ギフト~かつて神の眷族は人間と同じ時間を生きた。血は受け継がれ、転生者は仲間と成長する。

電柱工房

ザクト編

第1話 洗礼式

早朝の光は春になってずいぶん強くなった気がした。


 アダムは洗礼式の晴れ着を着た妹と手を繋ぎながら、村の通りを村長の家に向かって歩いていた。貧しい村だったが、今日はどの家も戸口を広く開けて、子供たちを見送る家族の明るい顔が見えるのだった。


「アダム! アンを頼むよ」

「任せてよ、母さん」


 村の薬師であるメルテルに送り出されて、二人は出て来た。

 メルテルは赤毛のがっしりした壮年のドワーフで、村では産婆を兼ねた癒し手として頼りにされている。アダムと妹のアンは孤児としてメルテルに引き取られて育てられてきた。産褥(さんじょく)で死亡した母親の頼みを受けて、取り上げたメルテルが引き取ったと言う。それぞれ別の親から引き取られた子供だったが、年が近いせいもあって兄妹のように育てられてきた。二人ともドワーフのメルテルとは違って人間種である。


 アダムは昨年の5月に5歳になっていた。アンは今月に5歳になったばかりだ。二人には別に年の離れた姉(孤児)もいたが、今は成人して近くの町に働きに出ている。


 アダムのいる村はセト村と言って、王都オーロンから商業都市ヨルムントへ向かう街道沿いにあった。今日は最寄りの宿場町ザクトの神殿から神官が来て洗礼式を執り行う。

 洗礼式は毎年3月の最後の週に行われて、5歳を迎えた子供たちを集めて成長を祝うとともに、神具によって子供の属性を調べることになる。


 オーロレアン王国の国教「七神正教」では、神の子である人間は七柱の神の属性のいずれかを持って生まれ、その属性の神によって守護される。まれに二つ以上の属性を持った子供が生まれるが、その情報は神官によって王都に送られ、優秀な者は中央に集められることになる。宝くじではないが、親にとっては晴れがましいだけではなく、子供とともに出世する大きなチャンスだった。


「アン、こっちへこいよ!」


 道の先の方から振り向いて、一人の子供がこちらに声をかけてきた。村の守り手の息子ドムトルは大柄なガキ大将で、何かとアダムに絡んでくる。今も妹にちょっかいを出すのが一番嫌がることが分かっているのだ。


「 --- 」


 アダムも体が大きい方ではないが、妹のアンはずいぶん小さくて、3、4歳くらいにしか見えない。ドムトルに声を掛けられて、慌ててアダムの影に隠れるように後ずさった。


「こら、アダム。無視すんなよ!」


 ドムトルが待ち構えるように立ち止まった。

 一緒にいるのはお調子者のジョシューだった。


「ドムトル、あんな貧乏孤児なんか放っておいて、先へ行こうよ」


 ジョシューは村の雑貨屋の息子で、いずれはこの村を出て、王都の大商人になると吹聴していた。今日は風向きを読んで金運を呼び込むという、風の女神ティンベルの加護を得るのだと言う。


「今日は貧乏な孤児にも神の加護が付くのか見ものだぜ」


 ジョシューは口下手で粗暴なドムトルより口が回る分始末が悪い。


「 ーーー 」


 アダムはアンの手を引きながら、黙って二人の傍を通り過ぎた。

 ドムトルはアダムに向かって目をむいて見せたが、相手にされないと分かるとジョシューを連れて急ぎ足で二人を追い越して行った。


 村長の家は村の中央にあった。母屋と厩の間を入って行くと、広い中庭があって、そこに一段高くなった舞台が作られてあった。舞台の中央には祭壇が祀られ、袖には神官と思しき人物が座っていた。

 舞台に向かってアダム達子供が並ばされる。今日の洗礼式には18人の子供がいた。一緒に付いてきた親たちもいたが、中庭には入りきれないで、厩から表へ続く道に並んで遠くから眺めている。


 村の役員を引き連れて村長が前に出てきて挨拶をした。


「今日はみんなご苦労様。今年もたくさんの子供たちが洗礼式を迎えることができた。みんなは王国の宝だ。これから神のご加護を受けて、自分の進む道を見定めるように。来年には村や町の学校に進む人もいるだろう。しっかりとお祈りするように。今日はザクトの神官ユーノー様に加えて、王都より王立学園のワルテル教授がいらっしゃっている。失礼の無いように」


 アダムが神官の方を見ると、その横に正装したドワーフの姿が見えた。ドワーフと言えばぎっしりとボリューム感ある身体を思い浮かべるが、すっきりと髭を剃ったワルテル教授は小太りな紳士然として立っていた。


「それより貧乏孤児って、学校に行けるんだっけ?」


 ジョシューがドムトルの脇をつついて小声で言った。


「どうだかな」


 ドムトルがアダムの方を向いて目をむいて見せた。


 神官が中央に進み出て来て祭壇に向かって祈りを上げる。

 村の役員が合図をして、その場にいる全員が神官にならって片膝をついた。


「宇宙の創造神 デイテよ

 原初の宇宙、混沌の闇の中に生まれた一滴の思いよ

 それはあり続けるということ、生きるという思い。

 あなたは七柱の神を召されました。

 太陽の神 ソル、月の神 ルーナ

 火の神 プレゼ、土の神 ゾイ、木の神 メーテル、

 水の神 ワーテル、風の神 ティンベル

 そして天地は創造され、大地には生命が満ちたのです。

 本日は神々の新たな子供たちをご紹介いたします。

 どうかこれからの人生の指針となるご加護を賜りますように、

 都市ザクトの神官 ユーノーが申し上げ奉る 」


 神官ユーノーは両手で捧げ持っていた錫杖(しゃくじょう)をシャランシャランと鳴らし、一度深く首を垂れると優雅に立ち上がり、振り向いて子供たちへ向き直った。


「それでは順に、祭壇に来てください。祭壇の前で膝をつき、錫杖を捧げ持ってお祈りします」


 村の役員の指示に従い順番に子供たちが出てくる。過去に兄姉の洗礼式を見たものもいるのだろう、誰も迷うような素振りを見せなかった。


「村の守り手の息子、ドムトル」


 呼ばれて出て来たドムトルは、神官から神具である錫杖を受けると、片膝をついてペコリと一回首を垂れて、シャランと鳴らした。

 アダムが注意して見ていると、祭壇に並べられた七柱の神像の内の二つが光を放って輝いた気がした。すかさず周りがざわりと騒がしくなった。村の役員たちで確認し合う様子が見られ、周辺から呟きが漏れた。


「火と土の神の加護を得たらしいぞ」

「火は分かるけど、土の神は学問・知識の神だろう。おかしくないか?」

「いや、土の神は工業・鍛冶の神でもあるから、火とは相性はいいのさ」


 ドムトルはそんな周辺の声を無視して、アダムに向かってどうだといった得意顔を見せた。


「ドムトルはいいよな。俺は風の女神様の加護が欲しい。頼みます」


 ジョシューは他人のことはいいからと、自分の加護を祈って気が気でないようだった。アダムも他人事ではない。心を落ち着けて祭壇を見ないようにして、自分の順番を待った。孤児のアダムとアンが呼ばれるのは最後のようだった。


 アンがアダムの袖を引いて聞いてきた。


「アダムはどの神のご加護を望んでいるの?」

「うーん、本当は土の神様を希望していたんだけど、ドムトルと同じじゃねぇ。それよりアンはどの神様の加護を望んでいるの?」

「わたしは母さまと同じ癒し手になりたいの。だから、木か水の神さまのご加護を希望しているわ」

「それは大丈夫だろ。ドムトルより多い三つか四つの神様のご加護があるんじゃないか」と適当なことを言った。

「アダムは欲張りね。わたしは一つの加護で十分だもの」


 アンは小さくクスリと笑った。色白で小柄なアンの瞳は翡翠色で、伸ばした銀髪がまぶしい。貧しい晴れ着だが決して貧相な感じはしない。むしろ清楚で高貴な感じがした。

 アダムは黒髪で黒目だった。赤毛やブラウン系の髪が多い中で漆黒の髪は特別で、顔だちをくっきりと目立たせて、周りからは生意気に見えるのだろう。ドムトルがいつも対抗して来るのもそのせいかも知れなかった。


「村の癒し手の息子、アダム」


 ジョシューの番はいつの間にか終わっていたらしい。アダムは呼ばれて前に出た。

 神官に手渡されて神具である錫杖を手に取った。それまでの人の手で温められていたであろうそれは、意外にひんやりと冷たい感触で、両手で持つと手の平から何か力を吸い取られるような不思議な感覚があった。違和感で顔を上げると神官が頷いて見せた。少し離れて立っているワルテル教授の顔が意外に近くに見えた。


 促されるままに跪いて首を垂れる。錫杖を捧げ持ち祈りを上げた。顔を上げて神官を見るとまだ問いただしげに自分を見ているのが見えた。何か間違ったかなと周りを見回したが、やはりみんな待っている。

 おかしいと思いながら、もう一度首を垂れ祈りを捧げた。顔を上げると神官が慌てた様子でワルテル教授と話をしていた。


「ご加護のの光が点りません。こんなことは初めてですぞ」

「大丈夫ですよ。私には薄く白色に輝いたように見えましたよ。きっと陽の光のせいで見えにくかったのでしょう。橙色の光ですから、太陽神のご加護があったのではないですか」

「いや、それも私は初めてです。太陽神と月の女神のご加護を得た人間も見たことがありませんよ」

「まあ、確かに珍しいですね。でも心配しないでいいですよ。私が王都へ報告しますから、ご安心ください」

「おお、ありがとうございます。これはやり直しが利きませんので、自分には判断しかねます」


 神官が非常に恐縮しながら頭を下げる。アダムは何か分からずワルテル教授の顔を見ていた。教授は意味ありげな目線をアダムに向けた。

 それでも周囲の戸惑いもアンの番までだった。アンの結果が出ると周りが騒然となって、もう洗礼式どころではなくなったのだ。


「村の癒し手の娘、アン」


 アンが進み出て神具を受けた。その途端錫杖が輝いたように見えた。一瞬に会場が静まった。驚きに目を見張りながら神官が促すと、アンは膝をつきお祈りをする。

 シャランと鳴った錫杖が再び少し輝きを放ち、次いで祭壇の七柱の神像が順番に輝きを灯して七色の光を放った。


「おおー!」

「聖女様だ!」

「こんな奇跡は聞いたこともないぞ!」


 怒号が起こって会場は騒然となった。慌てて村の役員がアンの周りを囲んで立った。

 アンは戸惑ったように神具を神官に返すと、助けを求めるようにアダムを見た。


「アダムとアンはこちらへ。他の者は解散してくれ。洗礼式はこれで終わりだ」


 村長が大声を出して誘導し、役員で囲むようにしてアンを母屋の応接へ連れて行った。アダムもその後を追う。



「この後はどうなるのですか、ユーノー神官様。我々は王都からの指示を待てはよろしいのでしょうか?」


 村長が正面に座ったユーノー神官とワルデル教授に向かって聞いた。アダムとアンは壁際の二人掛けソファーに座らされ、大人たちの話を聞いていた。村長の後ろには村の役員が立って控えている。

 アダムはちゃんと話を聞いて、後からメルテルに報告しなければならない。アンは不安そうにアダムの手を握っていた。


「我々としても、これは初めての事態です。七柱のの全てのご加護を受けるなんて、有り得ない事態ですよ。ザクト神殿としても、王都の指示を受けなければ何と言ってよいのか分からないです」


 驚きが冷めやらないように、ユーノー神官は早口に話した。


「きっと王立学園に入学することになるでしょう。複数加護を受けた者の中からも、選抜されて王立学園に入る者もいます。独りで王都に来るのが難しいようであれば、そこを配慮して、同じ村の何人かを一緒に王都に呼ぶくらいの配慮はするかもしれませんね。彼女は特別ですから」


 ワルテル教授は平然と予想を述べた。


「その、何人かと言うと、あと複数加護を受けた者はドムトルですが、相性はあまり良いとは言えないですな。それに七つと二つではずいぶん差がある」


 村長にもドムトルは点数が低いらしい。


「いえ、あとアダムがいます。太陽神の加護はこれも特別だと言えます」

「ワルテル教授、私には光が見えなかったようなんで、自信がありません」


 ワルテル教授がアダムを推したが、ユーノー神官は少し不安のようだ。


「どちらにしても、入学時には二人には試験を受けてもらう必要があります。その結果では入学を認められないかもしれませんから。今から心配しても仕方ないですよ。それより父兄にはどなたが説明されますか。よろしければ私も立ち合いますよ」

「ありがとうございます。村長の私が話すつもりですが、まだ良く分からないドムトルは後にして、アンの親にはすぐに話した方が良いと思います。よろしくお願いします」



 アダムとアンは先に帰って、後から村長とワルテル教授が挨拶に行くからと言伝を頼まれた。村長の母屋から出ると、ドムトルとジョシューが道端で待ち構えていた。


「すげーな、おい。アン、どうしちゃったんだよ、お前」

「そうだよ、友達にこんな凄い奴がいるなんて、みんなに自慢していたんだぜ」

「お前ら、いつから友達なんだよ」


 ドムトルとジョシューの言葉にアダムがあきれて言っても、二人の興奮は変わらなかった。


「アダムなんか何も光らなかったじゃないか。俺はちゃんと計画通り、風の女神様の加護をもらったぞ」


 ジョシューも風の女神のご加護を受けたのが余程嬉しかったのか、アダム達に自慢してきた。


「アダムも太陽神のご加護を受けたんだよ。とても珍しいんだって教授も言ってたもん」


 アンは自分のことよりも、アダムの太陽神の加護が貴重だと聞いたのが嬉しかったようだ。いつもはアダムの後ろに隠れているくせに、今日は自慢そうに口を出した。


「おう、おれたちみんな、凄ぇんじゃね?」


 ドムトルも今日は反応が違ってきたようだった。お互いに家の近くになって、またなと言って別れた。


 アダムとアンは家に帰ると、施術室から出て来たメルテルに洗礼式の様子を報告した。二人の興奮した話を、そうかいと簡単に答えを返すと、どうしたものかといった顔をして、一瞬口ごもったが、ごはんにしようと言って昼食の準備を始めた。

 アダムとアンは子供部屋に追いやられて、昼食の時間まで手持無沙汰に時間をつぶした。


 昼食を食べてしばらくしてから、村長とワルテル教授がそろってやってきた。


「ユーノー神官様が興奮して大変だったよ。セト村としても始まって以来の出来事だからね。私らもどうしていいのか分からなくてびっくりだよ。それで話があるのだが、」


 村長が洗礼式の様子を話した後、興奮したように続けようとしたところで、メルテルは話を中断させて、アダムとアンを部屋から出るように言った。


「お前たち、ここからは大人の話だからね。少し子供部屋へ行っておいで」


 アダムは話の続きを聞きたかったが、味方になる者は見当たらず退室しない訳にはいかなかった。名残惜しそうなアダムにワルテル教授だけは目で笑ってくれた。


「それで、メルテル。アンの身元の話なんだが、何か高貴な一族だとか、特別な話があるのだろうか?」


 その話の流れは当然のことだろう。メルテルもそれが分かっていたので、アダム達を部屋から出したのだ。


「いいえ、私は聞いていないのよ。ここに運び込まれてきた時には、すでに傷の状態が悪くて、アンを私に手渡すのが精いっぱいでしたよ」


 街道で襲われて、追われるように逃げて来たようだったと言う。子供たちにはその話はしていないと言った。


「そうかい、みんな孤児になるには何かわけがあるだろうからね。これからのことなんだけれど、あれだけ才能があれば王都から召喚を受けるそうなんだ。来年の学校のことなんだけれど、王立学園に呼ばれるらしい。村から支援もできると思うけれど、どうだろうか?」


「あの、王立学園って、町の学校と違って随分費用が掛かるのかい? それにアン独りでやるのは少し心配だねぇ」


 メルテルの心配はもっともだと言った顔をして、ワルテル教授が口を開いた。


「今日は偶然私が立ち会っていたのでお話しするが、それほど心配されずとも大丈夫ですよ。王都へ学生を召喚する時は国庫から支度金が下賜されます。それと七柱全てのご加護を受ける者は特別ですから、希望すれば同郷の学生も一緒に召喚されることになるでしょう。王立学園の学生は貴族が普通なので、平民一人で入学するのは心細いでしょうから」


 聞きようによっては安心できない話だと思ったが、メルテルは特に顔に出さずに相槌を打った。


「アダムの話ではアダムも呼ばれそうだと言っていたけど」

「ええ、そちらは私が手配できるでしょう」とワルテル教授が請け負って見せた。

「それと入学前に補習を行った方が良いでしょう。王立学園に入る貴族たちは、入学してすぐに恥をかかないように、子弟を予備校に通わせることも多いですから。そちらはザクト神殿にもお話して、私の方で講師を用意できますから」


 ワルテル教授は至れり尽くせりの対応をしてくれるようだった。


「村長の私からもお礼を言います。田舎者たちですからよろしくお願いします」


 何かあれば村の責任となるのではないかと、村長は不安の様子だった。

 村長が帰る段になって、ワルテルは村長に言い訳をして一人で残ってまだ話をしたいと言った。


「私の専門は神学と水魔法ですので、癒し手のメルテルさんの魔法の施術を見学させてください」

「よろしいですが、私の方こそ色々と中央の魔法を教えて欲しいですわ」


 メルテルはそう言いながら村長を送って戸口に立った。


「それではワルテル先生、今後ともよろしくお願いします」


 村長はそう言って帰って行った。


「それで、予定通りでいいのね」


 メルテルは部屋に戻ってくると、ソファーに寛いでいるワルテルに向かって声を掛けた。


「ああ、姉さん、手紙でやり取りした通りになったよ。それよりアダムの気づきはまだなのかい? 遅いようだと来年の入学に間に合わなくなるよ」

「洗礼式を受けて、身体の器が整理されたから、後は時間の問題だと思うわ」


 どうやら二人は兄妹だったようだ。


「やっとここまで来た。洗礼式を受ければアンは世間に出ざる得ないもの。ここからは私では守ってやれない。本当は母親のフレイアと一緒にかくまうはずだったんだもの。まだまだ手放すのは心配だし寂しいわ」


 メルテルは小さな子供達の将来を案じて、感傷的な言葉を漏らした。


「そうか、確かフレイアの母親を養育したのも姉さんだったね。でもフレイアのことは姉さんのせいではないよ。我々は普通のドワーフ達より少し長生きだけど、神様じゃないのだから。何代にも渉って血を整えて来たけれど、今は子供達を送り出すことしかできないからね。、、、でも、確かにあんな小さな子供たちを見ると心配になるね」


 ワルテルは姉を励ますように言ったが、最後は小さく呟いたのだった。

 それにしても二人の年齢は一体いくつなのだろうか。


「だめね、お膳立てを整えても、直接手を出すことは許されていないわ。子供たちを信じましょう」


 メルテルはワルテルに同情されてやっとまた冷静になれたようだ。


「ああ、それじゃ、行くよ。また連絡するから」


 二人のドワーフはやれやれといった風にお互いに顔を見合わせると、別れのために立ち上がった。


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