闔(トビラ

――立体駐車場の景観を損なうように、

  どまんなかに突き出た欅は我が物顔の夕景も臙脂、

  みちまでに影を落とす。


 並びに列んだ車道、掻き乱す街路樹はそのうちに丸裸に見え、僕は今も夢を叶えるように ひっそりと佇んでいる。


 なんということだ。

 ここが ゆめなかばでありき! 現実であろうが!

 なかろうか、厭

 そのあぶくが狂乱ともしまえる とも恥け 流されたときに、パチンと弾けただろうよ。さりとて楽しくも嬉しくも面白くもひとときのあぶくでしかなかった此奴は。

 次元のズレが果てしない齟齬を指し示すだけの違和感の具現化。それは逃げなくては活かされない。その空いた先がなんであるかなんて考えることもなかった。

 さてたしか! あれを信じたくはなかったはずの……

 あゝ 恐ろしきコトだ! 落胆せし 手をのばさんも、それは開かずの門か

――それは私が諦めていたからか?


 ただ遮蔽されたくぐり戸、狭き門。その視界に映るもの、選択肢全てが空いた口。無限の深山に過ぎず。それらどんなに歩いても走っても一向に見えてこない。遠ざかるだけ耄碌した その瞬間も 己が心を捉え、この悲惨な状態。

 どんなに目をつぶっても逸らしても色も形もその年輪も解けぬほどに 焦り忘れてしまいたくても、気づけば傍に佇むは 嗚呼、日照り雨 其れすらも凍りつくと言わぬが花。

 頑迷のはそこにあるのか!


 遠くと置く壁すらも見いだせない 薄ら寒い点描の艷も暗黙にふさぐ、このていたらく、その我儘、蒼白の空間でただ、目の前の可能性だけが幽玄とと繋いでいる。

 しかし、ぼんやりとくすんで 或る 砂上の蜃気楼の、

(唯、そこにある。)

 すぐ近くに存在することは確かだというに、これが未来への道をつなぐ本物マジという自覚がない。


 目下、一段と高い場所として 今ここから見える景観が、まだ見ぬあなたの世界と同一にあるかどうかはわからないのだが――間口があるということは 理解できる。しかし一体誰が外にいるのか中におるのか。とんとんとのぼりつめたからだ やはり誰も着いて来れないのかと無念に朽ちる。


 瞳を見開けばそこに見えるは斯く斯く云々、思考の選択に至るかんぬきも外れも露わに現して、併し外れも頑なに、触れることも掴むことも、動じず光すら貫通して寄せつけぬ。ただ悠然と勃起している。

 薄墨色の山陰に大往生を賭した乳濁の現行も、それは威厳を放つ大きな1枚板だと、彼は諭すよう 立ちはだかる。それは大地を成す父か 母なる苗木か、私 はその身を裂いて生まれたものであると年輪を湿して知る。

 僕は、今日も泥の青海に彷徨いゆく。そして底へもたげ、扉の前で足先を揃えている。いや、白鷺の飛び立つさまに、こうして彼方かなたと聞き耳を立てているといったところか。


 溜息とも昏昏と嘔吐く、肺も凍る 域をきらす、すると相変わらずこたえもでてこない、が……ときだけがながされていく。季節が移ろいながら曖昧な嘆息と濡れ羽を乱されながら、ただゆっくりとゆく先を決めかねている、「ところゆえ。」

 


 

 


 


 

 

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