第3話 ボク

みうちゃんもかいくんも、むにゃむにゃいいながらわらっていました。いい夢を見ているんだなって、ボクはおもいました。

そして、むくっとおきあがると、しはいしゃに「ありがとう」って言ってまあるいひかりになってとんでいっちゃいました。

ボクはさみしくなったけど、がまんすることにきめました。

がまんするのはへいきです。

ずっとそうしてきたからです。

しはいしゃはボクに言いました。


「君は食べないのかい?」


って。

ボクはあまりたべたくなかったけど、たべることにしました。

だっておいしそうなんだもん。

うまれかわりのことは、どうでもいいやってなりました。


あまくておいしいチョコレートを食べたら、きゅうにねむたくなってしまいました。

くるくるまわるヘンテコなへやに、しはいしゃがいました。


「君はどんな大人になりたかったのかな?」


そうきかれたから、ボクはちゃんとこたえてあげました。


「ふつうのひとになりたいです。バカってみんながいうんだもん。だからちゃんとした、ふつうの人になりたいです」


しはいしゃはくるくるのへやといっしょにきえちゃいました。

ボクはあたまがいたくなりました。

からだじゅうもいたくなりました。


いろんな人がとおりすぎていきました。

すうじととけいのはりのおとがカチカチなっていました。

あたまがいたくてなきそうになりました。

ボクはおおきくなっているみたいです。

ほねがいたくなって、あたまもいたくて、大勢の人の話し声や笑い声やなきごえがきこえています。

時計の針がカチカチいってます。

ボクは考えました。

昔いた世界がものすごく早いスピードでボクを通り過ぎていく。

僕の抜け殻を、生きていたなら経験したであろう世界が駆け抜けて行く。それは直感でもあり、実感でもありました。

加速する日常は、遊戯にも似ています。


「ふつうの人になりたい」


たったそれだけの希望の為に、虚構の時間帯が瞬く間に消えていく。

小学校の思い出。

好きになっていたであろう異性との初キス。

中学校へ入学し、部活に入り塾にも通う。

高校ではサッカーやダンスをして、友達とコンビニの駐車場で笑い合い、大学へ進むとアルコールを覚え、サークルに参加し目一杯遊ぶ楽しみを体感する。社会人として生き抜く術を身に付けて、それなりに勉強もした。

これが虚構の人生なんだ。

僕は虚しくなる。

何故なら僕はその人生を、本当の生を知らない。

もはや死んでいるのだ。

僕は泣いた。

思い切り泣いた。

7歳で殺されたのだ。

母が再婚した相手に僕は殺された!

悔しくて憎くて悲しくて泣いた。

支配者が、僕の目の前に立っている。

僕の肩に手を触れている。

僕は叫んでいた。


「どうして! なんで! 教えて下さい! 僕は生きていちゃいけなかったんですか!? あなたなら知ってるでしょ! 僕は、、、僕は何の為に生きていたんですか! 7年しか生きれなかった、なぜだ!? どうして!」


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