魔術学園入学試験編

12歳

2人がそれぞれ目標のために訓練を初めて5年の月日が経った


「2人とも準備は出来たか?」

「出来てます!」

「いつでも!」

「それじゃ開始!」


ライアンが開始の合図を出す

杖を構えたカレンが魔術を発動する

同じ魔術を同時に3つ発動する

3つの魔法陣が空中に現れて中央から炎が出る


「炎よ敵を焼き打て、ファイア」


5年前カエデが魔物に対して放った魔術

魔術の同時発動は魔術のセンスが必要となる難易度が高い

魔術師でも同時発動は出来ない者は多い

(さすが)


「それじゃ私も……纏」


カエデは全身に魔力を纏う

まだ魔力操作は完璧には程遠く纏える魔力は少ない

ただ魔力を維持する事は出来ている為無駄に魔力を浪費する事は無くなった

炎の魔術目掛けて剣を振るう

剣に纏った魔力が剣の性能を高め炎の魔術を真っ二つにする

魔力を纏う事で身体能力も高くなり3つの魔術を軽々と切り裂く


「楽勝」

「氷よ礫となれアイス」


再び3つの魔法陣が現れ次は小さな氷の礫がカエデ目掛けて飛んで行く


「ちょっ……」


油断していたカエデは咄嗟に回避が出来ず剣で防ごうとするが礫は体に当たる

事故防止の防護魔術の障壁のお陰でダメージそのものは無いが障壁が削れる


「はっ、この程度なら問題無いな!」


真正面から突っ込む


「炎よ敵を焼き打て」

「遅い!」


魔術が発動し切る前に剣を振るうが魔力を込めた杖で防がれる


「なっ!? 纏!?」


こっそりライアンから魔力を纏う技術を教わっていた


「魔術以外にも身を守る術は覚えるべきだと思ってね!」


剣と杖が拮抗する

近接戦は戦士であるカエデの技術の方が上

剣を振るい押す


「だけどインファイトは私の土俵だ!」


カレンは押される

魔力を纏って剣を防げてるとはいえ技量の差が大きい

防戦一方、このまま魔力が削られればそのまま押し負ける

勝ちを確信したカエデはゴリ押そうとする

それが仇となった……巧みに杖を使い受け流し剣を弾く

剣を弾かれたカエデは後ろに飛び退き魔術を発動する


「炎よ敵を……」

「ファイア!」


今詠唱を始めたカエデよりも先程詠唱を終えていたカレンの方が早く魔術を放つ

魔術の詠唱をしていたカエデは咄嗟に反応出来ず直撃する

障壁が割れる


「終了だ!カレンの勝ちだ」

「ぐぬぬぬ〜」


カエデは唸る


「ふふん、私の方が一枚上手だったね。ふふふ、奥の手は隠しておく物だよ」


衝撃で尻もちを付いていたカエデに近づいてカレンは自慢げに語る


「カエデ、まず油断し過ぎだ。魔術を斬ったからと言って勝負がついてないのに隙だらけで……」

「……3つの魔術切れたのに初めてだったからつい」


あははとカエデは笑う


「そして馬鹿正直に突っ込みすぎだ。魔術師が真正面からの接近を防ぐ手を打たない時点で怪しめ」

「まさか纏を習得してるとは思わなかった。あれは本当にしてやられた。押し込もうとしたけど無理だったし」


魔力を纏う技術の事を勝手に纏と名付けている


「それと剣が弾かれたあと距離を取ったのはいいが魔術使って魔術師の土俵で戦うのはオススメしない」

「あれは剣が弾かれて焦ったんだよねぇ、あのまま殴りかかれば勝てたかなぁ」

「その可能性は高いだろうな……カレンに関しては魔術の技術も魔力操作も習いたてながら上手い。一つ言うなら魔力が溢れてたから溢れないようにする事だな」

「試験までには多分行けると思います」

「あれ習いたてなの!? えっあれワンチャン私より魔力込められてたよね……」

「まぁ私とカエデちゃんは魔力量の差があるからそれ考えると多分込めてる纏えてる魔力率は少ないくらい?」

「5年かけてようやく魔力溢れるの押さえ込んだのに……初心者にすぐ追い越される……この天才少女め〜!」


肩を掴み揺らす


「いやまだ追い越してないから……魔力溢れてるから」

「カエデお前は溢れずに纏える魔力量を増やすだけだ。まぁそれが一番大変なんだけどな、あぁそれと魔導武装の理想系決めておけよ。その通りに魔力を纏うんだから」


魔導武装は人によって形が変わる

それは自ら最適な形の纏を作り出すからで似たような戦い方する人は似るが全く違う戦い方をする人はかなり変わる

(まだどうするか悩むんだよなぁ。ライアンみたいな攻防一体の魔導武装も良いんだよなぁ)


「はーい」

「良し、2人ともまだ余裕はあるな?」

「まだまだ魔力はあります」

「あるよ〜」

「見回りを頼む、自衛団の訓練に行ってくる。絶対に格上とは戦うなよ」

「「はーい」」


そう言ってライアンは自衛団が集まって訓練してるところへ向かう

ライアンの訓練のお陰もあってだいぶ自衛団の実力はだいぶ上がっている

相当強い魔物が出ない限りはこの村は安全だろう


「それじゃ見回り行くかぁ」

「そうだね」

「……なぁカレン」

「うん?」

「あれ本気じゃなかったよな? お前3つ以上起動出来るだろ」

「……ナンノコトカナ」


露骨に棒読みになりカレンの目が泳いでいる

(カレン嘘下手だからなぁ)

いつも嘘をつく時は目を泳がせたりしている


「何個までなら起動できる?」

「まぁ3つ以上と言っても4つ迄だよ。そして2つの魔術なら並行可能」

「並行出来るのか……強いなぁ」

「ふふん、強いでしょ。ってそっちもそっちでだいぶ凄いよ。魔力が一切溢れてない」

「それだけを集中して鍛えたからねそのせいで纏える魔力が少ないから今までよりも長期の戦闘が出来るってだけ」

「それ普通に凄いからね?」

「そう?」


森の入口に着き門へ向かう

門番の自衛団員が立っている


「お疲れ様です」


カエデが敬礼をするとちゃんと敬礼を返してくれる


「あぁ、2人か見回りか?」

「はい、見回りです。通りますね」

「迷い出た魔物の量が増えてるから気をつけろよ」

「はーい」

「強い魔物出てきたら逃げるから大丈夫」


森の中に入り見回りを開始する


「まぁ増えてるとはいえ早々出会わないっしょ」

「だねぇ。そうポンポン出ても困るし」

「ギィギャギャ」


近くの草むらから魔物が飛び出してきた

カエデが魔力を纏い一撃で仕留める


「出たね」

「出たな」

「調べ探し隠れた者を見つけ出せサーチ」


カレンが魔術を起動する

下級魔術の一つ、支援系魔術サーチ

弱い魔力の波を発生させて物体や魔力を持つ者の位置を使い手に知らせる魔術

かなり便利な魔術で魔術師の必須魔術ともされている


「どう?」

「付近に五体」

「多いなぁ位置は」

「真正面に二体左に一体、右に二体、カエデちゃんは正面の魔物二体」

「了解」


カエデは言われた通り正面の魔物と戦うために草むらに突っ込む


「炎よ敵を焼き打てファイア」


3つの魔法陣から炎の魔術が放たれる

一つは左、二つは右の魔物目掛けて飛んでいく

炎が着弾すると断末魔を上げて魔物は倒れ魔石になる


「その程度で防げるとでも!」


一体を石の斧ごと真っ二つに切り裂きもう一体も軽々と仕留める

魔石を回収する


「楽勝〜」

「この程度の魔物ならね。サーチに引っかかったらさっさと仕留めよう」

「そうだな。さっさと終わらせよう」


カレンがサーチを使い魔物を見つけカエデが突撃する


「遅い!」


次々と魔物を倒していく

一部の魔物は逃げるような行為を取る

理由は不明だが稀に逃亡を図る魔物が居る

自分より強い敵や傷を負った時に稀に取るが稀であり基本は相手が強かろうが傷を負っていても突っ込んでくる


「逃がさない」


魔力で身体を強化したカエデは逃げる魔物よりも早くすぐに追い付き追い抜いて目の前に立つ


「魔物は仕留めないとね!」


逃げようとする魔物を加減せずに仕留める

倒した魔物の魔石を回収する


「もう居ないかな」

「それじゃ帰るかぁ」


見回りを終える


「お疲れ、なんか張り切ってたな」

「あはは、聞こえてた?」

「お前の声は森の中凄い響いてたぞ?」

「ですよね。あっ、回収した魔石です」

「20個はあるな……こんなに居たのか」

「いましたね。付近に居る魔物は全てサーチで見つけて仕留めました」

「一部は上手く隠れてたよ。サーチが無いと見つからないよあれは」


訓練の合間に見回りをして魔物を倒すそんな日常を続けて魔術学園入学試験の2日前になる


「それじゃ行ってきます!」

「行ってきます」

「試験合格しろよ!」

「頑張れよー」

「訓練通りにやれば合格できると思うから焦らないようにね」

「はい!」


荷物を持ち村人から見送りを受けて村の入口で待つ馬車に向かう

魔術学園のある王都には馬車で1日かかる為2日前に王都へ向かい宿に泊まり試験会場に向かう

遅れたらそもそも試験を受けれない

村に来ていた馬車に乗る


「お世話になりまーす」

「王都までだね。少し遠回りになるけど村を経由するかい?ここからなら丁度夜の時間に別の村に着くけど」

「いえ、直接王都までお願いします。何かあって遅れたら困りますので」

「はいよ」


簡単に御者と会話を交わす

少し遠回り程度なら少し時間に余裕あるので間に合うが下手に遠回りして何かあって遅延したら間に合わなくなる

それは避けたい


「楽しみだね」

「……あぁ楽しみだ。絶対勝つぞカレン」

「当然、カエデちゃんこそ負けないでよ?」

「はっ、魔術師だろうが戦士だろうがぶっ飛ばしてやるさ」


馬車が動き出し王都へ向かう

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