通過点の七gを説かす  #美しい殺意

 何処にもいないはずのあなたをずっとずっと待っています。

 花占いに凭れ掛かる、宵の偶然を待ちわびる風に靡き寄せ、辛うじて遊ばれたもの。はらはらとうつろいが舞う。

 紡いだばかりの甘い躑躅を吸う。

 春は孤独。

 ほど淑やかに奏して奏でられる記憶に真実が存在しなくとも、私の眼窟にしかと窪んでしまったので、私たちは水底までたどり着いて、そこで桃源郷を敷いた花苑ですから。

 塗れた夢、やはり捕まえられたのは、私のほうなのでしょう。

 この世はたがを外した、未来の凍傷が滲みつづけた合間隙間のことで、もう誰のことかもわからぬほど、遠くに来てしまったみたいです。

 幽谷を抜けるせせらぎは絶えず侵蝕して魅せましょうし、河原は曲りくねるばかりの裸体を煌めかせる。

 そういった漠然とした未来への希望が其処にと、おもい模したものあって。

 勿論触れてしまえば身勝手にも共に喰らい尽くし、ひとつに溶け合う。たましいでしかありませんでしたので、因果として求め、私たちは交配を繰り返し続ける、やまいでしかありませんでした。

 ですからやはり私にはあなたのすがたが見えませんでした。

 そのちいさな凡てが重なり、行く先の失せたまなこを喰らい、惚気たばかりの口裂け女のむくれ痕に、その強情なけもの道に溜まる泪と軌跡には 、

 そののち園の地

 それぞれが抱え持つ菊門の徒花とニタリ貝のぬめりでそっと摘ままれたはずのいまいまに頼って、指紋が擦れ透き通っただけの憂い泪が キリトリてと翔ばす、棘と咎を尖らす刃が光を歪ませ墨を流す。

 ちらつく、嘴でつつく夢夢の君が毒づく。時と共に更け始めた頬紅のあか、も、滑稽でしたが。

 手延べる だけの我。

 ひきつるばかりの廟。

「今にも折れそうな機織りの、糸は強情で見栄っ張りで、優秀であったとな、みなは知っているのか。」

ざわざわと素通りさせ かけ 問う若葉はもうとうに静粛に輪廻を描いている。

 ああ野暮なものであるこの選情魂の行方よ。

 所詮雑草のたなびきとも。

 運命という過去を変えるために、このて燃やし尽くしていただきたい。痛ましい心押し付けて、惰弱にもお道化ているくせに、彼方と飛び込む気もない。その陽はいつだって空元気で燻るほどにうつくしい。

 そしていつだって嘘ばかりの焼け跡、暮れ泥む優日暮れを簡単に殺したのだった。






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