第5話:安住の地

「すみません、教えて欲しのですが、ここはまだルイビス王国ですか」


 俺は事前に調べられるだけ調べた情報から、この世界にはルイビス王国と魔族国以外にも国がある事を確認していた。

 お金を手に入れる事はできなかったが、薪をちょろまかしてダイヤモンドを創り出し、食事に入っていた貝殻と骨を活用して真珠を創り出していた。

 それを質問の御礼にしようと考えていたのだが、よく考えるとダイヤモンドや真珠では高価過ぎた。


「これは質問のお礼です、遠慮せずに受け取って下さい」


 俺は逃亡中に狩った獣や魔獣を御礼にした。

 どこの村も食うや食わずの生活をしているようなので、食材を与えた方が喜ばれると思ったのだ。

 予想通り大喜びされ色々と教えてもらえた。

 ひたすら南に真直ぐ進めば、ルイビス王国と敵対しているハワード王国と言う国があるというのも分かった。


「ハワード王国はこの国よりとても豊かで、平民も飢える事がないと聞いている。

 もしあんたにその国まで逃げる力があるのなら、こんな国から逃げた方がいい」


 ある村の住民はそう教えてくれた。

 俺はその言葉に従って、ひたすら南に向かって進んだ。

 途中で出会う魔獣や獣は手当たり次第に狩り、魔法袋に備蓄した。

 グズグズしていれば追手が来るのは分かっていた。

 連続して戦わなければいけないくなったら、食材の補充など不可能になる。

 敵が俺の力を知る前に手に入れられる物は全て手に入れておく。


「ここはまだルイビス王国ですか。

 あとどれくらい行けば、ハワード王国につけますか」


 俺は今まで以上に貧しそうな村で話を聞いてみた。


「ここはルイビス王国の最南端の村だ。

 ここから南は恐ろしい魔獣が住む大魔境だ。

 昔からの言伝えでは竜も住んでいるらしいから、絶対に入っちゃいけないよ。

 そうでなければ俺達はハワード王国に逃げていたさ」


 村人が教えてくれた話では、ハワード王国は噂だけの国で国交などないらしい。

 西や東で国境を接している国から流れてくる噂でしか存在を確認できない国、それがハワード王国という理想の姿になったらしい。

 俺は噂のいい加減さに愕然とさせられた。

 命懸けで魔境を抜けて、本当にあるかないか分からないハワード王国を目指すのか、それとも東西のどちらかの国を目指すのか決断しなければいけない。

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