第6話 シュネーゼルの街で冒険者登録
俺はアマンダさんと並んで、シュネーゼルの街の入り口へと歩く。やはりこの世界は、異世界小説でよくみるファンタジー世界のようだ。俺が街壁に近づくと、門番によって身分を確認されることになった。テンプレイベントの発生である。
「止まれ!この街へは、何の用事で来た?」
「田舎から、仕事を探しに出てきました」
とりあえず俺は門番の兵士に対して、当たり障りの無い答えを返すことにする。ここで、余計なトラブルになっても困るしな。それにニホンという田舎からこの異世界に転移させられて、俺が生きるためにこの街に仕事を探しに来たというのは本当だし、嘘はついていない。
「そうか。身分証は?」
「持っていません。冒険者ギルドに登録して身分証を作ろうと思っています」
「そうか。田舎から出てくる奴は大抵そうだからな。とりあえず、この水晶に手を当ててみてくれ」
俺がアマンダさんから事前に、冒険者ギルドに登録したときにもらえる冒険者カードが、この世界では身分証になるということを聞いていた。だからそれを身分証にすると門番の兵士に伝えると、何の問答もなく事務的な手続きが進んでいく。むしろ、この街ではよくある光景らしい。
俺の着ている服がボロボロの黒いスウェット姿に、薄汚れたサンダル姿なのも功を奏したのかもな。変な布の服を着た田舎の貧乏者だと判断をされたようだ。
「これで、いいですか?」
「うむ。犯罪歴もないと」
俺が兵士に言われたまま水晶に手を当てると、その水晶がキラリと青く光る。どうやらこの魔道具によって、俺に犯罪歴があるかどうかを調べるらしい。異世界辞典のスキルで確認をした。
「ようこそシュネーゼルの街へ。通行税は銅貨三枚だ」
(――あっ!やばい!)
俺は通行税を要求されたことに内心焦りながらも、アイテムボックス内を確認してみることにする。何かお金になるものがないかを確認するためだ。街に入るのに、通行税を支払うのも異世界者のテンプレだ。俺は、そのことを失念していた自分を悔やむ。
(まじか!――アイテムボックスの中にお金がある!ありがとう!邪神様!)
しかしなんと、俺の焦りになど関係なく、俺のアイテムボックスの中に金貨100枚、銀貨100枚、銅貨100枚があることが確認できた。どうやら邪神が気を利かせて事前に、アイテムボックス内にお金を準備してくれていたらしい。その身一つで、異世界に来た貴様に必要なものだろうというメッセージ付きだ。
なんだかんだ至れり尽くせりである。あの邪神は、きっとメチャクチャに仕事ができるエリートな神なのであろう。邪神ではあるが。
(さすが、神様、仏様、邪神様だぜ!――感謝します!)
(ククク。我をもっと褒め称えるが良い)
何か、頭の中に謎の言葉が聞こえた気がしたが俺はそれを無視すると、ポケットからお金を取り出すふりをしてアイテムボックスを使い、銅貨三枚を兵士に渡すことにする。
「うむ。騒ぎを起こさないように」
「分かりました。ありがとうございます。あの、冒険者ギルドへはどう行けばいいですか?」
「ああ。それなら私が案内するから大丈夫だぜ」
俺が冒険者ギルドへの行き方を門番に聞こうとすると、なんとアマンダさんが街までではなく、俺をギルドまでも案内してくれるという。なんて親切な女性なんだ。俺は異世界に来て最初に、とても素晴らしい出会いをしてしまったらしい。
「せっかく知り合ったんだから、仲良くしよーぜ!」
「ありがとうございます!アマンダさん!」
こうして、俺はアマンダさんに案内されることで冒険者ギルドへと行くことになった。冒険者ギルドにたどり着くと、俺は早速受付に行き冒険者登録を済ませることにする。
「こちら冒険者の証になります」
冒険者登録をする際の書類への書き込みも、異世界言語スキルのおかげか、俺は異世界の文字をスラスラと書くことが出来て特に困ることもなかった。便利なものである。
冒険者の証として登録をした俺に渡された一枚のカードには、アマネという俺の名前と、冒険者ランクGという旨が記載されていた。
この世界の冒険者は駆け出しのGランクから、F、E、D、C、B、Aの順に強くなり、最強はSランクとされているそうだ。今の俺は駆け出しで、実力も未定のGランク冒険者というわけだ。
登録の時に説明を受けたのだが、冒険者ギルドで受けられる依頼には安全のためにランク付けがされていて、冒険者カードに記載されているランクと、ひとつ上のランクまでしか依頼を受けられないらしい。
つまり、今の俺が受けられるのはGランクの簡単な依頼と、Fランクの安全な依頼のみというわけだ。
身の丈に合わない依頼を受けた場合、当然、依頼は失敗するし冒険者は死亡する。また、生き残っていても、依頼を受けた冒険者側に過失があるとギルドに判断をされた場合は、ペナルティとして違約金を払わなけれならないようだ。それによって身を滅ぼす冒険者が、一定数はいるらしい。
本来なら、冒険者の安全と依頼の成功率を上げるためのシステムなのだそうが、上手くいかないこともあるようだ。
だからくれぐれも見栄をはらずに、受ける依頼は自分の身の丈にあったものにするようにと俺も釘を差されることになる。この話は、登録をする新人冒険者全てに説明をしている話らしい。
「登録は終わったか~?アマネ、メシにしよーぜ!」
俺が冒険者登録を済ませると、待っていてくれたのかアマンダさんが再び俺に声をかけてくれる。俺はアマンダさんとすでに、かなり仲良くなっていた。ありがたいことだ。
どうやら彼女は、新人冒険者の頃から行きつけにしている安くておいしい食堂に、俺を連れて行ってくれるらしい。もうすぐ昼メシの時間だ。アマンダさんに昼食の話を聞いて、なんだか俺も腹が減ってきた。
「よろしくおねがいします!」
「じゃあ、行こーぜ。こっちだ!」
俺はアマンダさんの提案に乗ると、彼女に案内をされながら、昼食を食べに食堂へ向かうのであった。
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