第25話 アルバイト募集

「アルバイトを募集しようと思うのだ」


 カイはグレコと昼食をとりながら、言い出しました。今日のメニューは化けきのこのステーキ・・・ステーキと言ってよいのかはわかりませんが・・・あまりに豊作だったので、安く提供されていて、味は良いので二人はけっこう注文しているのです。


「へえ、どんな仕事をやらせるんだい?」


「まずは接客だな。それから、この冬注文が多くなりそうな暖房の魔導具やジュッポ、ポイズンさんなど、簡単な術式刻印で製作できる魔導具の量産だ。私は高額・高難易度の案件や、新規開発により時間を使いたいのだ」


「なるほど、悪くない案だ。ポイズンさんを量産してたのには驚いたけど。で、収入はどれぐらいになるんだ」


「週5日勤務で、月に1万Gの賃金は出せると思っている」


「それぐらい払えば、応募はあるんじゃないかな。冒険者ギルドにも仕事の募集を貼り出す掲示板はあるし、街中の職業斡旋所を利用してもいい。あ、できれば性別は女性がいいぞ。接客がメインだし、あの小さな店で、女と男が一人ずつというのは、色々と勘ぐられかねない。それに、カイの店の客層はニーズが色恋沙汰の場合も多いから、そういう恋バナに乗りやすいという点でも女性がいいだろう」


「うむ、参考にしよう」


 最後の方は、カイを店で男と二人きりにしないためのはったりでしたが、カイがすんなり肯定したのでグレコは内心、胸をなでおろしました。


 そして、応募を初めて数週間が経ったのですが・・・


「・・・1人しか応募がない・・・」


「なんだよ、賃金は相場並みだし、なにか問題があったのかな?」


 と、グレコは言いながら、あったんだろうと納得していました。浮気調査に使えるような怪しい魔道具を売っているし、ときにはモンスター退治を生業にする荒くれ者もやってくる、そんな魔道具屋で働きたい人は少ないに違いないのです。特に女性なら、自分の貞操の評判と、身の安全を考慮して、遠慮したい仕事と言えましょう。グレコはここまで計算していたのでした。


 グレコにとっては、カイの店は儲からなくても、業績拡大しなくてもいいのです。その分、二人でモンスター狩りに行く機会が増えるのですから・・・


「まあ、しかたないよ。で、応募してきたアルバイト候補はどんな人なんだ?」


 カイは、いつもの無表情な顔を少ししかめて答えました。


「それが・・・12歳の少女なのだ」


「な・・・なんだと?」


 グレコは、女性限定にすれば、まさか応募があっても、中年女性だろうと予想していたのに、なんと幼女とはと驚いてしまいました。


「それで、グレコに頼みがあるのだが」


「うん」


「採用面接に同席してほしい」


「俺がか?」


「私は面接というものをしたことがないのだ。それに基本的に人見知りで魔道具以外を見極める目を持っていない」


(自覚はあったのか)


「だから、グレコにも同席してもらい、人物評価に協力してほしいのだ」


「なるほど、わかった。俺で役に立つかわからないが、協力するよ」


 こうして、二人は、少女の採用面接に望むのでした。

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