第72話 忌まわしき再会
「クケケッ、ここならば陽の《氣》も豊富じゃな。さて……」
「待ちやがれ、クソ絡繰!」
アイシャが早く、阿津に追いついた。しかし、阿津はアイシャが来たことに笑っている。
不帰の森は想像した以上に入り組んでいたようで、濃い霧もありはぐれてしまったのだ。
「あの忌々しい極陽の老師の弟子はまだ来ていないようじゃが、まァよいわ」
「あァん? このクソ絡繰、俺一人だからって舐めてんのか?」
アイシャがドスんの利いた言葉を吐きつつ、阿津を睨む。
――大丈夫、大丈夫……ッ!!
京とはぐれてしまったが、不安がなかったわけではないが、そこは抑え込んだ。
「クケケッ、実に僥倖じゃと思ってなァ」
「回りくどい野郎だな、ぶっ潰す!」
アイシャは構え、阿津に啖呵を切って、
「時にお主、数年前に絡繰共に襲われれ家族郎党もろとも惨殺されたさる屋敷の生き残りじゃな?」
「おいッ! なんでそれを!?」
阿津の言葉にアイシャの動きが一瞬止まる。それをみた阿津は仮面を外し、
「クケケッ。今まで寂しかったじゃろうと思ってなァ。食うものにも困らず、温かい布団、優しい両親や、使用人にも恵まれておったのにのう」
「何が言いたいんだ?」
アイシャが凄むが阿津は不気味に笑い
「男言葉という本来の臆病さを隠すための仮面を被り、不安じゃっただろうて」
「……だから、何が言いたいんだよ?」
阿津の醸し出す不気味さは増し、逆にアイシャから言葉に強さがなくなっていく。
「そんなお主が可哀相だと思っての。じゃから……」
「クソッ、まさか!?」
アイシャの脳裏に最悪の予感が過る。阿津はしてやったりという風に笑い。
「クケケッ。そう、そのまさかよ。では、感動の再会といこうではないか!」
阿津は手を掲げ、その手に《力》が集まる。《陽》の道術なのだろう。
「出でよッ、キョンシィィィーッッ!」
阿津の呼び声に呼応するの様に現れたのは――。
「あ……、あ……」
土の中から現われたキョンシーを見たアイシャは愕然とし肩をだらりと落とす。
「クケケ、会いたかったじゃろう?」
「……なんだよ、コレ……」
阿津のキョンシーとして現れたのは絡繰兵に惨殺されたはずのアイシャの家族や使用人たちだったのだ。
「さて、憐れなお前もキョンシーにしてくれよう、かかれ!」
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