「毛布」「くま」

「毛布」


 空気が冷たい。身体の末端がジリジリと痛む。氷点下で吐く息は白く、生命活動の低下に私は眠った。


 体が暖かい。毛布にくるまる温もりに冷え切った心は確かに満たされる。生姜湯を飲んで吐く息は白く、心地よい微睡みに私は眠る。


――冬の空。カウントダウンとカウントアップ。青白い熱に明るい温度。

(作:月輪あかり)


 我々は様々な敵に対して、呼応するように装備を替えなくてはならない。僕は棚からそれを取り出す。形はローブに似ているが袖がある。袖は長く、また、幅が広い。長さは膝丈ほど。布はふわふわ。いい、大変いい。何に備えるための装備かって?決まってる。寒さだ。着る毛布あったかいよ。おすすめ。

(作:針間有年)


***


「くま」


 車じゃないし。前世はチョコレートでもないし。ライバルは海老フライじゃなくて僕たちをいじめる人間だよ。

 冬は眠いね。僕たちは生きるために普段よりももっとたくさん食べなきゃいけないんだ。

 僕は熊、いつも怖がられてしまう。

 喧嘩はやだよ。よく聞かない? 熊は臆病者なんだ。

(作:月輪あかり)


 眠れない日が続いている。日に日に目の下の隈がひどくなってきている。濃く、濃くなって、やがてそれは塗りつぶしたような黒になった。そのうち、隈の中にラメのような光を見つけたので、指で触れた。指が沈んだ。光をすくってみると小さな星だった。どうやら、隈は夜とつながっているらしい。

(作:針間有年)

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