通過儀礼

ねむる月のない夜は何もかもがいなくなってしまうはずだから、

どこまでも声を殺して、ゆけるところまで歩き続けて。怖くは

ない。ただひたすらに盲目に。上っていくのか下っているのか、

この道は苦楽も伴う。だがきみとふたりならば、そのいきづか

い、あしおと、華のかおり、うんめいのそんざい。それらがわ

たしひとつひとつに充ちて、どこへでもたどりいける。せいた

いは確かに影をひそめて徐々に心細く寂しく、こわれやすくあ

る、わたしに、だけに成る。


     五臓六分に染み渡った 常光と芳香へ

     芳醇な肉体とかけはがれた 経口投与、

    真水に溺れていた 護摩木に 抗力はない。

     流されていく 下水管までが 程遠く

    すぐ傍で差し伸べて背をさするように

     そんな柔らかな光があたっかい。

      燃えやしないほど 細く憐れな焔

     どれでもまだわらってくれると言う

       卑しかの 憐れみを啜る。

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