お菓子な時間を

一色 サラ

#Before

 ハロウィンである10月31日の深夜0時に、ルナが住むロンーズ街に、お菓子箱のような路面電車がやって来ると噂があった。

 子どもの頃に、大人たちに聞いても、幻想だと、まともに取り合ってもらえなかった。

 本当に路面電車が街にやって来ると知ったのは、いつからだろう。もう忘れてしまったが、大人になれば、参加できることは分かったことは嬉しかった。それでも、20歳にならないと、決して参加することが出来なかった。

 去年もそうだ。すでに、寝てしまっていた。前日の11時半から深夜1時の間に、ランタンの妖精がやって来て、魔法で眠れせに来るらしい。なので、絶対に子供は参加することが出来ないようにされていた。


「ママ、行ってくるー」

「仮面は持った?」

ショルダーバッグの中を確認する。

「うん、持ったー」

「このカゴにお菓子を入れなさい。いくらでもいれることができるから」

ママからこの時期のために作られている工芸品のカゴをルナは受け取った。

「わかった」

「じゃあ、気をつけてね。ミルちゃんによろしくね。いってらっしゃい。」

「はーい、行ってきます。」


 10月30日の11時ごろ、ミルとの街合わせている場所に向かって歩いていると、大勢の人で賑わっていた。去年までは、必死に寝るのを我慢してことを覚えている。

「ルナ」

「お待たせ」

「初めての参加だね~」

「楽しみだね~ でもミルは2回目でしょう。ずるいな。」

「ごめん、ごめん。今年はルナがいるから楽しみだよ!」

「うん」

 ルナの誕生日は11月1日で、ミルは10月30日だ。なので、去年は、その差がもどかしく感じてしまった。

 ミルには、何度か去年の話を尋ねたが、「体験しないと分からないから、秘密」と返えされ、詳しいことは教えてくれなかった。

「あそこらへんで待機しよう!」

「うん」

何も分からないので、ミルの指示に従った。

「まだ、大丈夫でね」

 線路の両脇に規制線が張られていた。周りを見渡すと、徐々に人が集まって来ているので、ソワソワした空間が漂っている。


11時半、この時間になると、子どもはランタンの妖精によって、眠らされる。

「おい、どうした?」

「そいつは20歳の誕生日を迎えているのか?」

「ああ、明日の31日で20歳になるよ」

「それじゃあ無理だわ。30日までに生まれていないと、参加できない。」

「どういうこと?」

「さあー、知らなねえ。そいつ、邪魔にならない場所に置いてこい。」

そんな会話が聞こえてきた。


「やっぱり、オーバーランはできないだよね。」

ミルが呟いた。



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