6 / ⅴ - 英雄の背中を追って -
「っ、え、ちょっ!?」
真紀奈は、伝説の剣を引き抜いた英雄譚の主人公の雄姿を覚えていた。
彼の祝詞を忘れず、その動画を何度も繰り返し視聴し、一字一句を記憶していたのだ。
《問う───
『否、我は災禍に在らず。我は咲き溢れる花吹雪なり』
《問う───汝は
『否、我は聖隷に在らず。我は咲き乱れる雪月花なり』
《問う───汝は
『否、我は英雄に在らず。我は咲き零れる極彩色なり』
真紀奈は腰元から一つの機械仕掛けの金属の柄を取り出すと、それは彼女の言葉に呼応して展開される機械音、擦れ合う金属音が響きその姿を見せ、最後にその機体全体にビームが作動することで、至上至高の秘宝、秘剣は、その全貌を現す。
《
彼女は宝剣を、そしてそれが切り開いた黒の先の光を、彼が序章を書いた青き伝説を記憶に焼き付け、それは一度たりとも忘れることはなかった。
自分がこうして彼に翼を授かった時は奇跡と運命とすら感じていた。
そしてその神話を再現する最後の言葉を、迷いなく叫んだ。
『舞い咲き誇れ───『
が、しかし。
だがしかしである。
《警告、重量過多。警告、
『ゔぇえ!? な、なんでぇ?』
出鼻を挫かれるとはまさにこのこと。
NLCディスプレイの向こう側では鉄塊の重さに耐え兼ねてバランスを崩し、サブウィングのスラスターが悲鳴にも似た轟音を上げて彼女の体勢を立て直している、今にも泣き出しそうな真紀奈のしょげた姿が映っていた。
「あぁ……
少し考えれば訳ない話ではあるのだが、JBは彼等の全長の十数倍ほどの大きさで作られており、当然ながら
真紀奈の手には持て余す、彼女の手では不釣り合いというか、早い話、彼女が持つのは設計外で想定外だった。
「音声認証のプログラムまでコピーしたままだったか……ごめん、真紀奈の
『う、うん。わかった。これ……かな?』
真紀奈は自分のコンタクトレンズ越しに見える画面に、一つのアイコンを見付ける。
白百合の花模様のそれを選択した瞬間、真紀奈の手に持つ柄は光を纏い先程より幾分小さな、しかし彼女の身長の倍はある大剣が姿を現し、ビームに包まれることで美しい
「芽吹き花咲け───『
なぜこんな読み方なのかは有土も知らないが、どうせ道定の下世話な話に付き合わされるだけだろうとそれ以上考えるのをやめた。
『
「
『わかった、ありがとうね』
剣を振るうなら的は必要かという有土の問いに彼女は必要ないと首を横に振る。
張り切った様子で『
「真紀奈は……さ」
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