第2話 あくまで薬草採取
真希と夏希の2人は仲良く並んで門番の前に立つと、身分証である冒険者プレートと依頼表を見せて街の外に出る旨を伝える。
門番も先程の男の件があるからどうしようかと考えたが、ギルド発行の依頼表もあるしそのまま通した。
結局、門番もお役所仕事と言われてしまえばその通りである。
街道を暫く歩くと遠くに大きな亀の頭のようなものが見えてくる。
「あ、あれかな?薬草は。」
「そうじゃね?食後の運動相手は。」
遠くであるが、亀が何かを襲っている様子はない。
ただのっそのっそと前進しているだけのように見える。
「ただ生きているだけでも狩られる魔物も可哀想だと思うだけどなぁ。」
「それを言ったら畜産とかどうすんだよ。」
食べるためだけに命を作られ、食べられるために育てられ、食べられるために命を奪われる。
「確かに。それを言ったら人が一番の悪党だ。」
人間の都合の良いように世界は作り替えられ、我が物のように土地も資源も使い続ける。
そりゃ、狩られる側が人を傷つけても文句は言えない。
所詮この世は弱肉強食、そして小さいものが勝ち、大きいものを平伏させる。
何か途中でおかしな説明になったがそういうことだ。
魔物だって生きているんだ、友達じゃないけど共存なんだ。
そうこう進んでいるうちに50mくらいの距離まで近づいた。
真希が右手を下にやると手にはいつの間にか槍が握られていた。
同じように夏希には大剣が握られていた。
「物理?物理なの?亀は多分雷系の魔法でずどんが早いと思うよ?」
「正面からヤりあいたいと思っちゃったんだからしかたねーだろ。というか真希、お前だって槍出してるじゃん。」
「甲羅はともかく、薬草が焦げたら使い物にならなくなっちゃうからね。」
真希にとってはあくまで薬草採取である。
「やっぱり真希も正面から行って物理じゃんか。」
そして夏希にとってはあくまで食後の運動である。
甲羅はおろか、頭や足も硬いと言われているのになぜか物理で攻める。
攻められるだけの力が2人には……
「さて、ランドタートルはいくらになるかな~。」
「ラウンドワンッ、FIGHT!」
亀に向かって二人は走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます