#3-5「なんでも暴力で解決するのはやめてください」
「ほのり!」
まりかちゃんたちと別れて、わたしが商店街を駆け回っていると。
わたしの名前を呼ぶ声とともに、グリーンカラーのバイクが眼前で停車した。
脱ぎ捨てたヘルメットの下から、艶やかな黒髪ポニーテールが露わになる。
「
「あほ。サボっていいときと駄目なときくらい、あたしにも分かる」
「ふざけんな、いつもサボっちゃ駄目に決まってんでしょ……ぐすっ」
強がって言い返そうとするけど、途中から言葉にならなくって――わたしは勢いよく、薙子の胸に飛び込んだ。
薙子もまた、嫌がりもせず受け止めてくれる。
「なんだ、さっきの電話は? 雪が一体、どこに行ったって?」
「……分かんないの。でも、なんだか
「取りあえず、落ち着け。大丈夫だから」
声が震える。目頭が熱い。頬を涙がつたって、止まらない。
そんなわたしの肩をぽんぽんと優しく叩きながら、薙子は「大丈夫だ」と何度も何度も繰り返してくれた。
「……ありがと、薙子。そうだよね。冷静にならなくちゃ、だよね」
「ああ」
「滴る雫は、心の破片。さながら羽根をなくした、白鳥の嘆き。泣きなさい、泉枯れ果てるまで。大丈夫、貴方は独りでは……ないのだから」
「きしゃあああああああ!!」
変な声で叫ぶと同時に、わたしはいつの間にかそばに佇んでいやがる三つ編み少女目掛けて、往復ビンタを繰り出した。
三つ編み少女――もとい
「なんでも暴力で解決するのはやめてください、ほのり先輩! 先輩が勝手に泣いていたのでしょう? いくら年下に『ふええ……』って号泣しているところを見られて恥ずかしいからって、この仕打ちはあんまりなのです!!」
「何よ『ふええ……』って! そんな声出してないわよ!! そうよ、八つ当たりよ。八つ当たりですよーだ!!」
「まさかの開き直り……先輩としての威厳とか、そういうのはないのですか」
う、うっさいやい!
わたしはゴシゴシと目元をぬぐって、こほんと咳払いをした。
「で? なんであんたがここにいるのよ。もゆ」
「なんでと言われましても。もゆはただ、ガブリコと二人でユリーシャを再度勧誘しに行こうとしていただけなのです。先輩方こそ、何をなさっているのです?」
「そうがぶ。ニョロンさんと雪姫さんが見当たらないがぶが、どうしたがぶか?」
「……ニョロン? ああ。あの蛇なら、ベッドに縛りつけたままだわ」
「ニョ、ニョロンさーん!?」
わたしの話を聞くが早いか、ガブリコはわたしの家の方角へと走り去っていった。
突然駆けてきたワニの怪物に、商店街は軽くパニック。
まぁ、それはしらんぷりしておこう。うん。
「――それで? ロンギヌスは分かりましたが、雪姫先輩はどうしたのです?」
「雪姫は……」
「ほのり。
薙子の言葉にハッとする。
「確かに……雪姫の奴、最後にジャスミンがどうとか言ってた……ひょっとしたら、一人で
「あのー。なんのお話をしているのですか?」
首をかしげているもゆの手を引いて、わたしはまっすぐに歩きはじめる。
目指すはあの引きこもり――茉莉百合紗ちゃんの家だ。
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