ぼくらの高校生活
霜月 紅兎
第1話 愛され男子と元クラスメイト(♂)
うちの学校には、人気者の男がいる。
そいつは入学してからというものの、ありとあらゆる人たちを虜にしていった。
みんながみんなそいつのことを気にしている。
そんなそいつとは1年の時に同じクラスだった。中学生の頃、友達も居らず地味メンだった俺は、高校進学を機に高校デビューしていた。しかし、人との付き合い方がわからなかった俺は、初っ端から滑り倒しており、そんなイタイ俺のまわりには最初は付き合ってくれていたクラスメイトから気がつけば距離をおかれていた。そのことに気づいた俺は放課後、ひとりで呆然としていた。
ただただ、寂しい。1年の最初の人間関係は重要だ。きっと俺はこれから先卒業するまで、中学生の時と同じように、地味にひっそりと過ごすことになる。今思えば、そこまで悲観せずともまだまだ自分次第で高校生活は明るいものにもなったはずだ。でもおれはもうこの世の終わりだ、とただただ絶望していた。
その時の俺は、よっぽどひどい顔をしていたのだろう。そんな時だ、そいつに話しかけられたのは。
「最近〇〇くんたちと一緒にいるところ見かけないけど、喧嘩でもした?」
と。俺はそいつとは今まで話したことがなかった。知っているのは、入学してから初めてのHRでの自己紹介で言っていたことのみ。
「●●中学からきました。美空 光輝です。好きなことは友達と過ごすこと、ゲームも大好きです。よろしくお願いします!」
自己紹介はシンプルであったものの、人好きする笑顔。友達がたくさんいそうなヤツだ。俺とは大違い。きっと俺とは関わり合うことはない人種だな。そう思った。
入学後、徐々に友達を増やしていったそいつは、男にも女にも囲まれていつも楽しそうだった。
そんなやつが俺に話しかけてきた。まず俺のことをクラスメイトとして認識していたのか!?いや、認識していたとしてもきっと、自分と違って一人になった俺をからかいに来たのだ!こんな考えを持っているから、俺はダメなのに…
俺は卑屈な態度で答えた。自分が人気者だからって馬鹿にしにきたんだろ!?って。人気者のやつがそんな性格が悪いことをするわけないのにな。
そいつは案の定、びっくりと目を丸くしていた。でもそんなのは一瞬で笑顔でこう言ってくれたんだ。
「馬鹿にしてないよ。おれは喧嘩した後にひとりでいるとなにもかも負の感情に囚われて、なんにも身動きできなくなっちゃうから、君もそうなのかなって。なんかしんどそうだったし…すごい余計なお世話だけどな」
たしかにすごく余計なお世話だ。今になっても思う。でもあの時話しかけてくれたおかげで、逆切れしながらも自分の気持ちを吐き出すことができた。
おまえみたいな人気者にはわからない!
どうやっても友達ができない、みんな離れていく!
友達がほしい!!ひとりは嫌だ!!
友達と遊んでみたい!
本当にどんだけ切羽つまっていたんだ、俺。
そんな俺の言葉を最後までそいつは聞いてくれた。友達でもなんでもない俺のことばを。
最初は同情だったと思う。けれどそいつはよく俺のことを気にかけてくれるようになった。卑屈な俺の言葉を受け入れてくれ、認めてくれた。無理してキャラを作っていた俺ではなく、自然体のほうが面白いって。
そんな俺は、光輝以外の友達もできた。光輝のおかげで高校生活がとても楽しい。光輝の周囲を固めている男たちは怖いけど、これからもずっと一緒に過ごしていけたらと本気で思っている。
でも俺は、学校のクラス分けが貼ってある掲示板を見て絶望した。俺と光輝が別のクラス…。俺は本気で泣きそうになった。その顔を見て光輝は笑いながら、
「別にクラスが違っても、これからも今までとかわんねぇよ」
って。それはない!お前は本当に本当に魅力的なやつなんだ!きっと2年になってもいろんなやつが光輝の元に集まるんだ!簡単に想像できてしまう!そしたら違うクラスの俺は今よりずっと入る隙がなくなってしまうんだ!!
「クラス違っても、おれはおまえのとこに遊びに行くからさ、おまえも遊びに来て、一緒に遊ぼうな!」
こんな俺に!嬉しい!!俺は光輝のクラスに頻繁に通ってやろうと決めた
ぼくらの高校生活 霜月 紅兎 @kotobunny11
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