第51話 自動浄化の首飾り
「えー、そんなわけで、先日のモンスター・バタフライ退治におけるグレコのていたらくには目を覆うものがあった」
カイの店での新製品開発会議に、グレコとサラが出席しています。
「混乱していたグレコさんが、暴力的にカイさんに襲いかからずに、性的に襲いかかったのは、『混乱避けの冠』が不良品だったからでしょうか?」
「わからん、動作不良で中途半端に混乱が解けたのか、もともとグレコにとって『襲いかかる』という行為が性的なものだったのか、もう検証もしたくない」
グレコは小さくなって縮こまっています。
「まったく、混乱したふりを続けて、行くところまで行ってしまえば・・・意気地なしめ」
「ん?」
グレコが意味がわからないでいると、ごほんと咳払いをしてカイは話を続けました。
「いや、それはこっちの話だ。とにかく、この変態には、混乱等のバッドステータスを防止する魔道具を与えておく必要がある。麻痺や石化でも、二人の狩りのときは致命的になりかねん」
そこで、例の他社製品の「バッドステータスになったら自動的に治癒魔法が起動する」という点からは学び、かける魔法を最上級の浄化の魔法にアップデート、グレコは頭には何も被らない派だから、首飾り形式にして製作する。名付けて『自動浄化の首飾り』だ」
「賛成です! 今後、冒険者家業の人々にも販売できる可能性が高いです」
「賛成です・・・」
満場一致で製作が決定し、カイは宣言しました。
「一週間で製作して、テストのために、コカトリスを狩りに行く」
グレコが驚きました。
「コカトリスだって? あれは石化攻撃をしてくる厄介な相手だ。数匹で群れも作る。まあ、たしかに石化攻撃をしてくるモンスターとしては最弱だから、わざと石化を食らってテストをするなら、他に選択肢はないが・・・」
「グレコが『カシムの剣』で速攻で蹴散らして、残り一匹になってから、わざと無防備に攻撃を受けて石化を食らうのだ」
「うわー、いやなテストだなぁ」
「グレコが混乱したら性的に襲ってきたと、ベリアル殿に報告してもいいんだぞ」
「それだけはやめてください」
こうして、『自動浄化の首飾り』の製作が開始され、カイは約束通り一週間でそれを仕上げました。
コカトリスは高地の岩山に生息している鶏に似たモンスターです。戦うときは石化が危険ですが、狩って素材とするとその羽根が石化治療の薬の原料になるので、討伐報酬はお高めです。
カイとグレコは、コカトリス生息地にやってきていました。
「補助魔法はかけた。一匹残さないといけないので、魔法の杖による全体攻撃はできない。グレコが一匹ずつ切り倒してくれ」
「了解だ」
さて、5匹のコカトリスが現れました。
「あんたなんか大嫌い! +5」
グレコに攻撃が集まるように、嫌われ者の指輪を使います。
襲いかかるコカトリスを、グレコはなめらかな動きでかわし、身をひるがえしざまに、カシムの剣で一閃・・・刃は寸分たがわずコカトリスの首に吸い込まれ、一刀のもとに絶命させていきます。
コカトリスは数匹がかりでも、グレコの動きを捉えることはできず、攻撃は空振りが続きました。
4体を切り倒して、グレコが叫びました。
「もういいか?!」
「うむ、わざと攻撃を受けてくれ」
グレコは最後の一匹のコカトリスのくちばしを、悪魔の黒鎧で覆っていない太ももの付近で受けました。すると、くちばしで突かれた部分から、石化現象が始まり、グレコの足が石へと変わり始めました。
その瞬間、『自動浄化の首飾り』が発光しました。浄化の杖と同じ、毒、麻痺、石化、混乱などのあらゆる状態異常を回復させる最上級の浄化の魔法が自動起動しました。
石化し始めていたグレコの足が、みるみるうちに正常に戻っていきます。
「いいぞ、グレコ! とどめだ!」
グレコは、カシムの剣を一閃。最後のコカトリスを倒しました。
「実験は成功だな、カイ」
「うむ、状態異常を検知するまでに0.7秒かかったが、許容範囲といったところか。パーティメンバーから回復魔法をかけてもらうよりは速い。クールタイムは、5秒だから、次から次へと状態異常攻撃を受けると、4秒は無防備になるかもしれんが、浄化の魔法は高位魔法だから魔法石の魔力吐出量的にそれが限界だ」
「十分実用の範囲だよ。一発目の状態異常だけでも、即座に治療してもらえる恩恵は大きいだろう。これ、ひとつ買おうかな」
「グレコは買わなくてよい。やる」
「やるって、高位魔法だから上級の魔法石を使っているだろう。高価なはずだ」
「また、赤字補てんの狩りに付き合ってくれればよいわ」
こうして、『自動浄化の首飾り』がグレコに装備され、カイと二人のコンビネーションは、またひとつウィークポイントを消して、盤石に近づいたのでした。
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