第35話 推敲のメモ帳③ 主語抜きに隠された心理

 はじめての推敲。三回目です。

 Mさんの指摘はとても丁寧でした。しかも例文つき。こんな書き方もあるよと代案を出してくれ、間違いへの指摘も根拠が示されます。



【K初稿】『自分の役不足は十分すぎるほどに身にしみていた。』

【M】これもものすごく誤用されることが多いんです。役不足は、その人の能力に対して処遇が低すぎることの表現なんです。こんな風に使います。「この程度のポストじゃ、彼には全然役不足ですよ」

 自分の役不足は→自分が彼を満たすことができないのは……くらいがいいかなあと。


 こういう初歩的な思い込みがてんこ盛りなわけで。それを一つ一つ拾っていくのは大変だったかと(^^;

 現在ではこう変わっています。『自分ではカツミを満たせない。そのことをセアラは知っていた。』



【M代案】『時々かいまみせるカツミの本音を』→かいまみせるのはカツミですから『時々カツミがかいまみせる本音を』


 元の文は、『時々かいまみせるカツミの本音を拾い集めるだけで満足すべきなのかもしれない。』だったと思います。確かにかいまみせるのはカツミなので、指摘の通りです(^^;


 この部分はもう跡形もありません(笑) 推敲を重ねた結果、まるで変化しています。

『他人に心を開かないカツミがフィーアのことを認めている。ならば自分もフィーアを認めたい。それはおかしなことなのだろうか。』

 本音を拾い集めるだけでなく、セアラはカツミを支えたいと思っているので、もう一歩踏み込んでみました。推敲を重ねると、なんとなく書いていた部分の意味を改めて考えるよなあと感じています。



【M】漢字をひらがなにだいぶ直されたようなので。彼等→彼ら、何処か→どこか、の方がいいかな。ルビを振るやり方もあります。(例:ゆか人気ひとけ他人事よそごと


 漢字をひらく!! もしくはルビをふる!!

 変換されるままに変換して、PCも覚えてしまって変換し続ける。作者は当たり前のように分かっているけど、読者の立場だと読みにくい。あるあるですよねえ(^^;

 どうしても漢字にしたければルビをふる。それも一つの手ですね。



【K初稿】『うとましがられながらも、結局は誰も彼の能力を認めないわけにはいかなかった。』

【M】うとましい、は、動詞うとむ(疎む)を形容詞化したものですので、誰かが(能動的に)そう感じるという表現になりますね。俺はやつのすることなすこと全部うとましい。……みたいに。そうされてるという受動的な表現なら、動詞を使った方がいいかと。

【M代案】『彼は誰からもうとまれたが、それでも誰もが彼の能力を認めざるをえなかった。』くらいに。


 うぐっ! 超苦手な文法がっ!! 確かに受動的なので、この使い方はちょっとですよね。それに前後の文が繋がってないわ。ひでえ!



【K初稿】『しかし彼が何の努力もなしに、その結果を導き出したと考える人間は浅はかとしか言いようがない。』

【M】主語抜きの表現はわたしもよく使うんですが、その場合は短文限定にした方がいいです。長いと文脈に位置付けるのがすごくめんどくさくなるんです。あれーこれって誰が言ってるの? って感じになるので、せっかくの流れを切っちゃいます。

【M代案】『しかし彼が出してきた結果は全て努力の賜物だ。嫉妬にかられた者にはその努力が見えないだけ。』……くらいかなあ。


 私の文章は厨二っぽいですねえ(汗)また読点の位置がおかしいし。

 そして主語抜きとかやりだす時の心境は照れているんです。作者が照れながら書いているので遠まわしな表現になる。ぼかしてしまう。

 非の打ちどころのない主人公(だけど精神的には幼い)を書こうとすると、恥ずかしいわけです。


 あかんわー! もうこの頃から、作者(私)の心理状態まで暴かれてるんですよねええええ! うひゃあああ!!



【M】文章全体は短文の畳み掛けで構成されているので、とても読みやすいんです。その中に長文がぽんと挟まってしまったら、要チェックかなあと。


 現在はこう変わっています。『カツミは優秀な新人だった。最高位の士官学校を首席で卒業したくらいには。父親譲りの能力と子供の頃からの厳しい英才教育。なにより彼の努力がその結果を生んでいた。』


 なぜ、疎ましがられながらも認められるのか。そこを考えるうちにキャラの背景を書いたほうがいいや! となったんですよねえ(^^;

 それと短文の畳み掛けにしています。説明くさいところなので(^^;

 非の打ちどころがないキャラだけど、見捨てられ不安のある精神的にとても幼い人物。マイナス面から攻めてます。まあ、これも照れかな(笑)


 ひでぇ思い込みと、乱発される漢字と、苦手な文法。そして、キャラに自己投影して書く作者自身の照れ。色々と暴かれてきましたがあああ(^^;

 現段階で十回推敲を重ねているこの処女作。ちゃんと書けてる! と思い込んでいた自分に口あんぐりです(^^;


 小説はシーンの積み重ねではなく、まず一本大筋を決めてから、そこに必要なシーンを枝葉のようにつけていく。

 初稿は枝葉だけを積み重ねていたイメージです。焚き木じゃん(笑)


 この言動の根拠はなんだ? このシーンの大元にはなにがある?

 推敲をしながら全体の構成自体が変化していきました。だーって、プロットなんて無かった小説なんだもーん! (おい)


 ああ。どんどんアホが暴かれていく(笑)今日はこのへんで!











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