第57話「元勇者の弱点は何でもできる事です。えっ!?できちゃったの!?」

 ◇



 七人での会議は佳境を迎えていたのでモニカがお茶を淹れて小休止となっていた。


「快くんのお茶は落ち着くわ~。それにモニカちゃんの作ったローズマリーのハーブクッキーも美味しいわ。ね? あなた?」


「ああ、モニカちゃんもセリカちゃんも二人共こっちには慣れたか? そう言えば結局どっちが書斎を使ってるんだ?」


「わたくしが使わせて頂いておりますわ。お部屋の書物も何冊か拝見させて頂きましたわ」


 なんかセリカと親父は割と馴染んでる。ある意味で俺や姉さん達よりも違和感が無いしモニカなんかは母さんと仲が良い。二人の方がよほど本当の親子みたいだ。その間に俺達三人もまた話し合っていた。


「しかし方針は決まったけど……どうすれば良いのかしらね?」


「一応はユリ姉さんは警戒しつつも普段通りが一番だよ。ただその加藤、さん?」


「ああ、あの男だが母さんの話では記者らしい、年中家に居て私達は……虐待を受けていたから無職だと思ってた……」


「う~ん、やっぱこの世界から消そうか? 加藤さん?」


「だからそれはダメだって――――「違う違う。セリカとモニカは知ってるんだけど実は話してない事があってさ……」


 そこで俺は実は異世界に放置して来た人間がいて、そいつらと同じように異世界に置いて来て、二度とこちらの世界に来れないようにした事を話した。


「お前、そんな事してたのか……」


「そうよ快くん、あちらの風美社長は知ってるのよね? 人を異世界に放置して来たならちゃんと、お母さんと昇一さんには報告しなきゃダメよ~?」


 親父は普通のリアクションだった。そして母さんはだいぶズレていたけど親父の記憶を盗み見した時もこんな感じだったので案外変わっていないようだ。


「でもこれなら俺が直接手を下すわけじゃないし良いんじゃない?」


「それは……だけど、それって快利だけが……」


 これ以上は姉さん達の『おねがい』でも俺は聞けないからキッチリと断り、納得してもらった。これで加藤は異世界行き確定だ。ちなみに深見やマリエとは違う異世界をガイド音声が用意してくれているらしく、明日にでも下見に行く予定だ。


「ああ、快利。異世界で思い出した。例の会社と他にもお前から食材を買いたいって業者が出始めてな、この騒動が終わったら行けそうか?」


「え~っと了解。問題無いよ?」


「ああ、じゃあ夕子、資料を? どうした!?」


「母さん!! すぐに回復する!! あと状態も!!」


 見ると母さんが少しフラフラして顔色が悪くなっていた。口元に手を当てていて吐き気も有るようだ。俺はすぐに回復魔法を弱でかけた後に状態を確認するために聖者の眼健康診断を使って病名を探った、そして即座に発覚したステータスが色々と衝撃的だった。


「快利!! 夕子はどうなんだ!?」


「快利!! 母さんは!?」


「快利兄さん?」


 俺が沈黙していて重病かと焦った親父を始めとした現実世界組に対して異世界組のモニカ達は冷静で「何で黙ってるの?」と、ある意味で困惑した表情を浮かべていた。なぜなら勇者に治せないものは何も無いと知っているからだ。そして俺は顔が若干赤くなり色々と目の前の両親を見た後に頭を抱えてしまった。


「快利? どうしたの? まさか母さん危ない状態なの?」


 ユリ姉さんが諭すように俺に言うが俺は何と言って良いか分からない。こう言うのお医者さんじゃないと分からないし、ここで何と申告すべきかは本当に謎だからだ。何度も言うようでしつこいが俺は勇者だけど医者じゃないから。


「あ、いや……さ、親父、母さん、おめでとうございます?」


「はっ? 何を言ってるんだ?」


「あら? あらあら~!? もしかして快くん、私達の赤ちゃん出来ちゃったのかしら~?」


「はい。そのぉ……ステータスに『妊娠』って出てます」


 おかしい俺は医者じゃないのに、どうして親の妊娠報告しているんだろうか……。


「おおっ!! おおお!! 夕子でかした!! そうか……出来たのか……」


「快利!! 本当なのか!? えっと、母さんおめでとう!!」


「うんうん。良かったよ……義父さんとの子供欲しがってたもんね……」


 ユリ姉さんとエリ姉さんは大歓迎なようで喜んでいた。俺はただ呆気に取られて目の前の家族を見る。そしてセリカとモニカも喜んでいた。


「どうした? いや、そりゃ困惑するか、しかし妊娠の診断まで出来るのか、勇者は凄いな!! 調べてくれて感謝する、ありがとう快利!!」


 そう言って頭を撫でられた。俺の方がもう背も高いのになぜか驚いていた。俺が頭を撫でられてこんな感情になったのはいつ振りだろうか。小学生? いやもっと昔……あの女が母親だった時だろうか?


「ま、まあね……にしても俺の弟か妹かぁ……」


 出来れば妹が良いな、弟は正直な事を言うとトラウマだ。親父とあの女が離婚するきっかけがあの女と間男との間に出来た半分血の繋がった弟だからだ。


「いや、今さらながら、すまないな。お前には……」


「気にしないでくれ、ってそうか!! だから親父と母さんは家じゃなくてこのホテルで寝泊まりしてたのか!? 色々と致すために!!」


「おい快利!! 言い方が有るだろっ!!」


「あらあら~快くんにバレちゃいましたね~!! あ・な・た?」


 つまりはそう言う事である。母さんが仕事復帰したのが八月だけど、その前から仕事の復帰の打ち合わせをしてたのが七月からだった、つまり二ヵ月の間にやる事はやっていたのが俺の両親だったのだ。俺が色々と頑張っていた夏休みに両親も妊活に励んでいたと言う事になる。


「何となく察していたが、やはりそうだったか……」


「あぁっ!? そ、そう言う事なんだ……母さん」


 ユリ姉さんは納得したようだし、エリ姉さんは何となく察していたらしい。そう言えばさっき子供を欲しがってたのを知っていたようだし、母さんから相談されていたのかもしれない。


「だから朝ご飯だけはとか、やたら栄養を気にしてたんだ……母さん」


「ええ。お仕事も子作りも体力が基本よ。だから無理して毎朝お願いしたのよ」


 よ~し将来の妹or弟よ、お前は、お兄ちゃんのご飯で育ったんだからな? 感謝しろよ? 待てよ母さんはご飯作れないから俺がやらなきゃいけないのかな……離乳食とか……今のうちに勉強すべきだろうか?


「あの、良いでしょうか? そうなると夕子母さんは妊婦と言う事になります。万が一にも流れては大変ですのでお家に戻られては?」


「あっ、ああ、そうだな。モニカちゃんの言う通りだ!!」


「う~ん。でも昇一さんの面倒を見れるのも私しか居ないし、お腹もまだ出てないから大丈夫だと思うわ~」


 その後は色々と話し合った結果、母さんには明日改めて病院に行ってもらうと言う事、そこで医師にきちんと話を聞いて来て貰う事になった。やっぱりお医者さんが一番だよね。そして親父には公安への対策と加藤の現状を調べるのを依頼した。その上で奴に対する制裁と対策をするのは俺が一任された。


「結局は快利に……ごめんなさい」


「良いって、エリ姉さん。今度こそ加藤も終わりなんだし。姉さん達も安心して生きて行ける。俺に任せてよ!!」


「その通りだ。快利、二人はもちろんだがセリカちゃんとモニカちゃんも守るんだ。皆を守って家族を幸せにな?」


 その言葉に俺は大きく頷くと親父を見て言う。以前のように親父の言葉は全然薄っぺらく聞こえなくなった。親父は昔ミスって全てを失いかけたが、そこから少しづつ取り戻して行った本物の男なのが分かったから。


「ああ、親父の昔からの想い? 信念だからな? 本当は母さんもエマさんも、あの女も皆を助けたかった。それだけだったんだろ?」


「快利……おまえ、どうして……知って」


「俺はチートの元勇者だよ。悪い。記憶を少し見た……」


「そうか、恥ずかしい事を知られたな……これじゃ一生お前に頭が上がらねえな?」


「はっ、六歳から育児放棄してたんだ。それだけで貸しは充分だろ? だからよ。親父のやられた分は倍返しにして地獄見せてやる!!」


 それだけ言うと俺は親父に手を出した。異世界ではよくやったが改めて仲直りがしたいと思った。だから自然と手を出していた。親父が一瞬驚いた顔の後に苦笑するとガッチリ握手をしていた。


「ああ、後は任せたぞ……息子よ」


 初めて息子なんて言われた気がしたけど嬉しさよりも恥ずかしさが先に出て手をパッと放していた。姉さん達は驚いた顔をしていたし、義妹たちはニヤニヤしていた。元勇者なのにと言わんばかりの表情だった。



 ◇



 そしてそれから三日後、まずは母さんだが改めて病院で診断してもらって懐妊していた。これにて秋山家に五人目の子供が誕生するのが確定した。一七歳も離れた弟か妹か分からないが新しい家族が出来てしまうのは少しだけ複雑だ。


「三人目だけど久しぶりだから緊張するわ~」


 本当だろうか、凄い余裕そうなんですけど母さん。そして病院に付き添って正式に懐妊の報告を受けてから妙にそわそわしている親父もキチンと仕事はしていてくれて加藤の過去を色々と調べてくれていた。姉さん達に知らせるより前に俺はセリカとモニカだけを連れて父さんの元へ訪れた。


「来たか……まあ、このメンバーなら納得だ。後で仕事についても話があるからちょうど良かったよ。さて、まずは簡単な経歴から話そうか」


 まず母さんとの離婚から既に十年が経っているらしいので、その十年間で奴がしていたのは違法スレスレの取材活動とメインは脅迫、実際に逮捕された事が三回。内一回は婦女暴行未遂だったそうだ。ちなみに出所したのは半年前と言う事だ。


「クズですわ」

「クズですね」

「クズじゃん」


 順にセリカ、モニカ、俺と予想以上のクズっぷりに思わず口から出ていた単語は「クズ」という単語一択だった。


「ああ、夕子やあの子達の前で言いたく無かったから良かったが、ここまで堕ちていたなんてな……同級生の近況をこんな形で知るとは、悲しいもんだ」


「俺は同級生はルリと二人以外はどうでも良いから、こう言う時は助かるぜ」


 やっぱボッチ最強だな。そんな事を思っていると親父は苦笑して言った。今はそう言う時代で良いのかも知れないなと、俺はイマイチ意味が分からなかったが取り合えず頷いておいた。


「んじゃ、この加藤も異世界転移してもらうけど良いよな?」


「う、うむ、しかし……だな」


「大丈夫。絶対にバレないし最近流行りの異世界転移行方不明の状態になるだけだから問題無いからさ」


 ただし行き先は地獄だがな。親父もしょせんは現代日本の平和な人間だから躊躇しているようだからここは最後の一押しをしておこう。


「親父、この加藤がエリ姉さんの前に現れた時はかなり取り乱してさ、震えて俺の背中から離れないで大変だったんだよ?」


「そうだろうな……なんせ二人は実の父親であるアイツに熱湯をかけられたりタバコを押し付けられたと……夕子から、聞いてる」


「知ってるよ。二人の心の傷もそうだけどさ、それ以上に体の傷を治す時に見たよ。しかも太股の内側とか背中とか目立たない場所にされてたんだ」


 あの旅行で無理やり治した怪我をずっと背負って姉さんたち二人は海やプール、それに温泉など肌を晒す事が必須なレジャーは全て諦め、最近までは好きな服すら満足に着れなかった。この間ユリ姉さんがミニスカートを履いてみたいとお願いされた時は俺はすぐに全品再利用もったいない精神で似合いそうな物を作った。エリ姉さんはまだ無理らしいが、いずれ絶対に好きな服を着て貰おうと考えている。


「だからさ、二人が二度と恐怖に怯えないで生活するためなら俺は何でもやるよ? 大丈夫さ。そこら辺、俺は暗殺とかもやってたから問題無し。な? モニカ?」


「はい。私と二人でセリカ様の家や王家に仇なす政敵を消した事もございました」


 そう言えば時空魔術は使い手が王国では十人に満たない上に連続行使が可能なのは俺とモニカと、第三王子ホモ野郎くらいしか居なかった。だから、そう言う任務は専ら俺達二人がしていた。


「そうか……だが、俺は――――「それにさ、そいつがもし今の幸せな母さんと親父を見たらどう思う? しかも二人の待望の子供まで生まれるんだぞ?」


 そう言った瞬間に親父の顔がなんとも言えない複雑な表情を浮かべて苦しんでいるように見える。親父の記憶を見たから、よ~く知ってるよ。だって加藤は親父を苦しめるために母さんと結婚したんだ。母さんの記憶も少し見たから答え合わせは済んでいる。


「親父はさ、ルリの両親を、エマさんと亮一さんを助けたろ? でも結果として幼馴染の母さんを失って、その後にあの女にも不倫された、違うか? そんで結局は一度、全てを失ったんだろ?」


「そう……だ」


 親父が凄かったのはそこからなんだけどな、爺ちゃんに頼んで必死に修行し、わずか数年で一角の企業家として成長し、母さんと姉さん達を助けたのだから。ただ、その際には俺は完全に放置されて一人で飯作ってたんだけどなっ!! 自分の息子放置するほど好きな相手だったんだろ親父?


「判断……今度こそ誤ったら今の幸せ、ぜ~んぶ無くなるんだぜ? 正直言うとルリの両親を救った親父は俺にとっては正に推しの恩人だ。だけど母さんは一歩間違えたら、どうなってた? 爺ちゃんが間に合わなければ?」


「――――ってる。分かってる!! 夕子の自殺未遂も、俺が、俺が学生ん時にエマちゃんに夢中であいつを放っておいて、全部、俺が……」


 実は母さんは親父に娘達を保護してって手紙を出して自殺しそうになってたんだ。その現場を俺の爺ちゃんがギリギリで見つけ、そこで初めて姉さん達の虐待などが発覚した。


「だから再度質問だ。親父? 一度目は幼馴染を取られてさ、二度目はお腹の子供ごと失うことになっ――――「やめろ!! もう、分かったから……」


「大丈夫です。お義父さま……ここに居るのはあなたの子息にして異世界では最強だった元勇者……たった一人のゲス野郎を地獄に落とすくらい簡単ですわ」


「その通りです。マイマスター、勇者カイリに任せて頂ければ今後も全て幸せに、そしてご家族も含め平和に過ごせます。私達への心配など不要ですから」


「親父、良いな?」


 俺達三人が言った後に親父は最後には頷いた。やはり根が善人だといけない、でもこれから生まれて来る子には良い親になってもらいたい。こんなドロドロな家庭に生まれて来るんだ。せめて生まれる前のゴミの処分はお兄ちゃん達が、しっかりしてやらないとな?


「ああ……頼む。加藤喜好をこの世界から消してくれ……」


「その依頼、確かに元勇者カイリが引き受けた……さて、じゃあバイトの方の話をしようぜ親父?」


 こうして俺達は親父と軽く話し終わるとすぐに準備を始める。なるべく早く始末しないと姉さん達を安心出来ないし、母さんとお腹の子供の成長にも障る。あとは親父のストレスも大きいからな。面倒な事はさっさと終わらせるに限る。



 ◇



 そして二日後、意外と早く決行の日は来た。時間との勝負だから俺達は昼休みの時間に動く事にした。


「悪いルリ、少し腹痛いからトイレ行くから先に行っててもらえるか?」


「え? う、うん分かった。じゃあセリモニ行こう?」


「実は私も職員室に用事が有りまして、セリカ姉様、よろしくお願いします」


 そう言うと俺はトイレに駆け込む振りをして転移魔術を行使し屋上に転移、モニカも人目に付かない場所から屋上に転移して来た。エリ姉さんやルリに気取られる前に奴を拉致して異世界転移させる。一応はアリバイ作りはしておくに越した事は無いと親父に言われセリカにさも俺達が高校内に居るような振りをしてもらうのだ。


「よし、モニカ行くぞ」


「はい、マイマスター!!」


 俺達は時空魔術で奴の勤め先と思しき貸し倉庫付近に転移した。週刊文潮仮オフィスと木の立て看板が立てられていて、そこで俺は思い出した。夏休み中にルリを脅して来た記者の週刊誌と同じだ。爆破されたビルの代わりにここで今も仕事をしていたのに驚きを隠せなかった。まさか偶然にも加藤の勤め先がここだったなんて……。俺達は事前に用意していた隠れ身の腕輪を確認すると物陰から出て奴を探した。


「それにしても深見とか言う奴の仕事を引き継いだら、まさか絵梨花と会えるとはな……これもチャンスかも知れないな」


 奴は倉庫の裏で一人でタバコを吸って何やら不穏な事を呟いていた。チャンスとはどう言う意味なのだろうか? 前回で鑑定はしていたので奴の大まかなステータスはハッキリしていたが、そこには親父について情報として載っていなかった。

 やはり勇者系スキルの神々の視点全部丸見えで見ないといけなかったのだ。だから異世界に行く前に奴をスキルで見た。そして理解したコイツは、やっぱりクズなので救う理由が無いとそこで確信した。


(そろそろ仕掛ける。モニカ、周りを再度確認してくれ、誰も居ないな? カメラの類は無いな?)


(はい、探知やその他の魔法、それとこの付近一体の物質に索敵の魔術をかけました。カメラは有りますが、ここは映らないように細工は終わりました)


 モニカに確認すると俺は自分の目で確認するとガイド音声に再度、周囲に人間が居ないのを確認し全てを拒絶する聖域引きこもりの味方をこの場に展開した。もうこの中で何が起きても誰にも気付かれない。


「どうも~!!」


「あっ? てっ、てめえ!! 絵梨花と、俺の娘と一緒に居た!!」


「どうも、秋山昇一の息子、秋山快利で~す。クズ野郎?」


 そう言った瞬間に奴の顔色が変わった。予想通りのリアクションで芸が無いなと思いつつ奴の背後に回ったモニカを見て合図を待てと視線を送った。


「秋山っ!! あいつの息子だと!? あの野郎、いつも俺の邪魔ばっかしやがって本当に腹が立った!! どうもムカつく顔だと思ったらお前息子か!!」


「ああ、言うの忘れてたけど俺の母さんは秋山夕子、姉は秋山由梨花、秋山絵梨花の二人なんだ。知ってた? 加藤さん?」


「は? はっ!? ど、どう言う意味だ!? そもそも役所も情報屋ですら知らない情報を……待て、秋山って……」


「夕子母さんは親父と再婚したぜ? お前が刑務所にぶち込まれてる間にな? そして二人は親父の養女で娘で俺は美人な姉が二人出来たってわけ」


 それだけで奴は顔色が変わった。三度目の出所で半年前に外に出て来たコイツにとってみれば色んな意味で衝撃だっただろう。さて、じゃあ面白い顔も見れたから、そろそろ良いだろうと思って俺は後ろのモニカに視線で指示を出した。


「待て、それはどう言う意味なん――――ぐぇっ!?」


 後ろから隠れ身の腕輪を外したモニカが首に手刀をトンと打ち込むような事はせずに手に持った木刀を後頭部に叩きつけ気絶させた。


「おいおいモニカ。程々にな? 殺すわけにはいかないんだからさ?」


 そう言って俺はそいつを持ち上げると、臭い……ツーンとした汗臭いニオイが俺の鼻を突いた。仕方ないから我慢して俺は時空魔術でガイド音声の指示する座標の新しい異世界へと跳ぶ。さてフィナーレと行こう。

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