草鞋の泥

 ダム底に澄まうその日祖の燈が、極偶になにかを惹き寄せるものです。

 決して透けることのない底無しの其処、愚か易しい楽園が、絖りを帯に爛れさせ 皆をも喰らう鬼と成す術を、終ぞ赫々かくかくに、出くわす事と或う。

 そんな気がする 夢を見た、そんなこともなく しまい込んだ きのままで ここまで。

 手足亡くした我々が 襤褸布を翻しながら 縷縷と流される渦の道を、なすすべもなく本流にかえりつくまで、途方も無き暗く長い何気ないレテの川であれば尚更に。

 夢偽りの記憶に潜む その苦悶の欠片、賽の河原の廃石だけを、少しばかり転がしては 鮮烈に、煤塵は過度の腐敗の如く遺していく。この朱は恐ろしく饐えた徒労の未知で埋める。

 きっと誰しもがそうであろう 深い円居の奥に ひと筋の光明が指し示す時まで、誰が浚うのか この汚泥の苑へ、唯々誘われてゆく。

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