第10話 明るい太陽
チーズを満喫した後、僕と彼女は紅茶を味わった。
それについてくるちょっとした菓子もまた美味しかった。
シャンパンを飲んでばかりいた彼女も紅茶で少し落ち着いたみたいだった。
「うへーお腹いっぱいー」
「君が幸せそうで何よりだよ」
彼女は紅茶を飲み干して立ち上がった。
彼女は少しふらついていたように見えた。
ボーイにお金を払い、彼女は店を出る。
ボーイが丁重にお辞儀をし、「ありがとうございました」と言うのを背中で受けながら僕は彼女を追いかけた。
「君はいつもこんな食事を食べてる訳?」
「こんなって何よーいつも食べてたらすぐに破綻しちゃうよー」
「はぁ」
「たまに食べるから美味しいの。君はフランス料理食べるの初めてっぽいね」
「うんそうだよ。今まで食べたことなかった」
「さては美味しかったな?」
「うん。美味しかったよ」
彼女は急に真顔になって、
「あれー?今日はやけに素直じゃん」
と言った。
僕たちの間に静寂が漂う。
彼女は思い出したように大袈裟なリアクションをしてから話し始めた。
「君さぁ、委員会なんだっけ?」
思い出した内容がそれなのか。もっと大きなことだと思って身構えていた僕が馬鹿だった。
「図書だよ」
「図書?ってことは
「君の言っている人と僕が知っている人が同じだったらそうだよ」
「そっかー真里と一緒なのねー」
彼女は急にニヤニヤし出したので僕はのけぞる。
「本当に君は何を考えているのか分からない」
「別に何も考えてないよー真里、委員会で君に対してどんな感じ?」
「前、図書室倉庫の片付けしてた時、邪魔って言われたよ」
「え??邪魔って言われたの?ウケるー真里、君には冷たいなー」
何がウケるのか分からない。彼女は爆笑し出した。
「真里に言っておくよー君にあったかく接するようにって」
「別にいいよ」
「この夏休みは色々したいことがあるからさー付き合ってね」
「その内容による」
「内容って次は食べ放題じゃないから大丈夫ー」
「そう言う意味じゃないよ」
「じゃあどう言う意味?」
「意味がないこと言ったんだから追求しないでくれる?」
「えー意味分かんないー」
彼女は笑いながら真顔でこう言った。
「次の夏休みはないかもだしね」
「君ね……」
僕の言葉を聞かずに彼女は「来年まで生きられたらいいけど!」
と明るく言った。
「じゃあ、今日はありがとねーまたメールするから見るんだよー」
気がつくと僕は彼女の家の前にいた。
「……なんで僕は君についてきたの……?」
「さぁ?なんかボーッとしてたよー私がさ、分かれ道のところで君こっちじゃないの?って聞いたのに反応ないからついてきてくれるのかと思って」
「はぁ……そう。じゃあ僕帰るから」
「バイバーイ」
彼女は笑って僕に向かって手を振った。
彼女のあどけない明るさは僕の気持ちを柔らかにしてくれた。
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