帰らぬ旅

 その嵩と値打ちを熟読している細月の、宵に、共に光も影も交りて、凍り始めた道をそぞろと歩む。けれど足跡はなく、新雪を踏みしめる静寂だけが、新たな子を産み落とす達観と、いたして知り、こんにちも朝紐で括るのである。


 さてこの暗がりとはよく栄える、我が友ではあるが、燃え逝くばかりの光の帯に あたたかく怯え、振るえた先のともしびが、これは誰やも痴れぬ乳飲み子で有ろうとも、零れるばかりのワンフロアに、姿を保つはきっと偶像でもあり、然し、ことは容易ではない夢や希望に縋るとも、是にて云う。


 何時時代のものか、遠き宇宙へ 身捧げていた、コトバで有れ魂で在れ、己が認め狂い咲いた、一輪の花そのものでしかなく。

 それは世に遺し、一糸乱れぬ風浪の おもい描いた、熱波の肺に息を徹して、自棄撞く灰の散り塵の、肥やしとなるかわからぬけれども。


 この血潮流れゆく果てに積もりて雪ぐ地は枯山水、佇むばかりのモノクロの錆びた遊具の追想の、所詮鮮烈な軋轢を、木偶の坊でも胸にしまって無心に孵る、この想い昂じていても、焦げ付いたままの脳裏に掠れ靄がかってくぐもるものが、決して同じ嗅覚にも至れず、その脈々もズレを見せていくと知るのに、なぜであろうか、泣いて仕舞えれば好いと云うのか、


 ならば花の笑みも小雪の糖度も 下るばかりの刹那の熱も、気付かぬうちに選り合わせ 届かぬうちに通り過ぎ 山と成す。我楽多の 余情、余すところなく すべて縺れた縁でもあり、目に見える輪廻の仕組みと 有り難がることとして、

 大体ここはとうの昔に締め切られた、なんでも籠められるメリーゴーランドの、運行表だと擬えるだから、明窓浄机を覘く、最期 夢から覚めてしまうものなのでしょうが。


 惚れた腫れたのすきっ腹、手あたり次第にどう料理しても腑におちず、その場しのぎの価値観で 錆びていくのも仕方ない。場違いな時だけが喰らい尽す、満腹中枢がしつこく命じる、安物買いの銭失いとはいえ 時は金なりとも申します。

 

 私の慎重ほどよりよく延びているステンレスのメモリーは、図りきれない頭上の夕焼けの、とめどなく溢れ続ける時間の泪、3%をはりつけている。いつのものだか、記憶にも薄い、あわいの剥げた稜線の、タグを裏返して見ては、その襟袖をも縮こませていた。


 手も足も進化しない、頭でっかちな異邦人と、その生きざまは、酷く狂おしいボテ腹と括るとする。だがそれぞれに 価値と場所を定めるものであります。曇った眼ですらそのうち焦点が定まりゆくことも刻み込まれている、転回の過程であるので、そのうち気ままに熟まれて狂うとは

 、あいあわず、ただただ痴れていることなのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る