俺と累 そして結末
「おい、累。昨日お前の友達が東阪のことナンパしてたぞ」
「そんな、僕は知らないよ」
「注意してくれ、なんかいろいろあるんだよ」
「いろいろって?」
この後、次あった時、彼氏(俺)がいなきゃまた声をかけるということ。まだあのナンパ男が諦めていないことを累に伝えた。
下手したら犯罪にまでいってもおかしくない。
「じゃあ、ともが彼氏になればいいじゃん?」
「なんでそうなるんだよ」
「普通に考えてかな」
今から復縁しようなんて絶対にない。東阪も復縁なんて望んでいないし、また同じ結果になる可能性だってある。
そして、東阪と別れた後にあのグループのやつの一人に告白されたし。今復縁なんて危なすぎる。
「今更無理だ」
「いや、いけるかもよ? 実際まだ未練たらたらでしょ?」
「そういう言い方はやめてくれ。俺はただ、何があったにせよ別れてしまったことに後悔しているだけだ」
どんな理由があるにせよ、やはり東阪と別れたのは後悔しかなかった。
まだ好きだった。でも、いじめということがあり、しょうがなかっのだ。しょうがないで済ましていいのか、いっぱい考えたが、結局何も自分には分からなかったのである、
「東阪さんも今はともを必要としているかもよ」
なるほど。そっちの考えがあったか。
東阪は身を守るためとして俺が必要な状態。だが、彼氏なら誰でもいい。他に男がいればだ。だから、東阪が俺と復縁なんて考えているはずがない。
「俺を必要としているわけじゃないだろ」
「どうしてそうなるかなあ……」
累は俺の返事に呆れているが、俺にとって、累の考え方がネジ3つぐらい外れている。
「もう早く復縁して?」
「は……?」
「二人を見ているとムズムズするから」
やはり7つぐらい外れているのだろうか。発想がイカれている。
だが、俺も男女の関係にムズムズすることはあった。
付き合っていると思っていた人たちがまだ付き合っておらず、お互い引っ張っている状態。
お互いが告白してきたら、OKするという前提でどちらも受け身になってしまう状態を見ていると、ムリやりでもなんらかの方法で付き合わせたくなる。
「頭イってんのか」
「もう……、またやらなきゃいけ……」
累はなんか言っているようだが、どうせ文句だろうと思ったので、耳を閉じた。
そして、放課後帰ろうとした時——
「やめて……!」
おいおい。
なんで前の奴らが正門で待ち伏せしているんだよ。
てか怪しすぎだろ。マスクにサングラス、帽子は被っていなかったので髪型で判断がついた。
あのサラサラの派手な金髪は前のやつしか思い浮かばなかった。
「累! 早く行こう!」
今日は珍しく累に遊びに誘われ、一緒に変えることになっていたのだ。
累の方を振り返ると、口元が緩く微笑んでいるように見えた。
「助けに行くのね」
「そんな場合じゃねえだろ! どっか連れて行かれそうじゃないか!」
地面を力強く蹴り、男の腕を掴む。
「どういうことだ」
「いや、怪しかったから二人のこと見にきたらお姉さん一人だったから遊ぼうかと」
「何言ってんだよ! お前も頭イっているのか!」
どいつもこいつも頭がおかしいやつばっかだ。こんなみんなに見られるところで堂々とナンパする奴なんていない。
「いいからどっか行けよ」
「ああ! やっぱりこの二人カップルだったのかあああ!!」
急に金髪のやつが大声で叫び出す。
「なっ!」
すると周りにいた人たちの反応が大きくなっていく。
「助けるなんてかっこいい〜!」
「やる〜」
「あの人すごいね」
「きゅんっ!!」
いろんな反応が飛び散り、俺ら逃げるように
「なんでお前も逃げんだよ!」
「面白そうだったから?」
「はあ……」
俺は東阪の腕を引っ張り逃げると、後ろからニヤニヤしながら走る累と金髪の男がついてきたのだ。
最近は考えさせられることが多く、脳に負担が溜まっており、走ったせいか少し頭痛がした。
「智也大丈夫……?」
「ん……? あ、ああ、大丈夫だ」
「……そっか、ありがと」
頭痛でフラフラしていたのか、それに気づいた東阪が俺に声をかけてくれた。少し頭痛が
それより俺らは誤解を解かずに走り出してしまった。
これだと、みんなにまた付き合ったと判断され、イジメられるかもしれない……
それだけは避けなければならない。今までのことが台無しになる。どうすれば……
「智也……」
悩んでいると、東阪の声が聞こえ顔を上げると、東阪は泣いていた。
なんで泣いているのか分からなかった。いや、わかろうとしていないだけかもしれない。
東阪はいじめで苦しみ、俺と別れ開放された。俺にとっては解放した気分でいた。
だが、それは間違いだったのだろうと分かる。東阪は別れることよりいじめを耐えることを選んだのだから。
そして俺は東阪にとって最悪の決断をしてしまった。
「とも、もう彼氏なんだから」
累が泣いている東阪を見ながら声をかけてくる。俺は
「東阪……」
膝を地面につけ泣いている東阪に俺も膝を地面につける。
そして——片手を頭にゆっくりと丸め込むように巻き、もう片方の手で、肩を抱き、自分の胸に体をあずけさせた。
抱かれて脱力しているのか、全体重を俺の胸にあずけてきて、
そしてまた、大声で泣き出す。
この時俺は思った。
——抱いてよかった——
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