あぁ…… レックさんは言ってくれた。私をずっと見ていてくれると。

 そして、優しく前髪を掻き上げられた後、額に温かくて柔らかい感触が……

 寝た振りしてる場合じゃない!

 あれ? 身体が動かない?! 起きてレックさんに抱き付こうとして、力が入らない事に気付いた。それに意識も…… 眠い……

 そうか、鎮静セデイションの治療術……


「おやすみ、ユキカ」


 ああああ……そんなぁ~……レックさぁ~~ん……ZZZ……


◆◆◆


 次の日、目を覚ました俺は、村長に薬を届けに行く前にユキカの部屋へと足を運んだ。


「おはよう、ユキカ。起きてるか?」

「……レックさんのいけず」


 ぼそっと返事するユキカ。随分むくれているようだ。分かってはいたけれども。ユキカの行動を予想した上で、無理やり寝かし付けたしな。


「そんなにむくれるな。美人が台無しだぞ?」

「……美人じゃないからいいもん」


 やれやれ。

 俺はユキカの寝ているベッドの傍まで行こうとすると、ユキカは上掛けを頭まで被って隠れてしまった。

 手先のないユキカだから、簡単に捲ることは出来る。

 だが、そんな事はしない。俺は腰を落とすと、首の後ろへ左腕を差し込み、上半身を抱き起こした。

 上掛けが滑り落ち、驚きに身を固まらせているユキカが現れた。

 そのユキカの、少し開かれた唇に、自分の唇を重ねる。

 大きく見開かれるユキカの目。その目を半眼で見ながら、俺は自分の舌をユキカのそれに触れさせる。

 最初こそ、驚いたように跳ねたユキカの舌は、次第にお互いの感触を確かめ合うように絡みつく。

 俺がユキカを抱き寄せると、ユキカは手先のない腕を俺の脇から背中に回して縋りついた。

 どのくらいそうしていただろうか。どちらからともなく唇と身体を離す。お互いの口と口の間に唾液の橋が掛かる。紅潮した頬。まなじりの下がったトロンとした眼。唇から漏れる熱い吐息。15歳とは思えない、大人の色香を漂わせている。


「……レックさん。最後まで……して欲しい……」

「ユキカ、今はここまでだ。手足を治すのに、栄養も体力も沢山必要だ。まずは身体を治す事を考えるんだ」

「……はい。分かりました。レックさん、愛してます」

「俺もだよ、ユキカ。愛してる。それじゃ、薬を村長に届けてから、材料の採取と狩りに行ってくる。晩ご飯は、腕によりを掛けて作るからな」

「身体が治ったら、今度は私がレックさんにご飯作りますね。気を付けて、行ってらっしゃい」


 最後にもう一度口づけを交わして、俺はユキカの部屋を後にした。


◇◇◇


 しちゃった……レックさんと、キス、しちゃった♡

 最初は少し強引だったけど、その後は、優しくて、それでいて情熱的で……頭がポゥとなっちゃった♡

 これで最後までしちゃったらどうなるんだろう?

 レックさんにお願いしてみた♡


「……レックさん。最後まで……して欲しい……」

「ユキカ、今はここまでだ。手足を治すのに、栄養も体力も沢山必要だ。まずは身体を治す事を考えるんだ」


 そうだった…… 私のばかばかばかぁ~!! あんなポカしなければ、今頃レックさんと最後まで出来てたのにぃ~~!!

 あぁん、仕方ない。ここは大人しく言う事聞いておこう。


「……はい。分かりました。レックさん、愛してます」

「俺もだよ、ユキカ。愛してる。それじゃ、薬を村長に届けてから、材料の採取と狩りに行ってくる。晩ご飯は、腕によりを掛けて作るからな」


 レックさんの口から"愛してる"って言ってもらえた! 嬉しい!


「身体が治ったら、今度は私がレックさんにご飯作りますね。気を付けて、行ってらっしゃい」


 最後にもう一度口づけを交わして、私はレックさんを送り出した。最後の、ちょっと奥さんっぽい♡ えへへ♡


◆◆◆


 村長に薬を届け、事の顛末を伝えた。村人にも厚く信頼されていた者の凶行に、村長の沈痛な面持ちは晴れる事はなかった。


「レック殿。此度は村の危機を救っていただき感謝する」

「その感謝はユキカにしてやって下さい。ユキカが手足を失う程頑張ったお蔭で、死者2名で済んだのです」


 自分の身を犠牲にしてというのは、本当は説教ものだ。幸いにして、俺が間に合ったからユキカも村も救えたが、一歩間違えれば全滅だっただろう。

 治療士は最後まで治療出来る状態で生き残るのが鉄則だ。それがひいては周りを守る事にもなる。


「それは無論じゃ。あの身体の弱かったユキカが、村を救う程の事をやってのけるようになるとは、長生きはしてみるもんじゃな」

「それでは、自分は薬草の採取と狩りに向かいます」

「重ね重ね感謝する。出来れば、レック殿には村に腰を落ち着けてもらえるとありがたいのじゃが。そうじゃ、ユキカを娶ってやってくれまいか? あの娘もレック殿の事を大層好いておる。よい伴侶になると思うが? ユキカと共にこの村で暮らしてくれれば……」


 村長にまで言われるか。もっとも、村長のは、村に残ってもらう為の口実だろうが。


「ユキカが良い妻になる事には同意します。ですが、自分の患者は他の街や村にもいるのです。その人々を放っておく事は、自分には出来ません。しかし、腰を落ち着ける事は出来なくとも、帰ってくる事は出来ます。もうこの村は、俺にとって故郷です。それでご理解願います、村長」

「そうか…… 思えば、そうじゃからこそ、ユキカやこの村も救われたのじゃったな。無理強いは出来ぬか。すまぬな。ジジィの戯言と思って忘れてくれ」

「こちらこそ、期待に添えずにすみません。それでは、出掛けてきます」

「気を付けての、レック殿」


 そして俺は、村の外へと向かった。

 村から30メニト程走ると、森の中の拓けた場所へと辿り着く。薬草の群生地までまだ半分くらいの場所だ。村人が普通に歩くと1ハウアは掛かる。

 前にも言ったが、強力な魔物の多いこの森で、走って移動するのは危険が伴う。だが、今はその必要があった。

 これからの事を村人に見られる訳にはいかなかったからだ。

 今ならまだ、村の狩人達は、渡した薬を配り終えて服用し、狩りに出掛ける準備をしている頃だろう。あと1ハウアは余裕がある。

 そんな場所で俺は声を上げた。ごく普通に。隣にいる誰かに話し掛けるような感じで。


「居るんだろう? レミアレイラ」


 暫くそのまま待つ。風にそよぐ葉擦れの音だけが辺りを包む。

 ふと背中側に気配を感じた。だが、敢えてそのまま待つ。

 背中に何かが負ぶさる。それ程重くはない。そして、首に何かが巻き付く。それは白くて細い腕だ。長さと太さから、大人のサイズではない、女性、いや、女の子の腕だ。

 そして、首筋に2つの尖った何かを押し当てる感覚。治療術で即時再生をしているから刺さらないが。


「あぁん、やっぱり牙が刺さらない♡ 久しぶり、ワタシのレック♡ やっとワタシと気持ちいい事する気になってくれた?」


 こいつの名前はレミアレイラ・ノスフェラウ。魔族の地民ドヴェルグ魔地民ダクヴェルグの長、ノスフェラウ家の息女で、次期頭首候補の一人だ。

 身長は130セルム(=130センチメートル)程。黒髪が腰まであり、黒を基調としたゴシックロリータな衣装を身に纏い、魔族のくせに肌は抜けるように白く、正に人形のように美しい娘だ。体型のなだらかさと身長の低さのせいで幼女にしか見えないが、れっきとした成人。

 レミアレイラとは、とある理由で知り合ったが、その話は今は関係ないので置いておく。

 俺が彼女と接触を図ったその理由。それは、ペゼットを唆した魔族のやり方。相手の組織の中枢の者を唆して組織を潰させるやり方が、魔地民が好む手法だからだ。

 魔地民は、男性は背が低くてガッシリ体型、女性も背は低い美幼女タイプ。だが、見掛けとは裏腹に魔族の中でも頭脳派。闇系と大地系の属性魔法、特に闇と大地の複合属性魔法である屍操術や魅了術に精通し、対象を操る事に長けている。

 ちなみに、さっきから俺の首筋に噛みつこうとしているレミアレイラ。これはノスフェラウ家特有の行為で"婚心の契り"という、所謂求婚プロポーズなのだか、これも今は関係ないので説明は割愛だ。

 しかし、やり方から魔地民の関与を疑ったが、それにしてはやり方が雑過ぎる。

 普通なら魔族と悟らせずに粛々と策を実行し、相手の組織がどうしようもない状態まで追い詰めてからトドメを刺す。

 ところがコイツは、初っぱなから正体を露見させて、後は手駒に勝手にやらせてる。

 だから、統率している者に確認してみる事にしたのだ。連絡は専用の魔道具で昨夜ユキカを寝かしつけてからしておいた。


「という訳なんだが、どう思う? レミアレイラ」

「んもう! 前から言ってますけど、"レイラ"って呼んでくれないかしら?」

「ノスフェラウ家の仕来りでは、名前を愛称で呼ぶのは家族だけだった筈だ。俺か呼んだ瞬間に、メルキアニアに報告する気だろう?」

「もちろんよ♡ お母様に『レックと家族になりました♡ ワタシは幸せです♡』って連絡するわ♡」


 こういう種族なんだ、魔地民は。隙有らば嵌めようとしてくる。まぁ、レミアレイラのは俺への好意からきてるヤツだから、いいと言えばいいんだが……


「じゃあ、レイラ。今回の件、どう思う?」

「あら? 今日はいやに素直ね? まぁいいわ。やり方の雑さから考えて、ハグレじゃなくて、ワタシの目にも掛からない程度の下っ端を唆して使ったか、別の種族って感じね。今、確認してみたけど、ワタシの探知範囲にはいないわね。少なくとも、実家ウチがやった事ではないわ。そんな半端者使ったら、ノスフェラウの名折れだもの。となると……」


 レイラは俺と話しながら大地属性の魔法で周囲の地面に接する場所への探査を行ってくれたが、どうやらペゼットを唆した魔族は引っ掛からなかったようだ。


「かなりきな臭いな。レイラ、俺はこの村の用事が済んだら……そうだな、2週間くらいでリバイドの街に寄るつもりだ。商会の支店に顔を出すから、情報を集めておいて欲しい」

「分かった。ワタシも気になるしね」


 ノスフェラウは、人族、魔族関係なく手広く商いをするフェラウノス商会の経営をしている。どちらの領域でも、街と呼べる大きさの都市には支店があり、この世界の情報を一手に握っていると言っていい、そして、それぞれの上流階級にも顔が広い。ある意味、世界の陰の支配者とも言える。

 レイラは人族地域の支配人で、彼女の影響力は凄まじく、彼女に頭が上がらない王侯貴族も多数いる。


「手間を取らせて悪いが、頼む。礼は考えておく」

「期待させてもらうわよ♡ それじゃ、リバイドで待ってるから。レック、愛してる♡」


 レイラは俺の首筋に飛び付くと、俺の頬に口づけをしてから飛び降りた。

 そして、腕を伸ばして掌を地面に向け翳しながら呪文を唱えた。


「我、望むは大地の道。我の思い描く場所へと我を運ばん。【グラウンド・リープ】」


 グラウンド・リープは術者が一度行った事のある、地面と接した場所へ転移する大地属性でも最上位に属する魔法だ。ここに来る時も、最寄りの場所に転移してから探査魔法で俺の居場所を見つけて、ここにやって来た筈だ。

 さて、薬草と獲物を取って村に戻るか。


◇◇◇


 今日の夕食はレックさんの捕って来た鹿肉の入ったシチューだ。もちろん、アンジェリカも入ってる。

 私の手足は、昨日に比べたら随分治ってきた。でもまだ、どちらも甲の半ばくらいまでしか治ってないので、レックさん手ずから食べさせてもらっている。

 し・あ・わ・せ♡

 でも、早く私からもレックさんに"あ~ん"してあげたいから、頑張って治さないと。

 食後、レックさんとお母さんが後片付けしているのをテーブルから眺めて、お母さんの後ろ姿に自分の姿を重ね合わせる。早くあそこに立ちたい。

 後片付けが終わって、レックさんにお手洗いに連れていってもらう。

 恥ずかしいよ? 恥ずかしいけど、よくよく考えたら、患者さんの看護でそういう事するよね? 普通は同性の人がするのだけど、私、レックさんとこれから、もっとすんごい事するのだろうし、だったら看護くらいで恥ずかしがるの、可笑しいかな? と思ったの。だから、普通に看護してもらう事にした。

 お手洗いが終わったら、部屋で身体を拭いてもらう。

 レックさん、私の全部を見て? 去年よりも胸も大きくなったよ? 2セルムだけど。

 身体を拭き終わったら、洗濯した下着と寝間着を着せてもらう。うん、さっぱりした。

 そして、甘えるようにレックさんの胸に顔を埋めてから、レックさんの顔を見上げるように顔を上げ、目を閉じておねだりをする。

 私の背中に回されたレックさんの腕が私を優しく抱き締め、そしてお互いの唇が重なりあう。

 昨日は突然で驚いてしまったけど、今日は心構えも出来てるから、ゆっくりしっかり楽しむの♡


「ん♡ んふ♡ んんん♡ はぁ♡」


 ぷにっとしていてざらっとしている舌の感触を確かめ合う。互いの心を確かめ合うように。

 やがて唇を離した私は、レックさんの胸に頭を預ける。力強いレックさんの生命の鼓動。心地よいその響きに意識を委ねながら、私は眠りに就いた。


 次の日。誕生日の朝。昨日と同じように、薬の納品に行く前に私の様子を見に来てくれたレックさん。やっぱり昨日と同じようにキスで送り出す私。狩りは今日の分も昨日まとめて済ませたから、今日は一日家に居てくれるって言ってた。

 手足も、後は指先だけになった。レックさんが居てくれるなら、夕方には治っているだろう。


「今日の夕食はマルマル鳥だ。ご近所さんに配る分も作るからな」


 それは、私がレックさんと結ばれた事を村の人達に知らしめるという事。本当は式を催して、みんなに祝福されたいのだけど、あんな事があった後だから、今は自粛して、2か月後に改めて式を執り行う事にした。2か月というのは、レックさんがこの後、患者さんの所に往診に行って、帰ってくるまでの時間。私はその間、村に残って式の為の準備をする。

 夕方、手や足はすっかり元通りになった。ただ、筋力はしばらく戻らないから、速く走ったり、重たい物を持ったり、ましてや狩りは出来ない。でも、ゆっくり歩いたり、食事をするのは大丈夫そう。

 出来上がったマルマル鳥の丸焼きを、レックさんと2人で、村長さんや近所の何軒かに持っていく。まだ私の歩くのが覚束ないので、私はレックさんに抱き上げられながら、両手でマルマル鳥の入ったバスケットを抱え込むようにして持つ。

 まずは村長さんのお家から。さすがに抱かれたままというのは恥ずかしので、レックさんに玄関前で降ろしてもらって立たせてもらう。

 仕来りでは、まず新郎、レックさんがノックをして家人を呼び出す。


「村長。レックです。少し宜しいですか?」

「おぉ、レック殿。今開けるからの」


 村長さんが出てきたとろこで私の出番。新婦がマルマル鳥の入ったバスケットを手渡す。でも、今は私の手に力がないので、レックさんが一緒に手を添えてくれている。


「村長さん! これをお届けにあがりました!」

「ん? なんじゃな、これは? ……!!」


 差し出されたバスケットの中を見て、驚きに固まる村長さん。その表情で私達の顔を交互に見やる。

 サプライズ大成功♪


「ばーさん!! ばーさん!! レック殿とユキカが!! はよ来い!!」

「なんですか? おじいさん。あら、こんばんは、レックさん、ユキカちゃん」

「へレンズさん、こんばんは。そちらのバスケットをお届けにあがりました」

「バスケット? ……!! これ!!」


 村長さんの奥様、へレンズさんにもサプライズ大成功♪ へレンズさんも、驚きにしばらく固まったものの、とても優しげな笑顔になって私を抱き締めてくれる。


「ユキカちゃん、よかったわね。幸せになりなさい。レックさん、ユキカちゃんをよろしくお願いしますね」

「はい! 私、幸せになります!」

「勿論です。ユキカには苦労を掛けるかもしれませんが、必ず守ってみせます」


 式を2か月後にする事を伝えると、村長さんもへレンズさんも納得顔で頷いてくれる。


「そうじゃの。その方が良いじゃろう。村の者とも相談して、盛大な式にしてやろう。陰で泣く男が沢山居そうじゃがの。ほっほっほ!」


 村長さん家を後にして家に戻り、別のバスケットを持ってご近所さんを巡る。みんな一様に驚いて、その後笑顔で祝福してくれた。式の話にも納得してくれて2か月後が楽しみだと言ってくれた。

 バスケットを配り終えて帰宅すると、お母さんが最後のマルマル鳥を焼き上げてくれていた。家族で食べる分だ。

 全員が食卓に着くと、おもむろにレックさんが立ち上がり、お父さんとお母さんに話し始めた。


「改めて、レベンスさん、エリザさん、ユキカを自分の妻として娶らせてもらいます。自分の治療士としての使命により、常にユキカの傍にいてやる事は出来ませんが、常にユキカを想い、ユキカに幸せだと思ってもらえるように努力します。これからも、よろしくお願いします」


 お父さんとお母さんに頭を下げるレックさん。私も立ち上がり、レックさんに寄り添う。


「お父さん、お母さん、今まで身体の弱かった私を育ててくれてありがとう。私、レックさ……レックと幸せになります。これからも、よろしくお願いします」


 私もレックと同じように頭を下げた。


「ユキカ、お前の夢が叶って、私も嬉しい。しっかりとレックさんを支えなさい。レックさん、ユキカを光の下へ連れ出してくれた貴方なら、ユキカを不幸にする事はないでしょう。娘を宜しく頼みます」

「ユキカ、良かったわね。貴女がレックさんと一緒になれるように努力してきた事を、お父さんやお母さんはずっと見てきました。これからは、その努力で培ってきたものを、レックさんと自分の幸せの為に使いなさい。おめでとう、ユキカ」

「お父さん……お母さん……ありがとう……」


 溢れる涙が止まらない。

 その私をそっと抱き締めてくれる優しくて力強い腕。

 その腕の主を微笑みながら見上げる。

 その先には、私を見下ろす、同じように微笑む顔。

 私は目を閉じ、その時を待つ。

 両親に見守られながら、私は、私の世界で一番愛しい人と、誓いの口づけを交わした。


 食事を終え、お風呂で念入りに身体を洗って、部屋のベッドで待つ。

 程なくして、レックが部屋に入ってきて、私の隣に腰掛ける。


「ユキカ、身体は大丈夫か?」

「大丈夫。だから、お願い。今日は……」

「勿論だ。ユキカ、愛してる」

「私も愛してます、レック」


 優しく絡み合い、抱き締め合い、繋がり合い、そして注がれたレックの熱が私の中に広がる。夢見心地の中、私は何度も何度もそれを求めた。


「もっと……もっと、下さい…… レックを、たくさん……」


 そして、何度目かの絶頂を迎えた後、幸せに包まれたまま、私はは眠りに就いた。


◆◆◆


 俺は夜中に目を覚ました。隣ではユキカが安らかな寝息を立てている。

 ユキカを起こさないようにそっとベッドを降りて素早く衣服を身に着ける。そして、ユキカが寒くないように、肩までしっかり上掛けを掛けてやる。

 そうしてから、静かにユキカの部屋を出て自分の部屋へと戻り、白衣を羽織り、指ぬき手袋を履いて、窓を少し開けて外の様子を窺う。

 もしペゼットを唆した魔族が確認に来て、失敗した事を知れば、次に狙われるのはユキカだと判断出来た。相手を殲滅するにおいて、回復役から始末するのは常道だ。それが失敗した今、ユキカを直接狙って排除してからでないと、目的を達する事は難しい。だから態々出向いてきた。

 相手は恐らく、ペゼットの立場ならユキカもどうにか出来ると踏んでいたのだろう。実際、ユキカ自身のミスもあったとはいえ、俺が訪れるタイミングが遅ければ、ユキカは死んでいたのだ。

 そいつの誤算は、俺の存在。一年に一度しか訪れない俺の事など知らなくて当然だ。

 だがそうすると、俺の存在、そして、もうすぐ訪れる事を知っていた筈のペゼットが、それを考慮に入れていなかったのはおかしい。

 いや、考慮に入れていたからこそ、あそこで待っていたのだ。

 俺に殺してもらう為に。そして、覚悟の何たるかをユキカに示す為に。


 ペゼット、俺が今まで逢った中でも、アンタは大したヤツだったよ。


 さて、ペゼットの遺志に報いる為にも、さっさと片付けさせてもらう。新婚初夜だしな。

 窓から窺った感じ、俺の部屋の方には目が来ていない。部屋と言っても、最初に住み込んだ時に、物置きになっていたところを改装しただけだから、窓は他の部屋と反対の方角に付いている。

 窓から外に出た俺は、周囲の気配を探る。見つけた。この建屋越しに反対の方の木の上。

 なるほどな。魔地民ダクヴェルグにしては雑だと思ったが、何の事はない、別の種族が魔地民ダクヴェルグの真似事をしていただけだ。

 魔地民ダクヴェルグは大地属性が得意な分、地面から離れたがらない。高い場所を好むのは、風属性の得意な種族、風民アウレス。その魔族版だから魔風民ダウレスだ。

 風民アウレス魔風民ダウレスは、その背中にある翼と風魔法の併用で飛べる。対してこちらは跳ぶのが精一杯だ。ルビーと約束した竜化術が上達すれば飛べるが、今出来ないものは仕方ない。相手が飛んで逃げる前に瞬殺するだけだ。

 治療術を利用しての筋力強化。筋繊維1本1本に対して収縮力と耐久力を強化する。その筋力に耐える為に骨格を強化。軟骨に至るまで1個1個強化する。そして、上がった速度に対応する為に、神経伝達と神経繊維の耐久力を強化する。更に、暗闇での視覚確保の為に網膜細胞の光感受性を強化する。

 見えるようになった辺りを見回して、木々の配置を確認する。


 ダンッ! ガンッ!


 地を蹴り、近くの木へと跳んで、更に木を蹴って相手の方へ跳ぶ。当然、相手には気付かれるが、強弓より放たれる矢よりも速く跳べば関係ない。

 視覚強化により、相手の姿が見える。顔を覆面で隠し、黒い翼を持った風民。それが元いた枝から咄嗟に飛び降りようとする。

 いい判断だ。重力に逆らって飛び上がるよりも重力を利用して飛び降りた方が早い。


 ガンッ!


 だが、そんな事は予測済みだ。相手のいた木の幹を蹴り方向を変える。


「っ! 【ウィンド・ピアース】!」


 声が高い。女か。無詠唱で攻撃魔法とは、さっきの対応といい、中々の手練れだな。それに、風の魔弾ウィンド・バレットではなく風の貫通魔弾ウィンド・ピアースとは殺意高いな。

 だが、当然、その魔法は俺に触れた途端に消滅する。


「っ?!」


 ドォン!!


 目を見開いて驚く相手の顔を鷲掴み、そのまま地面へと叩き付けた。相手の頭が地面にめり込む。

 普通なら、頭蓋骨陥没の脳挫傷に全身の骨の複雑骨折、心臓を含めた複数の内臓破裂で即死だ。たが、コイツには聞きたい事がある。だから、頭と胴を治療術で死なない程度に保護しておいた。


「聞こえているな? どういうつもりでこの村を襲った? 誰の差し金だ?」

「……」


 ま、大人しくは喋らんか。なら、相応の手段を使わせてもらう。女だろうが、俺の患者で、妻に手を出そうとしたんだ、容赦の欠片もする気はない。

 俺は治療術でコイツの脳神経細胞の伝達を制御して、記憶領域から情報を引き出して喋らせる。無論、想像を絶する苦痛を味わう事になるが。


「もう一度聞く。誰の差し金だ? 何の為にこの村を襲った?」

「ぐ……! あ……! ……シャールラグル様の命令で……大侵攻前に……邪魔者の排除に……来た。……この村……には……治療士がいると……聞いた……があぁぁ!」


 シャールラグル。最近、代替りして魔風民ダウレスの長になった奴の名前が、シャールラグル・シーヴァだったな。以前、魔族領を旅している時に、長になる前のそいつに会った事があるが、頭の出来が、とても可哀想なヤツだった。

 という事は、この村は、奴の実績作りの為に、お馬鹿な侵攻をしようとしたとばっちりを喰った訳か。

 ユキカは、他の村にも出張って、治療士としての修行を頑張っていたようだから、近隣に名前が知れていたのだろう。

 明日にでもレイラに連絡して、相応の対応をしておいてもらおうか。


「さて、お前の処遇たが、レミアレイラに引き渡す事にする。アイツも丁度いいオモチャが手に入って喜ぶだろうさ」

「レミアレイラ……? まさか、ノスフェラウの屍姫しかばねひめ!?」


 流石に知っているか。レイラはノスフェラウ家当主メルキアニア・ノスフェラウの三人娘の末っ子で、その才覚は姉2人をも越える。特に屍操術が得意で、付いた異名が"屍姫しかばねひめ"。今は詳しくは省くが、レイラは、同じ魔族にすら恐れられる実力者だ。


「ま、俺の居る村に手を出しておいて、生命があるだけでも幸運だな。後の事はどうなろうが知ったこっちゃないが」


 コイツは麻痺させて倉庫にでも放り込んでおこう。明日、薬草採取用の背負い籠に入れて連れ出して、昨日と同じ場所でレイラと落ち合って引き渡せばいいだろう。

 窓から自分の部屋に戻った俺は、女を倉庫の籠に放り込み、服を脱いで身体を軽く拭いてからユキカの部屋に戻った。

 そっとシーツを捲ってユキカの隣に潜り込むと、ユキカが薄っすらと目を開けた。


「あれ……? レック、どこに行ってたの……?」

「手洗いだよ。さ、まだ夜中だから寝ようか」

「うん……」


 ユキカは俺の右腕を抱き寄せると、程なくして再び寝息をたて始めた。俺も、ユキカの温かさと匂いを感じながら目を閉じた。


◇◇◇


 次の日、結構早く目を覚ました。そして、昨日の夜の事を思って、物思いに耽る。私の女性の部分には、まだ何か挟まっているような感じがあって、その奥には、沢山注いで貰ったものが残っている感じがある。私はお腹を擦りながら、とても幸せな気分でいっぱいになった。

 目を上げると愛しい人の寝顔。その寝顔を眺めて再び幸せに浸っていた私の中に悪戯心が目を覚ました。レックの厚い胸板の、その先っちょを指でくりくりと弄んでみる。う~ん、反応がない。それならと、身を起こして、レックの胸の先っちょを舌でちろちろしてみる。


「う……ん……」


 ちょっと反応があった♪ よ~し♪ もうちょっとやっちゃえ~♪

 今度は口で吸い付いて、口の中に含んだ先っちょを舌で弄ぶ。んふふ♡ これって昨日私がされてたけど、する方も結構興奮する♡


 ガシッ!


「きゃあ!」


 調子の乗って続けてたら、突然抱き締められた。


「おはよう、ユキカ。な~に悪戯してるのかな~?」

「お、おはよう、レック! え、えへへ♡ レックの寝顔が素敵だったからつい♡」

「ユキカ、知ってるか? 悪戯していいのは、悪戯される覚悟のある奴だけだぞ?」

「えっ? きゃっ! あぁん♡」


 朝からたっぷり愛されちゃいました♡ まる♡


 そして、私の誕生日から1週間が過ぎ、レックの旅立つ日。去年なら寂しさを感じていたけど、もうそれはなかった。だってレックは必ず私の元へ帰ってきてくれるし、たった2か月後には会える。

 というか、2か月しかない。鈍った身体を鍛え直しながら、結婚式の準備もしないといけないし!


 トントントン。部屋の扉がノックされた。


「ユキカ、入るぞ」


 レックだ。もう準備、終わったのかな?


「あ、うん、どうぞ。どうしたの、レック? 準備は終わった?」

「ああ。出立前にお前に渡したい物があってな。ユキカ、これを受け取ってくれ」

「え? 何? ……!! レック!! これ!!」


 レックから渡された物。それは、白衣。レックがいつも身に着けている白衣だ。


「お前はもう立派な治療士だ。だから、それをお前に贈る。足りないところは、これから俺が鍛えてやる。まずは、俺が往診に行っている間に、筋力と体力を戻す事。分かったな、ユキカ」


 "分かったな、ユキカ"。5年前に私を導いてくれた、あの言葉。私を信じてくれている証。


「はい! 私、頑張ります! もっと貴方の助手として、妻として、相応しい女になります! だから、早く帰って来てね、あなた♡」


 白衣に袖を通し、旅立つレックを送り出す。

 私は、ユキカ・セラータ。

 治療士レック・セラータの弟子にして助手、そして、妻。あの人と共に、光の道標を辿って、私は歩き続ける。

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