第56話「科学が魔法より弱いと思っていた時代が勇者にも有りました」


 俺の後ろで震えているエリ姉さんは離れないで未だに震えている。ガイドに確認を取るとトラウマレベルが『再燃』となっている。なんだよ、そんなの有りかよと悪態を吐きながら目の前の人間の正体を何となく察した。


「ナンパか何かですか? ここはうちの学校も近いんで先生を呼びますよ?」


「はっ!? 何を言ってんだよ。俺はなぁ!!」


「モニカ、学校に連絡だ。生徒会からだと言ってくれ!!」


 そう言って俺は腕章を突き出して見せつけた。モニカは素早くスマホで連絡をしようとするが、これは時間稼ぎのフェイクだ。俺は奴を素早く『鑑定』する。


「は? ガキの集まりが何だってんだよ、せんせ~助けてってか? そんな事よりも絵梨花、お前どう言うつもりだ!!」


「周囲の方も警察への通報をお願い致しま~す」


 セリカも大声を出して周囲に呼びかけるも野次馬は半分は去り、残りは困惑していて頼りにならない。はなから期待してないが改めて情けないな。

 しかしそれも納得だ目の前の男は俺より少し背が低いだけで日本人としては大柄でしかも恰好が浮浪者一歩手前のような状態だった。


「ガキが調子に乗るなよ。それに腹立つ顔だなぁ!! ガキがっ!!」


「さっきから何なんですか? あと姉が怖がっているんで失礼します。エリ姉さん行くよ。しっかり掴まってね!? モニカ、セリカ!!」


 そう言って俺はエリ姉さんをお姫様抱っこして裏路地を走る。モニカとセリカも後ろに付いて来ているのを確認すると俺は素早く別な路地の裏に入って奴の視界から消えると同時に二人に抱き着くように言って転移魔術では無く転送魔法を使った。安全な場所としてすぐに家の近くの神社に跳び、そのまま俺達は顔が真っ青なエリ姉さんを連れて家に戻った。





 まだ顔色が悪いエリ姉さんをソファーに寝かせて俺は離れようとするけど手を放してくれず、その手は未だに震えていた。離れられないのを悟るとモニカに飲み物を用意してもらうように言ってセリカと二人で具合を見ようとした時、玄関から音がしてユリ姉さんが帰って来た。


「ちょっと快利~!! スマホで連絡したのに何で迎えに来てくれないのよ~!! 私、今日は仮免試験で疲れて……って絵梨花!? 何があったの!?」


「えっと、その……」


「か、いり……私が自分で言う……アイツが、出た」


 震えながら言うエリ姉さんの一言にエリ姉さんの症状が伝播したようにユリ姉さんの顔も青ざめていた。今のだけで伝わったのかと不思議に思いながら、やはりと言うか直接会ったエリ姉さんと違って冷静だったユリ姉さんまで俺の方に近づいてくると背中から抱き着かれていた。前にはエリ姉さんで後ろはユリ姉さんでお姉ちゃんサンドだ。なんて思ったが本人達は極めて辛い状況に有るので自重して、セリカにモニカを手伝うように言ってリビングには三人になった。





 快利が気を利かせて三人にしてくれたようで少しだけ落ち着いた。ユリ姉ぇも私の一言で全てを察して気分を悪くしたようだが良く見るとそれ程でも無く快利に甘える口実にされたような気がしないでもない。なぜなら姉は少しだけ頬が緩んでいてこの状況を利用しているように見えたからだ。おのれユリ姉ぇめ、どうせ快利の背中に自慢の必殺兵器を押し当ててポイント稼ぎをしているに違いない。私達と違って未だに積極的にアピールしない癖に快利からの好意が無駄に高いのが許せないと思うと自然と力が湧いて来た。


「快利……少し、落ち着いて来た。あとユリ姉ぇは快利から、離れて」


「も、もう大丈夫なの? 絵梨花?」


「ああ、だから快利もユリ姉ぇも……話、聞いて」


 快利が頷くと床に座ろうとしたからソファーから起き上がり横をポンポンと叩く、少し困惑した後に遠慮がちに横に座ったのを満足していると更にその横にユリ姉ぇまで座った。


「わっ、お姉ちゃんサンド再び……って、ゴメン」


 すんごいスケベな顔して顔が幸せそうになっている。やはり強いのは胸なのか……だけど今はそこまで余裕が無いから軽く押し当てるだけにしておこう。


「今日だけは、特別よ……それよりも、ユリ姉ぇ……」


「アイツが出たのね……加藤喜好が……あの男が……」


「姉さん達、何となく分かるんだけど……それって本当のお父さ――――」


 快利が言う前に怖気が走り、同時に強い拒絶感と忌避感が心の内から沸き上がる。封印していた思いが溢れて大変な事になり、思わず快利に抱き着きながら罵声を浴びせていた。


「あ、あんな奴!! 父親じゃない!! 快利も、二度と”本当の”なんて付けないで……血の繋がりが有るだけの他人よ、親権だって、もう無いって母さんが言ってた。接見だってしたくないって私達は、拒否してる!! そっ、そもそも母さんには接近禁止命令だって……あんな、あんなクズ!! はぁ、はぁ、はぁ……」


「エリ姉さん……ごめん、俺が迂闊だったね。ごめん」


 どうして良いか分からず困惑した快利を見て、やってしまったと思わずユリ姉ぇの方に助けを求める。今まで守って来たとか庇ったとか言っていたが肝心な時は私だってユリ姉ぇに甘えていた。これが私達姉妹の助け合いでも有ったのに、私はいつからか一人で何でもやってる気になっていた。


「絵梨花は特に症状酷いからね、前にも温泉で話したでしょ? 少しは落ち着いて来たみたいだから大丈夫よ快利?」


「良かった。じゃあユリ姉さんと二人でなら話せそうだね……俺は少し……」


「快利も居て欲しい。頼む……」


 そう言うと快利はコクリと頷いて私の手を握ってくれた。言わずもがな、しっかり男の子をしてくれるのが嬉しくて私は思わず強く握り返していた。


「それで絵梨花、会ったのよね?」


「うん。高校の近くに居た。快利とセリカとモニカが一緒に逃げてくれた」


「そう、あいつは何て?」


「加藤絵梨花だろって……あ、あんな奴と同じ苗字なんて、もう、たくさんなのに」


 そうだ、最後まで庇った母さんさえも最後は見捨ててしまったクズが、あの加藤喜好だ。私達が小さい頃からいつもタバコを吸っていて私達が止めてと言うと、その度に頬を叩かれ泣いていた記憶しか無い。

 少し成長すると母さんが居ない時は私達がご飯を作らされて、それで私は料理が大嫌いになった。頑張って褒めてもらおうと作ると皿をひっくり返してマズいと言われ、泣けば叩かれた。それを見たユリ姉ぇが必死に料理をしていたのを覚えている。


「そう、確か最後に会ったのは養護施設に避難する前だから十年前くらい?」


「うん。母さんが義父さんと再婚するまでも何人か変な男が居たけど、それくらいだと思う……。母さんに聞けば詳しく分かるだろうけど……」


 聞くわけにはいかない。この間の母さんと義父さんを見てハッキリ分かったからだ。あれは今までのダメ男の時とは違って本当に幸せそうで、この家に来てから母さんは本当に明るくなった。しかし嬉しい反面、私もユリ姉ぇも一人だけ幸せそうな母さんをどこか許せなかった。だから義父さんに男性恐怖症も有ってキツク当たっていた。今思えば快利に対してユリ姉ぇの当たりが強かったのもそのせいだったのかもしれない。とにかく今の幸せを壊したくない。


「その様子じゃ聞かせたくない感じなのエリ姉さん?」


「出来れば……快利だって分かる、だろ?」


「うん。そうだね……じゃあ面倒だし俺が処理するね」


 あっけらかんとした声で何の気なしに言った一言はやはり現代人とはかけ離れていて快利が異世界で戦って来た人間だと思い知らされる。恐らく快利は当たり前の事を言ったのだろう、だがこちらの世界ではそれはしてはいけない事で、法律だとか倫理だとか色々と理由は有るけど私は単純にこれ以上快利に手を汚させたく無かった。


「う~ん、その様子じゃダメかな? やっぱり血縁者だと色々と複雑?」


「違う、私は!! あんな奴は地獄にでも落ちればいいと思っている。二度と会いたく無かったし、同じ空気を吸ってるかと思うと吐き気がする、だけど快利、お前にはこれ以上……」


「そう言う事よ快利? 私達は守ってくれるチートな義弟に感謝してるのよ? でもね、帰って来たあんたに手も汚して欲しくないのよ?」


「え~と……そっかぁ……」





「そんな事か、それは別に心配無用なんだけど……」


 本当に気にしなくて良いのにと思う。だって二人を害するならどんな手段でも俺はその相手を潰せる。それを出来るだけの力が有るなら使わなきゃ損だ。少なくとも俺が最初からこのチート能力があれば誰も不幸にしなかった自信が有る。

 向こうの世界に行ってからも救えない命はたくさん有った。むしろ奪う方が多かったと思う。こっちの世界でも転移前からこの力が使えたら姉さん達との行き違いもルリをあんな凶行に走らせる事は無かったと俺は思っている。


「快利?」


「うん……気にしないで大丈夫だから。俺は元勇者だから」


「良いですか? 三人とも?」


 そう言って簡単にお茶の用意をしていたのかモニカが紅茶を置いて行き、後ろから付いて来たセリカがお茶請けのクッキーの皿を置いて反対側のソファーに二人で座った。


「快利兄さん。それに姉さん達も、取り合えずここは一度お義父様に話をしても良いんじゃないでしょうか?」


「義父さんか……でも高確率で母さんに話行くよね?」


「絵梨花姉さん。そんな事を言って明日あの男が、また学校に来たらどうするのですか? 二度目は確実に何かをするために準備くらいはしてくるはずです」


 モニカの言い分は至極当然で、明日すぐには来なくても近い内に再び来る可能性は非常に高い。しかも奴は未だに旧姓で姉さんを認識していたから今日の出会いで齟齬に気付き色々と調べるかもしれない。


「でも母さんに心配かけるのは……」


「話した方が良いですわ……団結して戦うのもまた一つの戦略、この世界では縁を多く持っている方を頼るのは間違っていません。それにカイリ、私たちが調べられていた事も報告しなくてはいけないのでは?」


 そうだった公安なんてヤバい組織に目を付けられている事も話さないといけなかった。姉さんたちの本当の父親以上に危険な組織だ。エリ姉さんが錯乱していたせいで完全に忘れていた。


「セリカの言う通りだな。それにしても団結か……」


「なにか?」


「やっぱ、お前はカルスターヴ侯の娘だと思ってな?」


 思い出すのは一時とは言え俺の師となってくれた人間で、俺がこの手で殺めた人だ。貴族戦争の最終盤で俺はあの人と……戦いそして……。


「また、あの事を思い出したのですか? 言いましたわね? 私は一生あなたを赦さないって……だからカイリ、あなたはもう自分を赦して良いのです。それが責任でしょう?」


「ああ、そうだったな……じゃあ連絡して可能なら親父たちのとこに行こう」


 その後、スマホで連絡したら親父は19時頃にホテルに来いと言ったので、時間を潰して、その時間になると五人全員でホテルまで転移魔術で跳んだ。





「なるほどな……それで夕子は外してくれか……はぁ、これを言い出したのは由梨花ちゃんか? それとも絵梨花ちゃん?」


 ノートPCでカタカタと作業しながら親父は言った。そして軽くため息をついて作業を止めると目元をグイっと抑えて俺達の方に向き直った。親父が言うには母さんには事前に社用で、その時間には居ないと言われ俺達は五人で転移してきた。


「私です。直接あいつに会ったので……」


「そうか……それにしても加藤の奴もしぶといな……そうか」


「親父知ってるのか?」


 親父の意外な反応に俺達は全員驚いていた。知り合いなのだろうか?


「まあ、な……それにしてもやっぱり絵梨花ちゃんは夕子の子だよ。対応の仕方がそっくりだ……本当に、ならやる事は決まったな。子に嫌われてでも守らないとな……そうだな夕子?」


『はい、あなた……よぉ~く聞こえましたよ』


 少し籠った声で母さんの声が室内で響き渡る。しかし勇者スキルで万全の構えで調べ部屋に居ないのは把握済みだ。この部屋の探知は完璧にしていたのに……なぜ?


「えっ!? マイマスター!? まさか索敵を!?」


「そんなわけ無い……どうしてだ!?」


「大人を舐めんなガキ共、リモート会議なんて今じゃ常識だ。俺が何でPC付けたまま、お前達と会ってると思ってんだ? 夕子、戻って来ていいぞ?」


 そう言ってPCの画面をこちらに見せるとそこには笑顔の母さんが手を振っていた。どうやら俺達に見つからないようにホテルの隣のカフェで今までの話を聞いていたらしい。


「迂闊だった……PCやスマホだと気配を感じ取れないし、電子機器用の魔法なんて異世界には無い……」


「そうですわね。鑑定も使わなければ意味が有りませんし、魔法は対人用、魔術は道具にも作用しますが対象を決めて行使しないと効果が出ない。迂闊でしたわ」


 しかも今回は母さんを追跡していなかったのも迂闊だった。完全に油断していた。ガイドは特別指示をしていない場合はスキル対象者に状態変化が無い限り追跡はしない。対象者だってプライベートが有るから、それに俺が配慮していた。その事を以前、親父には仕事の話をしながら説明していて、それを利用されたようだ。


「はっ、勇者なんて言ってもな、お前はまだガキなんだ快利、だから……もう少しだけで良いから俺を頼れよ。お前に全部押し付けた情けない親だがよ……頼む」


「親父……」


 そう言っていると後ろからガチャって音がしていて母さんも部屋に戻って来た。手にはモバイルPCを持っていてニコリと笑いながら表情は少し硬かった。


「まずは子供たちに謝らないとね。ごめんなさい……大人の都合に巻き込んで、由梨花も絵梨花も、本当にごめんなさい私が弱かったばかりに……」


「「母さん……」」


 そう言って母さんが姉さん達を抱きしめてる間に俺は少し考えていた。そして俺と同じ疑問に行きついたセリカがポツリと呟いた。


「でも、どうしてあの男が高校に? 絵梨花姉さまの所在を調べたのでしょうか?」


「加藤の最後の仕事は……憶えてるか夕子?」


「あの人は探偵をした後に情報屋で最後は……記者と言うかタレコミ専門だったはず。自分では聞屋と言ってましたけど実際は持ち込みの、その……単発バイトのようなもので……」


 話を聞くと姉さん達は自分の父親は無職だと思っていたらしいが実際は記者志望で探偵と言うよりも何でも屋、最後は情報屋として色々とタレコミをしていたそうだ。そんな事を聞いていると親父が吐き捨てるように言った。


「だろうな高校の時からそうだった。人の弱みを握ったりして色々と卑劣な奴だった。あんな奴……っと、悪い君達の父親を」


「義父さん、気にしないで……下さい。あいつにされた事を思い出すだけで私たちは今も……快利が居なかったら傷も消えないままで……」


「そう、です……そもそも私達が男性恐怖症なのは、あの男のせい……ですから」


「いや、だが……そうだったな、君達を保護した時は……」


 過去に親父や母さんと色々有ったのは確定だけど、これ以上は姉さん達のトラウマが触発されるので話を一端そこまでにして状態異常の回復魔法を二人にかけた。


「あれ?」


「体が、心が軽く……」


「現代科学に敗北したけど、人の心は癒せます。だって元勇者だからね?」


 状態回復系の魔術は少ないが魔法は多岐に渡る。それこそトラウマ回復なんてのも有るらしい。残念ながら俺はまだラーニング出来ていないから今度ガイドに詳しく聞く予定だ。


「あの、皆様よろしいでしょうか? それで件の男への対策、さらにはこの国の警察への対応も考えなくてはいけないのでは?」


「それなんだが、また例の知り合いを頼る。だが快利が対応してくれたから恐らくは少しは時間が稼げたはずだ。まさか警察も魔法や勇者が実在するなんて思ってないだろうからな。だが奴らもプロだ。そうなる前に権力で潰してもらう……任せろ快利、それに皆も、親らしいところ見せてやる」


 そう言ってPCをカタカタして何かメールを送ったようで母さんの方を見ると頷いていた。


「ふふっ、やっぱり人助けの時に張り切っちゃうんだ、昇兄ぃ……本当に昔から、私の時も……」


 ま~た母さんが親父に夢中になってる。こうやって定期的にラブラブな雰囲気出すんだよなぁ……親のイチャコラは正直キツイっす子供には……。


「それよりカイリ? あなた様の魔法や魔術が破られる心配はしてませんが不審者はこれで三名です。しかし変ではなくて? その中に魔力持ちは居ました?」


「「あっ……」」


 セリカの問いに俺とモニカが今更ながら気付いた。公安の人間も加藤もこちらの世界の人間だから当たり前だが魔法は使えない。しかし百合賀尊の話だと魔力持ちが居たはずだ。


「やはり不審者は三人じゃなくて三グループって事なのか?」


「恐らくは、あるいは……加藤の協力者と言う可能性は?」


 そう言って三人で話し合っていると今のセリカの発言に違うと声を上げたのは手続きを終えて母さんと話していた親父だった。


「加藤なら、その力が手に入ったらまず見せびらかす。そして他人を威圧するのに使うはずだ。高校時代からそうだった」


「高校時代って、さっきから……そんな昔からの付き合いなの?」


「ああ。同級生だった……それが全ての間違いだった」


 それっきりまた沈黙してしまい喋る気は無いようだ。こう言う時に事情は全部話して欲しい。大体は映画やら小説でこう言う時に話して無いから失敗するフラグ立つから。なので奥の手を使う、親父が悪いんだからな? 全部見させてもらおう神々の視点全部丸見えで親父の記憶と情報を見させてもらう。だがそこで見た物は俺にはとても口外出来ない内容だった。


(うっ……こんな、事が……親父、こんなに苦悩して……)


「お? どうしたんだ快利?」


「い、いや、何でも、無いよ父……さん」


 俺は目の前の親父に同情してしまった。俺を育児放棄したのも姉さん達と向き合えなかったのも全ては悔恨と何よりも自分への自責の念。親父はずっと後悔して今日まで生きて来た。俺が思わず父さんって言ってしまう程に、その記憶は辛く苦悩に満ちたものだった。


「お前、父さんって……気なんか使わなくていい。それに何だかんだでお前の親父呼びも気に入ってんだよ」


「あ、ああ……たまには良いだろ?」


 だが同時に理解した加藤喜好と言う人間がどれだけ悪辣な存在か、そしてクズであるかを理解した。それと同時に俺の心境は凄く複雑になった。だって、この男が居たから俺の大好きな二人の姉達はこの世に生まれたんだと言う事実に、そして何よりも俺が生まれて来れたのだって……。


「どうしたの快利?」


「あっ、ユリ姉さん、ううん。何でも無いよ、実はセリカ達と魔力持ちが居ないのが不安だって話をしてて自分なりに推理してたんだ」


 そんな事を考えていたらユリ姉さんが俺の傍に来ていた。そして俺の内心の動揺が見透かされているかのように耳元で一言。


「ふ~ん、そう? でも話せる時になったら私には話してね?」


 それだけ言うとまたエリ姉さんの方に戻って行った。そしてこの夜の秋山家の会議はまだまだ終わらなかった。

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