第9話 問題は山積み
セガール中尉は、場の空気を和らげる為に、発した言葉だったのではないかと、
思ってしまった。
学者さんや獣人の人達は、自衛隊のオスプレイが着陸しただけでも、驚き攻撃を
しようとしたからだ。
更に米軍兵士を見て警戒していたが、俺が心配ないと伝えただけでは、彼らの
警戒心は解けなかったのである。
そして、秋月さんが大声で泣き続けている状態で、誰がまともに話し合いが出来た
であろうか、それをセガール中尉は一気に解決してみせていた。
自衛隊幹部と米軍の下士官が、綺麗な学者と体格が良い獣人男性から、色々な必要
な情報を引き出している中に、セガール中尉が真面目な顔付きで、輪の中に入って
いたが、ナンツ2等軍曹から呼び止められると、いままでの情報を大雑把に説明を
中尉に話し始めていた。
「学者の方に質問なんだが宜しいかな」
「ハイーアナタハーサキホドノー・・・」
中尉は学者さんに質問をしようとしていたが、学者さんは顔を少しだけ赤らめた。
学者さんは結婚の申し込みをされた事が、今までの人生で一度もなかったとの情報
があったが、この情報は不要な個人情報である。
「私は母国語で話しているが、貴女には理解出来ているみたいだね、その魔法って
のは攻撃も出来るのですか」
「ホンヤクマホウハーヒジョウニベンリーツカイカタハー」
「ワタシトーアナタトータカバヤシガーハナシテルトシマスーワタシハーホンヤクマホウヲーツカエバーワタシニハーフタリノーハンシテイルゲンゴガーチガッテイテモーワタシニハーボコクゴデーキコエテイマスー」
「ワタシガーツカエルーマホウハーコウゲキスルーマホウハーアリマセンガー
ホノオヤーミズノーコウゲキマホウハーアリマスー」
「おおーーそれは便利ですね、攻撃魔法はそれともう1つ質問しても良いですか」
「ドウゾー」
「化け物から取れる魔石、それを貴女達は今現在お持ちですかな」
「ワタシノーテニモツニーマセキガーアリマスノデーマッテテクダサイー」
そう言うと綺麗な学者さんは、石造りの建物に入っていくと、直ぐに鞄を手に
中尉の側に戻ってきたのだった。
「コレガーアナタガーミタガッテイターマセキデスヨー」
中尉は魔石を手に取ると、慎重に部下達と一緒に見たり、写真を撮ったりしていた。
そこに髭2尉も参加して、魔石を見始めだしていたが、米軍兵士が写真を撮っている
のを見た髭2尉は部下にカメラはないのかと訊ねているが、部下は首を横に振るばかりであったが、そんな髭2尉の側に下志津3尉が駆け寄ると、ポケットからスマホを
取り出していた。
髭2尉は下志津3尉にお礼を述べると、直ぐに米軍兵士に負けまいと、魔石の撮影を
はじめていた。
米軍が写真だけなのに対して、自衛隊は写真+動画であったのだ。
それを見た米軍下士官ロイ曹長は、後で基地に動画を送って欲しいと要望している。
ちゃっかりしてる米兵を髭2尉は無碍に出来ない様で、駐屯地に戻り次第、そちらの基地に送るとだけ答えていた。
「ソノーマセキハーツヨイショウゲキヲーアタエルトーバクハツーシマスー
アツカイニハークレグレモーチュウイーシテクダサイー」
綺麗な学者先生から、危険な言葉を聞いた一同は、中尉が手に持っている魔石から
後ずさりして離れだしていた。
中尉も額から冷や汗を浮かべ、魔石を学者さんに返すと直ぐに学者さんから距離を
置いて立っていたのだ。
自然に振舞った様に見えたが、未知の爆発物から距離を置きたいのが、バレバレで
あったのだ。
「マセキハーオオイワデモーオチテーシタジキニーナナライカギリハー
バクハツナドーシナイヨーマセキヲーケズリーハタケニマケバーサクモツノー
セイチョウヲーハヤメテクレタリーシマスヨー」
綺麗な学者先生は、そう言うと集落の畑近くに置いてる、片手で持てる樽を
中尉の側に持ってきて見せていた。
そして、塵芥みたいに空中に漂い、地上に落ちるまでに時間が掛かるのだと
説明された。
手触りは、小麦粉に近く、これを畑に撒くと肥料の換わりになるのだそうだ。
そこに米軍兵士の1人が発言を始めだしたのである。
「もしかして、その粉に火を付けたら粉塵爆破するんではないのか」
米兵の、その発言で場の空気が、また固まってしまったが、その米兵は続けて
こうも言ったのである。
「爆発するって事は、つまり発電所にも使えるって事だよ、これは人類の
エネルギー問題を一気に解決してくれるクリーンエネルギーの発見なのでは」
その発言に一同は、その発言した米兵を見やると、お前は天才か、とばかり
の顔で見ていたのである。
中尉は、この大発見を直ぐに基地に報告しようと、
凄いノイズが入っていたのが解った程である。
それは、自衛隊のオスプレイでも同じであった。
綺麗な学者先生が、皆に見せる為に空中に撒いた魔石粉が、今も空中に漂っている
のと関係しているのは、もう少し後で解る事だった。
魔石粉が地上に全て落ちた時に、米軍と自衛隊の無線の不調が解消されたので、
俺は、その事を近くで俺達の護衛をしてくれていた自衛官に伝えると、その自衛官は
直ぐに髭2尉に報告をしに向っていた。
そして、無線の不調の原因を調べる為に、もう一度空に魔石粉を撒くと、案の定で
ある、無線からは凄いノイズしか聞こえてこず、電波妨害の様な状態になっていた。
この事が解ると、米軍と自衛隊がオスプレイの中で、話し合いを始めていた。
「この物質は、もしかしてエネルギーにもなるし肥料にもなる、そして極めつけは
電波遮断が出来るとなれば、戦場で必要不可欠な物になる」
そう話しているのは、セガール中尉だった。
彼は真面目な顔つきで、部下2人と自衛隊幹部に、この魔石の使い道を話していた。
「この粉があれば、大陸の侵略国家が配備している無数のドローン攻撃機が、全て
無駄になるって事なのかな」
疑問系で話しているのは、髭2尉であった。
無人機を無力化できる、物質の発見は今の所は、日本と米国だけなのだから、
この情報は最重要国家機密であると、髭2尉は言っていたが、その情報を聞いて
しまっている俺と秋月さんは、どうなってしまうのかが心配である。
やはり、米兵も自衛官達も俺達2人を見ている・・・・・
何も聞いてません、では通用しない事はあきらかであった。
もしかしたら、何処か秘密の場所に監禁される可能性もあるのかと、
俺は内心ドキドキしながら兵士達をみていた。
そして、髭2尉が俺達に付けていた護衛が、オスプレイに乗る様にと
言い、俺達2人はオスプレイの中に連れて行かれてしまった。
オスプレイのキャビンに乗り込むと、俺達2人にインカムが渡されていた。
まー付けろって意味だろうから、俺達は直ぐにインカムを頭につけると、
TVやネット動画で聞いた声が聞こえてきていた。
「こんにちわ、貴方が高林さんかな、そして、貴女が秋月さんで良いのかな
私は内閣総理大臣代行を務めさせて貰っている川野と言います」
その名前を聞いた途端に、俺は何か
事を察していた。
「色々な報告を受けた事を精査するには時間が足りないが、今出来る事はしようと
思ってね、お2人と話をする事は、その内の1つなんだよ」
「今回の報告は非常に外部に漏れると不味い、それは高林さん貴方にも解ると思い
ます、国の利益を損なう行動をされても非常に不味い、もしも、そんな事をされた
ら我々は、貴方達を拘束しないと行けなくなってしまう、だが貴方達が、もしも
我々に協力してくれるならば、我々も貴方達に協力を惜しみませんよ」
俺は緊張した声で、はいとだけ即答していた。
「秋月さん、貴女は化け物と戦いたいと報告を受けているが、それに間違いは
ないかな、もしも違うならば早めに言って欲しい」
秋月さんは、川野総理代行の発言が終わると、迷いもなく即答していた。
「私は、家族の仇が取りたい、そして、戦う事の出来ない人達の為にも
代わりに戦って敵討ちをしてあげたいんです」
「私を助けてくれた高林のおじさんと一緒に、私達は戦って行きます」
俺は秋月さんを見やると、何を言ってるんだこの子は、と言う表情で見て
いたが、本人は真剣な表情で話していた。
「解りました、今回の災害で自衛隊、警察、消防だけでは事態の収拾は
難しいと緊急閣議で判断されたので、政府としては新たに、自衛隊、
警察、消防に協力してくれる民間人を募集する事に決まったのだが、
その組織に入るかね、君みたいな若者は大歓迎だよ」
秋月さんは二つ返事で返事をすると、無線の向こうで話している川野氏
から、組織名が聞こえて来ていた。
「それでは、高林さんに秋月さん、貴方達2人を現時刻を持って
特別国家公務員、保安隊に所属するものとす、高林さんならば保安隊は
知っているだろうが、秋月さんの為に説明してあげよう、保安隊とは
自衛隊の前身である、警察予備隊が廃止された後の組織である、理解
できたかね」
「因みに2人の階級は、試験を受けていたら2等保査からなのだが、
特別採用枠なので3等保査から、始めてもらうが文句は言わないでくれ
これでも、無理を通しているつもりなんだよ、それと、自衛隊のOB達
が志願してきているから、直ぐにでも上官を派遣するので、待っていて
くれ悪い様にはしないよ」
そう言うと無線は切れ、後に残るは俺の悲壮な表情だけであった。
「下部組織保安隊、高林3等保査、今から貴官らは我々の指揮下に入る
もう民間人ではないので、我々の指示にしたがってもらう」
川野氏の誘いを断ってしまったら拘束で、受け入れたら組織に拘束か、
どっちにしろ、国家秘密を知ってしまった俺に活路はなかったのだ。
俺は髭2尉が敬礼すると直ぐに敬礼を返したが、無様な敬礼であった
事はたしかである・・・・・だって泣きながら敬礼してたから・・・・・
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