第2話  僕の幼なじみとお家

「お邪魔しま〜す‼︎」

「は〜い」


 あいちゃんの声に僕のママが反応する。高校生にもなってと思うが、クラスのうち約半分はママ呼びだという。外では僕はお母さん呼びだけど。


「お母さんこんにちは‼︎」

「いいえ〜、ゆっくりしていってね〜」


 そしてあいちゃんは僕のママをお母さんと呼ぶのだ。ともくんのお母さんと最初呼んでいたのだが気づいたらお母さんと呼ぶようになっている。

 お母さんは学校の先生だが、昨日修学旅行に行って帰ってきて休みらしい。ソファーの上に体育座りで座り、枕を抱え怖い映画を見ている。

 先生なのに少し子供っぽいところがあるのだ。


「ともくん部屋いこ‼︎ いつものやろ‼︎」

「いいね、やろ」

「早く早く!」

 

そう言い僕の手を引っ張り階段を走っていく。少しドキリとしてしまう。

そうして僕の部屋に着くと——


「はい、最初はともくんが配ってね」

「おっけ〜」


 僕たちは子供の頃、まあ小学生ぐらいからずっとやり続けているババ抜きをし始める。

 ババ抜きはあいちゃんがとても好きなので僕も楽しくやれているんだが——


「——どっちだ……」

 あ——っ! かわいい!

 そう。ババ抜きは顔の表情などをじっくり見てしまうため僕はもうババ抜きは今はしたくないのだ。


「は〜や〜く〜!」

「わからない!」

「一か八かだよ」

「そ、そうか……」


 でも実は負けたら僕にとって嫌なことが起きるのだ。

 いつもだが、勝ったら次にやることを決めれるという勝者の特権がある。そして負けたら次にやることも長年一緒にいたため決まってるわけで——


「……負けた」

「やったー‼︎ じゃああいが決める番ね‼︎」

「はあ……、そうだよ」

「じゃあ——王様ゲームね‼︎」


——ということになる。

 あいちゃんは人に命令とかして動いてくれるという王様みたいなことをするのが好きなのだ。不意に子供だなと思う。

 ルールはとてもシンプルでジャンケンして負けたら言うことを聞くだけ。それでもきついのは事実!


「「ジャンケンポン!」」

「わーい‼︎ 勝った!」

「……負けた」

「じゃあ、ともくんは王子様であいがお姫様で、あいを持ち上げて!」


 ほんとに高校生⁈ 

 そんなことを思ってしまうが、あいはスタイルもいいし、胸もDカップからEカップぐらいはあるだろうか。そしてなにより口はリップをしているのか潤っており、すらりと雪女のように白い肌にい長い腕が見え目を奪われそうになりほどだ。目もくりっと丸みを帯びて入りまさに童顔だ! と思う。

 僕の前で手を広げるあいちゃんはまだ? みたいな顔をしている。

 だから抱っこの形なんて恥ずかしいわけで——


「うぅ……」

 

顔が赤くなり下を向いてしまう。


「もしかしてあい重くなった……?」

「あ、いやそんなことないよ!」


 と、気の利いた言葉を返せない。そんな僕は情けなと思いまた下を向いてしまう。

 高校生になったんだ。もっと成長しないといけないのだ。と、思いあいちゃんの様子を伺おうと見ると、手をもじもじしながら耳やら頬が桃色のようになっているあいちゃんがいた。


「あいちゃん……?」

「……な、なに……⁈」

「え……、い、いや、なんでも……」


 ど、どうしたんだ⁈

 いつもはこういうことを王様ゲームでやるのは毎回だったのにいつもと何かが違う。いや、何かというよりなんかおかしい!

 二人して30秒ぐらいか、体感だとそのぐらいの沈黙が続く。

 沈黙を破ったのは僕だった。


「なんか……、そうだ! テレビゲームしようよ!」

「う、うん! そ、そうだね……!」

 

 そうしてゲーム機を持ち続けて30分すると、一階からママの声が聞こえた。


「とも〜、あいちゃん〜、ご飯できたわよ〜」

「ご、ご飯できたらしいよ。い、行こう?」

「そ、そうだね……‼︎ ……行こう!」


 そういい二人で階段を降り、リビングのテーブルにつく。


「お母さん、あ、ありがとうございます!」

「あら、なんかあったの〜?」

「え⁈ な、なにもないですよ⁉︎」


 僕は口を挟めずママの方を見ると、にまあと悪い笑みをしていて目があう。僕はとっさに逸らしてしまう。


 怪しまれただろうか……。

 テーブルで無言でご飯を食べているとママはなにも言わずに僕たちを交互に見てくる。

 なんか嫌だな……。


 あの時を思い出してしまう。


 あいちゃんのいつもと違った反応。いつもは僕が恥ずかしながらもやっていたものの今日の様子は何か違っていた。顔も赤くなっており、耳までもポニーテールで髪を後ろで結んでるので赤くなっているのが見えた。


 もしかすると、恥ずかしかったのか……? と思ってしまう。でも、その考えは一瞬で頭の隅に追いやった。違うなと思ったからだ。

 そんなことを考えていると——

 

「ご馳走様でした‼︎」

「は〜い、どういたしまして」


 あいちゃんは食べ終わっていて片付けをし始めた。僕も食事に手をつけ美味しく食べる。ママの料理は世界中で一番好きだ。食べ慣れているからか、家族で食べているからか、愛情がこもっているからか、いろんな理由があるが、とにかく美味しいのだ。


「ご馳走様」

「は〜い」


 僕も食べ終わり食器を水で流す。その隣には皿を洗っているあいちゃんがいて、水を出そうとしたところ、手が重なってしまう。


「ひぁっ‼︎」

「あっ‼︎」

「わあ!」


あいちゃんがかわいい声を出し、僕はドキッとし、ママはその声にビックリするという連鎖が起こる。

 しばしの沈黙——


「じゃ、じゃあ、洗い物できたのでそろそろ帰りますねっ!!」

「は、は〜い」


 そう言い、僕の部屋に行き荷物を持ってあいちゃんは出てくる。


「じゃ、じゃあね!」

「うん! またね!」


 別れる時あいちゃんの無邪気でかわいい笑顔にドキリとしたがいつの間にかガチャっという音がなりあいちゃんの姿はなかった。


 そうして、母からの詮索に逃げるように急いで部屋に戻り、ベットに飛び込み枕に顔を埋めた。


 そして、明日同じクラスじゃない学校生活がまた始まる。



 






 

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