第11話 落日の日に備え


城砦集落まで後退した米軍と自衛隊と保安隊の自分達は、篭城をするべく

正門の壊れた扉を急いで塞ぐ作業に取り掛かっている。

米軍と自衛隊が出撃してから、集落の人々は扉の補強をしていたが、完全に

塞ぎきれていなく、作業の途中で我々が戻ってきたからだ。

集落に米軍の車両を入れたいとセガール中尉が、自衛隊と話をしていたのだが

集落の周りには空堀があり、その堀には橋が架かっていたが、流石にMRAPや

JLTVが橋を通れば、橋が崩壊しそうな作りであった。

それと2tトラックですら橋を渡るのは無理そうである。


俺は直ぐに髭2尉に、近くの工事現場から工事用の資材を持ってきて橋の補強を

する事を提案した。


「調布駅の北側に、ビルを建築してる場所があります、そこから資材を調達して

橋の補強をしては如何でしょうか」


髭2尉は即答で許可をだし、俺が運転するトラックは建築現場へと向った。

そして米軍は、敵の進行を遅らせる為に遅滞行動を開始し始めている。


現場に到着した我々は、建築現場の正面ゲートの鍵を破壊し、中に入って資材に

何があるかを確認と溶接機を探しだしている。

溶接面や溶接棒アーク溶接機、それと半自動溶接機と溶接用グリスをセットで

2tトラックに積み込む、それと、高速切断機やアングルの6000x10x10を

あるだけ資材倉庫から運び出し、穴を塞ぐ鉄板が積んであった4tロングの

平トラックに積み込んだのだった。

平トラックにはユニッククレーンが付いており、皮手袋も積んであって助かった。

鉄板を素手で触ったりしたら、バリで手を怪我する可能性があるからだ。

それとついでに、倉庫にあった電動グラインダーと替え刃を箱ごと積む、そして

発電機も2tトラックに積み込んだが、まぁーあったら便利だから持って行く事に

したのだが、俺が4t平ロングを運転するにしても、2t箱トラックを誰が運転する

かで話し合っていたが、ミッション車を乗れる隊員が居ないと解った時点で、

答えは出て居た。


俺と秋月さんが運転するトラックが、集落に戻ると直ぐに、俺が2tトラックの運転を代わり道具を橋の近くに下ろし始め、降ろし終わると2tトラックを退けて、次に

資材が積んである4tトラックを橋の前に横付けしていた。


俺の橋の補強案は、現在の橋の上に鉄板を置き、それを溶接で繋ぎ合わせた後に、

鉄板の下側に切ったアングルを横向きで溶接し、残りのアングルは縦にして橋桁の

補強に回すと言うものだ。

この補強だけでMRAP(14t)やJLTV(推定8t)の通行に耐えれるのかは不明だったが、徐行して渡れば壊れないだろう。


直ぐに案を皆に伝えると、作業の段取りを始め、俺が鉄板を橋の上に置いてる間に

隊員の人達が総出で、橋の長さや高さを測ったり、橋桁の下に足場を作り始めて

作業の効率化を図っている、隊員の中で建築関連の仕事をした者は1人しか居なく

かったが、実家が建築業で学生時代から家業の手伝いをしていたと、豪語している

だけあって、手馴れた手付きで準備をはじめていた。

メジャーの使い方や高速切断機の使い方を他の隊員に、説明して行き直ぐに理解

してくれたので、俺は急いで最初の作業に取り掛かる。

トラックが横転しない様にアウトリガークレーンの足を横に出し、トラックを

確りと固定させた後に、クレーンのアームを伸ばし荷を吊りはじめた。

鉄板いはクレーンで吊る事を考えて、丸い穴が開けられていたので、作業が捗って

いたのは助かった。


そんな事をしている最中に、十条2尉の操縦するV-22が木更津駐屯地から弾薬を積んで戻って着たのだった。

髭2尉は、直ぐに弾薬を2tトラックに運び込むと、秋月さんの運転で米軍が戦闘を

続けている場所まで運び込もうと直ぐに、行動に移っていた。


「おじさん、気をつけて作業してね、私は荷運びで皆に貢献してくるね」


俺がユニッククレーンで、玉掛け掛け外しをしていると、声をかけてくれ、

事故の無いようにと念を押してくれたのだ。

そして、俺も秋月さんに無謀な行動はしないでくれと、頼んだのだが少し心配で

あったが、秋月さんの他に髭2尉と部下2名の計4名で、米軍に弾薬を届けに向った。

髭2尉は助手席に乗って居るし、秋月さんが暴走する事もないだろうと思い、作業を

引き続き行った。



ーーーーーーーーーーー


作業を終えたので、橋の前に止めていた4tロングを試しに、橋を渡らせると鈍い

音を経てていたが、何とか無事に橋を渡りきる事が出来たので、俺は直ぐに広場に

着陸しているV-22の操縦士の十条2尉に報告をした。

そうすると十条2尉から弾薬を運んだ髭2尉に、無線連絡が行われ篭城の準備が出来たとだけ伝えていた。

援軍の予定もないが、此処に篭城するみたいである。

何故ここに篭城をするかと言うと、異世界人を逃がすだけの航空機が余ってない事

が大きな理由だったのだ。

オスプレイだけだったら、米軍と自衛隊だけだったら乗り込む事もできたが、俺達

や異世界人は置き去りになってしまうからだ。

自衛隊も米軍も、要人の非難でヘリが全て出払っていたり、特殊作戦中だったりで、

BfSBのIチームを上空援護していたヘリは、OH-6フライングエッグ観測ヘリで上空援護をしていた位に、全てのヘリが何らかの作戦行動に付かせていた。


あくまでもでは、援護や輸送ができるヘリはなかっただけで、その他の空域からは、あるいは回す機体が残っている可能性はあるが、未だに混乱は落ち着いておらず、他の場所も手一杯な状況である。

最悪の場合は、自衛隊のV-22で異世界人と米軍兵士を木更津か習志野駐屯地に運ぶしかなかったが、そうすると米軍が反発するだろうと、十条2尉や下志津3尉が言っていたのが聞こえてきた。

異世界人を廻って、此処で米軍と自衛隊が交戦する事態にも成りかねない状態を避け

何とかして、上からの指示を仰ぎたかったみたいだが、川野総理代行も手一杯な状況が続き、それ所ではなかった。

普通に考えたら、異世界人の保護を優先事項なのだが、川野総理代行からは一向に返答がなかったのである。

それもそのはず、川野氏は日本国の象徴とも言える最高要人の救出を指揮していたからで、後日に川野氏は叙勲され日本国の英雄と賞賛されたのである。


十条、下志津の両氏は、此処が陥落寸前で行動すれば、米軍も異世界人を自衛隊駐屯地に非難させる事に、文句は言わないだろうと相談していた。

切羽詰まった状況ならば、誰も責任を取らないで済むはず、そう考えたのである。


「米軍も兵士が救え、尚且つ重要情報を自衛隊と共有しているが、情報提供者を確保

出来ないのは不満に思うが、それ以上の事は求めない・・・いや求めるか・・・」

「自分も、そう思います十条2尉」

「そうだよな・・・」

「はい・・・」

「米軍が異世界人を引き渡せと言ってきたら、もうコレは政治の話になる、我々の

出る幕はないのだから、責任は全て上に擦りつけるか・・・」


十条2尉は、そう言うと遠くを眺め頭を掻きだして、不安な顔付きで大きな溜め息を

漏らしていたのだ。


十条、下志津、髭、この3名は自衛隊幹部として、現地で行動を一任されており

何か問題があれば全ての責任を取らされる立場にある、だからか行動は慎重に慎重を

重ねており、問題を起こさない様に勤めていた。

オスプレイを使い、異世界人をピストン輸送して逃がす事は簡単であったが、後日に

その行動が問題にされる事が懸念されたので、簡単に行動は出来ないでいる。


そんな十条2尉が考え込んでる中、銃声が段々と集落へと近づいてきており、

米軍兵士が撤退して着たのがわかった。

直ぐに我々は、正門に出ると2tトラックと米軍車両を橋えと誘導すると、ゆっくり、ゆっくりと掛け声をかけながら進ませ、計7台の車両を集落の中に入れた。

そして、正面扉に4tトラックを横付けして塞いだのである。


オスプレイからは、更に弾薬が運び出され、米軍と隊員に均等に配られ始め、

弾薬を貰った隊員や兵士は、外壁に上り防備に付いていた。


そんな中で、米軍の観測ヘリOH-6フライングエッグからの無線報告がなされており、敵の数がさらい増えていると報告されていた。


「こちらフォックス25、現在、多摩川原橋の上空を飛行中、敵の増援が稲城から調布に進行中、数は解らない、繰り返す敵の数は解らない」


その無線を聞いたセガール中尉は、愕然としながら救出したIチームの方に行き

上官と思しき人物に報告をしていた。


「准将閣下、此処に敵の増援が向かっていると観測ヘリからの報告です

もしもの時は、お覚悟をお決めください」

「此処から今直ぐに逃げる用意をしろ」

「それは出来ません、此処には最重要機密と異世界人がいるのです、もしも

この情報を持ち帰れなかったら、我々米国の復興は出来ません」

「貴官は何を言っている、此処に何の意味があると言うんだね」

「閣下、あちらをご覧下さい」


セガール中尉は准将に、そう言うと獣人達の居る建物に案内したのだ。

獣人を見た准将は、驚きの余りに獣人の頭に付いていた耳や尻尾を手で

握ったりしてしまい、獣人から警戒されてしまっていた。


「信じられない・・・私は夢でも見ているのか・・・中尉、中尉

基地司令部に連絡はしたのか」

「既にしております、ですが未だに司令部からは何も言ってきません」

「あの堅物共め、事の重要さが解ってないのか・・・」

「セガール中尉、この者達は基地に連れて帰るべきだと私は思う、だから

自衛隊には決して渡してはならない、解ったな」

「はっ、了解しました」


こうして日本より米国の方が、事態に重きを置くことになったのである。





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