第68話 アルドウェン攻略
「グレコ、なんて馬鹿な約束をしてしまったんだ!」
転移の魔法でカイの魔道具屋に返ってきた二人は、サラも交えて、グレコが切った啖呵について、話し合っていました。
「いや、金なら、実際、今でも100万Gぐらいは余裕で用立てられるんだ。カイと一緒に行ったモンスター狩りの報酬、折半だろ? カイは魔道具屋の経営に使ってしまうが、俺は特に使いみちがないからな。貯金されるだけってわけだ。実際、1ヶ月もあれば、通常のダンジョン探索でも、残り100万ぐらい稼げないこともない」
「だったら、アルドウェンを倒すとまで言う必要は・・・」
「アルドウェンは、この街のダンジョンの主、倒せば名実ともに間違いなく最強の冒険者と呼ばれることになる。金持ちのボンボンに、一介の冒険者が対抗しようと思ったら、最強の二つ名ぐらい必要だろう」
「なんで対抗せねばならんのだ」
「おまえを取られないためだよ!」
「・・・!」
カイは赤くなって横を向いてしまいました。
「心配しなくても、取られたりしない・・・」
「へたれのグレコさんに、珍しく火がついてしまった以上、もう後戻りはできそうにありませんね・・・カイさんのお風呂の残り湯をすすっているだけの人だと思っていましたが・・・」
「サラちゃんの中の俺のイメージ、どうなってるわけ? まあ、すすろうかとちょっと考えたけども!」
「やっぱり考えていたのか、この変態め!」
「と、とにかく、これはベリアル隊全体にも影響がある問題だ。事情を話して、協力を頼まないとな」
翌日、カイの店にベリアル隊のメンバーが集められ、グレコから事情が説明されました。
「すいません、ベリアルさん。皆。俺がカッとなって、勝手な約束をしてしまったせいで」
「グレコよ・・・リーダーの私が言うべきことを、よくぞ代わりに言ってくれたものだな・・・」
「グレコさん・・・もう花街に一緒に行くこともなくなるのですね・・・」
「グレコ、最低のへたれだと思っていたけど、やるときはやるのね。見直したわ」
「えっ?」
目を白黒させるグレコをよそに、ベリアルが宣言しました。
「ベリアル隊は、1ヶ月以内のアルドウェン討伐を目指すことをここに宣言する」
「賛成! 皆、きっかけを待っていたのさ」
「実際、第10層の第4回廊ぐらいまでは攻め込めていましたからね、最近は。第7回廊にいると言われるアルドウェンまで、あと一歩ではありましたから」
「しかし、実際は、その残りの3回廊の突破が至難だ。だいたいは魔力や体力を使い切って撤退するのがこれまでの実態だった。そのあと一歩をどうやって埋めるかだ」
そのとき、カイが口を開きました。
「私も同行する」
グレコが猛反発します。
「だめだ、だめだ! カイを危険な目には合わせられない」
「でも、グレコが危険なところに行くのは私のためなのだろう」
「違う、俺のためだ。俺がカイを誰にも渡したくないからだ」
(あっ、言った! 「誰にも渡したくない」って、へたれが言った!)
カイとグレコ以外の仲間は、皆、内心で拍手を送りました。
「グレコが勝手に危険なことをやるなら、私は今すぐエロールのところに行ってしまうぞ」
「・・・仕方ないな・・・カイはそういう女だった」
「決まりだ。私もベリアル隊に同行して、一緒にアルドウェンを倒す」
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