デジタル・ノイズ・アイランドの踊り子達

武志

デジタル・ノイズ・アイランドの踊り子達

 ボールがレオシトスタッドのノイズの中にある。ノイズの海はザザーッと音を立てながら、愛情と原初のゆらめきをたたえていた。オレンジ色だ。ボールはそのノイズの海にたたずんで、そのまま浜辺に打ちあがった。砂はキューブ状だった。拾って掴んで、地面に投げつけると、大きく跳ね上がった。


 潜水艦はノイズの海を航行している。ボールはピピッと音を出した。それからキューンと空を飛び、潜水艦の上まで来た。潜水艦のハッチが開き、誰かが出てきた。銀色のロボットだった。ロボットはボールを手で触ると、そのまま一緒に上空を飛んだ。


 雲は緑色だった。デジタル模様の雲は、ときおり稲妻を撒き散らす。雲の中では放電している。ボールは高度を下げた。ロボットも後をついていった。

 そこは南の島で、たくさんの南の島の住人が現れた。皆、ロボットだった。ロボット達はやはり銀色だった。


 やがて彼らはキャンプファイヤーをはじめた。火はデジタル模様のワイヤーフレームで出来ていて、まったく熱くならない。だけど、見ているとすごくきれいだったので、ボールもロボット達も涙を流した。


 南の島のロボット達は儀式を始めた。手に持ったドラムをいっせいに叩き始めたのだ。素晴らしいリズムの中で、小鳥達が空を舞う。彼らもロボットだ。機械仕掛けだ。ジジジ……。彼らの行動の終わりには、こういったシーク音が必ず鳴る。よく耳をこらすことだ。


 ジジジ……。南の島のロボット達は、シーク音に耳を澄ましながら、またドラムを叩き始めた。ボールは我慢できなくなって踊った。よく弾む。ボールはゴムで出来ていたからだ。


 ロボットは感激し、涙をふいていたが、やがて自分が本当の人間になったように思った。立ち上がった。ドラムを叩いた。海を愛でた。ワイヤーフレームの海とノイズにまみれた雲を見上げ、人間のようなかっこうで、叫ぶ。犬も、機械仕掛けの犬から本当の犬に変化した。ワイヤーフレームの雲は、バーッと分解し始めた。中の放電が周囲に飛び散り、光り輝く放電となった。だが、南の島のロボット達には見慣れているので、騒がず、ドラムを叩き続けた。ボールは悲しくて、歌い続けた。

 ノイズはシーク音と一緒に、メロディーを奏ではじめる。


 愛する我がロボット。ボールはそう呟いた。そしてボールは一瞬地面で弾んで、空に帰っていった。ロボット達はざわめいた。

「あれは、アドレドーン様だったのではないか」

 そんな噂がたって三年が経った。

 ロボット王国は南の島の隣に出来て、潜水艦のロボットはそこで幸せに暮らした。

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デジタル・ノイズ・アイランドの踊り子達 武志 @take10902

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