第7話 気になって気になって……

 堀江恵……妹よりも一つ上だから現在16才。

 俺たち兄妹の恩人の一人娘だ。

 

 茶髪の髪に、ピアス、化粧も濃いが、決してケバい感じはしない。

 スタイルも抜群で、モデルの仕事なんかもしているらしい。

 幼い頃から知っているので、コミュ症の俺でも気楽に話せる数少ない一人だ。


「賢にいちゃん、おかわりは?」


「あ、ああ、ありがと」


「美味しい?」


「あ、ああ、美味しいよ」


「いえーーい、やったね!」

 甲斐甲斐しく俺のご飯をよそってくれる恵ちゃん……さっきの、おばさんの話で、俺は彼女の事を意識してしまう。


 おじさんへの挨拶も終え、おばさんとのなんだかよくわからない怪談、いや、会談も終わり、妹と直ぐに帰ろうとして、俺が恵ちゃんに帰ると伝えると……「は? 私、ご飯作ったんですけど? マジで帰る気?」

 と、半ば脅しの様に引き留められ、俺と妹は仕方なく夕飯をご馳走になる。


 いや、今日は妹と入学祝いを兼ねて、何か美味しい物でも食べて帰ろうかって事になっていたんだけど……。


 恵ちゃんに脅さ……誘われ、断れなかった俺のお尻を妹は、おもいっきりツネった……マジで痛い……今でもジンジンとお尻がランブータン状態に……。


 いや、だって断れないだろ?


 おじさんは仕事の付き合いがあったので、おばさんと恵ちゃんと俺と妹の4人で食べるのは昔からよくあった。でも恵ちゃんが全部作った夕飯はこれが初めてかも知れない。

 夕飯のメニューは、エビチリに回鍋肉、確か以前中華が得意って言ってた通り、かなり美味しい。


「……お兄ちゃん……デレデレして……」

 妹は俺に聞こえるかというギリギリの声で、そうポソりと呟いた。

 だからごめんって……なんだろう? いつもは我が儘なんて言わない妹なんだけど、何故か今日に限ってちょっとめんどくさい……。


「……雪ちゃん、一杯食べて大きくなろうね~~」


「──嫌みか……」

 妹はそう言われ、じっと恵ちゃんの胸の辺りを見て、再び視線をご飯に戻す。


 うーーん、昔は仲が良かったのに、何故かここ数年二人の仲はあまり良くない。

 何かがあったらしいけど、妹も恵ちゃんも俺には教えてくれない。


 意識しないようにと、そう思えば思う程、かえって意識してしまう。

 恵ちゃんと付き合うとか、ましてや結婚とか、今まで想像さえした事がない。


 でも……そういえば、昔「賢にいちゃん大きくなったら結婚しようね?」なんてテンプレのセリフを言われた気がする……が、それをいったら妹にだって言われていたし……。


 俺にとって妹は娘同然だし、恵ちゃんは妹同然だ……そんな事なんて今まで一度だって考えた事は無い。

 どちらかと言えば、おばさんの方がまだ…………って俺は何を考えているんだ。


 いや……さっきも思ったけど、おばさんって一体いくつなんだ?

 栗色ロングでふわふわの髪、どうみても30代前後、いや、会社だときっちり化粧もしているから、20代半ばに見える。

 恵ちゃんと並ぶと完璧に姉妹だ。


 娘の恵ちゃん同様にスタイルも抜群で、とても子供を一人産んだとは思えない。

 恵ちゃんが16才だから、仮におじさんと18才で結婚したとして、34才

 つまりは、俺と5才差……少なくとも俺と恵ちゃんや、俺と妹とよりも……年の差はない…………あああああ、俺は一体何を考えているんだああああ!


 駄目だ。気になって気になって仕方ない。

 俺のせいじゃないんだ! おばさんが変なことを言うからだ。

 俺の前でゆっくりとご飯を食べるおばさん……俺はついついおばさんと、そして恵ちゃんをじっとみつめてしまう。


「……お兄ちゃん……家に帰ったら……話……あるから」


「……え? あ、はい……」

 相変わらずの少食の妹は既に食べ終えたのか、お茶を飲みながら今まで聞いた事の無い冷たい声で俺にそう言った。



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