道中2

カエデが目を覚めると朝になっていた


「おはようさん、早いね」

「おはようございます〜、魔物は出ませんでした?」

「ライト使ってないからだと思うけど出なかったね」

「あぁなるほど……」


(まじで便利だなライトアイ)

生活魔術ライトは消費魔力が少なく持続時間も長く便利な魔術、外で使えば辺りが明るくなり夜でも探索が可能となり冒険者が使用するケースが多い

相手からもその光が見えるというのが欠点であり無闇に魔物の居る場所でライトを使えばその光を目印にして近づいてきた魔物に襲われる

ライトアイは自分の目に作用する魔術でその欠点を克服している

(間違いなく冒険者が欲しがる魔術)


「そう言えばもう1人の彼女は?」

「カレンはいつも起きるのが遅いのでまぁ少し経ったら起きてきます」

「魔物が出た時大丈夫かな?」

「昨日出た魔物くらいなら私一人でも余裕です」


(同時発動は出来ないような話をしてましたし連続発動が得意って事でしょうか。詠唱破棄が出来るのかもしれませんが)

魔術師だと思っている御者はそう考える

カエデが起きてから数十分後魔物が現れる

(5級の魔物ですか。さすがに一人では厳しいでしょう)

5級、カエデ達が相手をしていた6級の魔物とは別格、魔物の中では弱い部類に入るがそれでも並の冒険者では油断したら死ぬ


「僕がやりましょうか? それかカレンさんを起こすか」

「5級、村に居た時は戦ってないけど……試験前の試し斬りには丁度良い」


(なんか見た事ある形状してるぞあの魔物)


「カエデさん?」


馬車から飛び降りる


「ちょっ!?」

「周り警戒しててください」


(5級相手それも魔術師が近づくなんて無謀事を!?)

馬車は停止する

急停止だったため寝ていたカレンは馬車の中を転がり頭を打つ


「いたっ!? 何事〜」


頭を抱えて起き上がる


「カレンさん、5級の魔物が出て今カエデさんが」

「うーん? 5級かぁ多分大丈夫ですよ。あっおはようございます」

「あ、あぁおはよう……大丈夫って下級魔術でも確かに倒せるけど……」

「魔術? 違いますよ」

「はい? いや彼女も魔術師でしょう?」

「いえ、彼女は……」

「纏」


全身に薄い魔力を纏う

(5級……6級との違いは単純な魔力量、魔力の塊である魔物は魔力量で強さが変わる)

等級の差は魔力量で決まる

剣を構える

(魔力を纏った……あれは戦士が使う。剣は護身用だと思ってましたが主要武器でしたか)


「戦士だったのか」

「はい、そうですそれも彼女は現状で冒険者の格付けで言えば5級の上澄みに居るらしいですから」


魔術学園の入学試験の難易度は高いとはいえ年齢の問題もあり冒険者の格付けで6級の上澄みか5級相当

その上澄みともなれば学年上位に位置する

平均的な魔術師が4級相当に該当する

(纏える魔力が少ないようですね。最もそれを加味しても納得は出来ますが……)


「あの技術は誰かに教わったのかい?」

「はい、カエデちゃんの両親が元3級冒険者なのでそれぞれ教えて貰いました! 数年前からひたすら強くなる為に」

「数年前から……」


御者はカレンの顔の傷を見る

痛々しく残っている

カレンはその視線に気づき傷に手で触れる


「この傷を負った後の話です」

「村を魔物が襲ったのかい?」

「いえ、これは危険と言われていた森の中に入った後にウルフナイトと呼ばれる魔物に遭遇した際に負った傷です」

「ウルフナイト……3級相当の魔物じゃないか。むしろよく生きてたね」


子供が3級相当の魔物に出会って生きているのは奇跡と言っても過言では無い

(対応したのはスーザンか名前を忘れましたがスーザンのパーティメンバーの戦士ですかね。あの傷を負って尚立ち上がるその意思素晴らしい)

御者の中でのカレンの評価が上がる

馬車内で会話をしている間にも魔物とカエデは戦う

魔物の姿は獣型、鹿のような姿をしている

(やっぱり鹿だ!なんか凄い禍々しいけど鹿じゃん!)

前の世界で良く見たことがある姿に似ている魔物に驚きを隠せないがそれはそれとして剣を振るう

角で剣を防いでくる


「やっぱり5級ただでは斬らせてくれないか」


自慢の角と剣が激しくぶつかる

(突進怖ぇ)

突進をギリギリで交わしてカウンターを入れるが浅い


「浅いか!」


「カエデちゃんが必死に時間を稼いでくれたので殺される前にライアンさんが来てくれて」


馬車内では呑気に会話が続く

(あぁ、ライアンと言う名前でしたね。……2人で3級相当を倒したんですか? 本来ならパーティで挑む相手のはず)

実力としては3級冒険者と同等とされてはいるがパーティで戦う事が推奨されており一人で戦い敗北したケースが何件もある


「そのライアンさんが元3級冒険者の方だね、3級2人で勝ったのかい? それならだいぶ凄いが……」

「私は気絶してたので見ては無いんですがライアンさんが一撃で倒したらしいです魔導……なんちゃら?」

「ま、まさか魔導武装じゃ……」

「そうです魔導武装です!」


御者は唖然とする

戦士の極地とまで言われる技術それを3級冒険者が使っていたという事実を

(これは期待出来ますね。今年は特に豊作です)


「これで終いだ!」


剣で魔物の首を切り落とし戦いが終わる

かなり苦戦していたのか息を切らしている


「ふぅ……疲れたぁ。おっラッキー」


戦闘中に切り落としていた角が消えずに残っていた

馬車に戻る


「おつかれ〜」

「おっ起きたのか」

「うん」

「本当に5級を倒せるとは……おっ、ホーンディアの角か、結構頑丈だから武器に使われたりする素材だぞ」

「おぉ! なら王都の鍛冶師に剣作ってもらお」

「それなら王都に着いたら鍛冶師紹介するよ彼なら明日の朝までに作れる」

「おぉ! 是非お願いします」


(魔物の武器は普通の剣より頑丈で性能が良いって聞くぞよっしゃ〜)

(未来有望な人材がもし武器の性能で落ちたなんてなったら笑えないですからね)

馬車は再び動き出す

夜中も動いていた為予定よりも早く王都に着く

城門には門番が居て御者が会話を交わす


「彼女達は?」

「王都まで魔術学園の入学試験を受けに来た二人です」

「あぁ試験は明日か。よし分かった通っていいぞ」


何事も無く通れる

毎年この時期になるとカエデやカレン位の歳の子が何人も来る

馬車を待機させる待機所に馬車を置く


「鍛冶屋はこっち」


三人は鍛冶屋に向かう

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