第42話 悪意により創造されしモノ

 何らかの操作をされたと思しき動物を数体斃した三人がたどり着いたのは、やはり遺跡だった。

 古代の王の廟を思わせる古い遺跡だったが、これらが古代文明の遺跡なのは今までの事を思えば疑いようはない。

「やっぱり、黒か」

「……。恐らく、あの化け物はこの遺跡で作られているのだろう」

 ひとりごちるアイシャを見て陣が用心して構えろと言う。

 大きな扉を蹴破って突入すると、その内部は外の景観とは正反対に真新しい白い壁で構成されていた。

「リノリウムの壁、間違いないな。西洋の連中がいる」

 西洋の素材だと陣が言う。明らかに人の手が加わっていると感じさせる。


「侵入者ッ!?」

「村が差し出した生贄ではないのか!?」


 白衣を着た者たちが慌てふためいていた。

「外にいた怪物を作り出して真似して、お前らには人の心はねェのか!」

 アイシャが怒鳴るのだが、白衣。

「バカバカしい、科学の発展に犠牲者はつきものだ。貴様らには死んでもらう」

 銃を構えるが、科学者たちは荒事は専門外であるのだろう、動きはおぼつかない。

「はぁッ!」

「ば、化け物か……!?」

 京が縮地で距離を詰める。戦い慣れない科学者にはまるで瞬間移動でもしたように見えているだろう。

「ぐ……!」

「ほいほい、大人しくしてちょーだいね?」

 京が科学者の一人を取り押さえる。そして器用に縄で手を縛る。

「うむ、いい調子だ! 京殿も軍に入らないか!?」

「ぐはッ」

 陣がそういいながら科学者を殴り飛ばした。

「喰っちゃベッテル場合か、一人、逃げたぞ!」

 逃げる科学者を見てアイシャが叫ぶ。しかし逃げたのは入り口ではなく――。


「いッ、いいことを教えてやる……。この地に人を喰う化け物がいるのは、事実だ……」


 科学者がたどり着いたのはkeepoutと西洋の文字で書かれている部屋だ。後で作られたのだろう。

「無駄な抵抗は止め、都で裁きを受けろ」

「我々がこいつにレイラインを注ぎ込んだ。貴様らならその意味は分かるだろう……、ククク」

 銃を構えるのだが、科学者は薄気味悪く笑いながらボタンを押す。

「この国との戦争に向けて強化する予定がフイになった。それだけが惜し……か……」

 そうして科学者から血が流れる。

「自ら死を選んとは……、クソッ!」

 陣が怒りで拳を握る。素性を吐かせたかったのがあるが、殺さず裁きを受けさせたかったからでもある。

「それより、何か出てくるぞ!」

 アイシャが叫ぶ。

「イケニエ、イケニエ……」

 開けられた扉から、不気味な唸り声が聞こえてくる。


「イケニハ、どこだァァァァッ!」


 扉から現れたのは緑色の肌をした頭から角を生やした異形だった。

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