第11話 冒険者パーティー「麗しの庭園の誓い」



「アマンダさん。おはようございます」



「……お、おはよう」



 翌朝、随分としおらしくなってしまったアマンダさんに挨拶をしながら俺は目を覚ます。二人が寝たのは同じベッドだ。そして二人で並んで、麗しの庭園の誓い邸の一階へと下りていく。



「ふたりとも!こいつはアマネって言うんだ!よろしくな!」



 一階に下りてリビンクルームに向かうと、二人の女の子が室内でくつろいでいた。彼女たちに対して、アマンダさんが俺のことを紹介してくれる。どうやらリビングルームにいる二人が、アマンダさんと冒険者パーティを組んでいる女の子らしい。Aランク冒険者パーティー「麗しの庭園の誓い」は三人パーティーと、アマンダさんは俺に教えてくれていた。



「また、アマンダが男を拾ってきた」



 クールでジト目をした黒髪青目の女の子が、アマンダさんにため息をつきながら苦言を返す。彼女の名前はマーリンさん。身長150センチメートルくらいで、黒色のローブを着ている。彼女が、アマンダさんが言っていた冒険者パーティーの魔法使いらしい。



「な、な、何を言ってるんだ。それじゃあ、私が男をとっかえひっかえしてるみたいじゃないか!」



「……事実。そしてアマンダは、いつもダメ男に騙される。……それに昨夜は、アマンダのよがり声、ずっと外に聞こえてた。変態」



「ば、ばっかやろぉぉぉ!」



 なんだかアマンダさんとマーリンさんの会話ヒートアップしているが、触れないでおこう。俺は君子危うきに近寄らずの精神で、よそ行きの笑顔のまま彼女たちの会話が終わるのを待つことにする。



「――あはは!二人は朝から元気がいいなぁ」



 二人の熱い会話を楽しそうに見守るのが、もうひとりのパーティーメンバーのミュゼルさん。彼女はドワーフ族で、身長は140センチメートルくらい。銀色の髪に青い瞳をした、巨乳の女の子だ。



 彼女は整備士女子らしく黒いツナギ姿にグレーのタンクトップ姿をしていて、ミュゼルさんが着ている大きめのタンクトップの隙間から見える彼女の横乳が素晴らしくセクシーである。タンクトップの横から見える乳房は至高。それだけは譲れない。



「アマンダはアマネと簡単に寝たみたいだけど、私は違う。そんなコトしてきたら燃やす。恋人がいるし、私は絶対に浮気しないタイプだから」



 なにやら危ない会話が、俺にも飛び火してきている。俺は笑顔を固めて、マーリンさんの言葉を受け流すことにした。



「おはようございます!」



「――アルバート!おはよう!」



 しかし、そんな険悪なムードを吹き飛ばす救世主がこの場に現れる。彼の名はアルバート。金髪に長い前髪で目を隠した、錬金術師見習いの男の子らしい。彼の姿を見た瞬間に、マーリンさんが身にまとっていた険悪な雰囲気が一瞬で吹き飛んだ。



 マーリンさんの見た目はジト目に無表情だから感情がよく見えないが、実はかなり喜んでいるのが空気で分かる。



 アルバート君はマーリンさんの彼氏で、二人は最近付き合い始めたようだ。街で悪い男に絡まれているアルバート君を、マーリンさんが助けてあげたのが出会いらしい。



「マーリン。実は大切な話があるんだ。ついでだし、みんなにも聞いてほしい」



 なにやらアルバート君が、かしこまった話をし始める。初対面の俺もこの場にいていいのかと迷ったが、今から出ていくのも変なので、目立たないように端っこに寄りながら黙って見ていることにする。



「実は、僕はこの街から出ていくことにしたんだ……」



「そ、そんな……」



 アルバート君は錬金術の修行のため、この街を出て別の町に移ることになったらしい。その話を聞いたマーリンさんが、彼と離れたくないと悲しそうな声をあげている。



「それで、マーリン。僕と結婚してくれないか。一緒に街を出て、僕に付いてきてほしい」



「――アルバート!」



 どうやら、アルバート君の大切な話とはマーリンさんへのプロポーズだったようだ。突然のプロポーズに、マーリンさんが涙目になりながら喜んでいる。そしてそんな彼女を、アマンダさんとミュゼルさんが笑顔でやさしく見守っていた。



(――寝取りスキル発動。寝取りチャンスです。寝取りますか?)



 しかしそんな祝福すべき場所で、俺の寝取りスキルが発動をしている。最低なスキルだな。俺の頭の中で、今がマーリンさんを寝取る絶好のチャンスだと、寝取りスキルのアラームが鳴り響いているのだ。



 でも、これを寝取るのはさすがに人としてどうかと思う。俺が所持している寝取りスキルは、どうやらメチャクチャなスキルらしい。だから、俺は寝取りスキルの警鐘を無視することに決めた。



「〇〇日の朝、僕はこの街を出るから、もし、僕のプロポーズを受けてくれるなら、マーリンには早朝に馬車乗り場に来てほしい。冒険者パーティーのことや、マーリンの将来のこともあるだろうから、ゆっくり考えてくれればいいから!」



 そう言って、アルバート君が家から去っていく。彼はこれから、錬金術師見習いの仕事に向かうらしい。



 マーリンさんがプロポーズをされたのを受け、三人がこれからのことについて話し合うそうだ。だから関係の無い俺は、外に出て時間を潰すことにする。その際、俺はアマンダさんから、絶対に今日もこの家に泊まるようにとお願いをされることになった。彼女はだいぶ、俺との関係にハマってしまったようだ。



「さて、何をして時間を潰そうかな?」



 麗しの庭園の誓い三人組が住む家を出たところで、俺は今から何をして過ごすかを考えてみる。そこで、いいことを思いついた。



 さっきから俺の頭の中で鳴り響いている、寝取りチャンスとは何のことなのかを調べてみることにしたのだ。



 実はさっきから俺の寝取りスキルが、アルバート君をつけることでとあるチャンスがおとずれると俺に教えてくれている。



 そして丁度いいことに、アルバート君はまだ家の前から見える場所を歩いていた。



 スキルの警告も気になることだし、寝取りスキルの教えに従って彼をつけてみるのもいいかもしれない。もし何もなくても、錬金術師の仕事とはどんなものかも気になるし、それを見学すればいい。



 そう思い立った俺は、創造スキルで生み出したスキルのうちの一つである光学迷彩スキルを使い透明になると、こっそりとアルバート君の後をつけてみることにするのであった。



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