第5話 コボルトとの戦い
「コボルトは犬の仲間みたいなもんだから、群れを作るからな・・・」
グレコが森の探索を一休みして、カイに話しかけました。
「俺の囮作戦で、10匹ぐらいまでひきつけても、それ以上の数がいれば、カイに攻撃が向かうかもしれない。補助魔法はカイにもかけておいたけど、もとが冒険者じゃなくて魔道具屋の娘・・・身のこなしは一般人と変わらないから、襲われて無事でいられるかどうか・・・あまり受けたくない依頼だったな」
「しかたない、支払期日まで猶予がないのだ。他によさそうな依頼もなかった」
「できれば、身を隠して、コボルトに見つからないようにしながら、魔法の杖を使ってくれ」
そうして、今回の討伐対象であるコボルトを探索していると、群れが見つかりました。
「15匹か・・・少し多いな」
「ある程度、ひとかたまりになっていれば、雷撃の杖を+3で2連射すれば、一撃で殲滅できる」
「ひとかたまりにするために、俺が囮になるんだが・・・カイに気づいてくれるなよ・・・」
そうして、グレコはそろそろとコボルトの群れに近づきます。カイは茂みに身を隠しました。
「うおらー!」
グレコが叫び声をあげて、コボルトの注意を引きながら、群れの中に突入します。そして、いつもどおり、防御に徹して、カイの魔道具での攻撃を待ちました。
15匹のコボルトは、そのほとんどがグレコに襲いかかりましたが、なんと1匹だけ、茂みに隠れていたカイに気づいて、そちらに襲いかかろうと走り出しました。その距離は20mほど。
「雷撃の杖 +3 2連射」
空間から雷撃がほとばしり、グレコの周りに固まっていたコボルトたちを焼いて倒しました。しかし、残った1匹のコボルトは雷撃の杖の効果範囲に巻き込まれず、カイに向かって走ってきます。
「カイ! 間に合え!」
周囲のコボルトが絶命して囮役から解放されたグレコが、カイに向かって走るコボルトに追いすがります。
そして、コボルトの持つナイフがカイに届こうとする直前、グレコは自分のブロードソードをコボルトの背中に投げつけました。
それは見事に命中し、最後のコボルトは、カイに手をかける前に倒れました。
「大丈夫か?! カイ!」
グレコはカイのもとに走り寄ります。
カイは突っ立ったまま、うつむいています。
そんなカイの顔を覗き込もうと、グレコがカイに近づくと・・・
ポスっと、カイがグレコの胸にパンチをしました。
「どうしてちゃんと囮役をやらないのだ・・・」
「いや、俺はちゃんとやったぞ。ただ、コボルトの数が多すぎただけで・・・」
「怖かったではないか」
「えっ?」
「グレコは、私を守らねばならんではないか」
そういって、カイはグレコの胸をげんこつでポスポスと叩き続けました。
「あ、ああ、そうだな。俺はカイを守るよ。剣を投げるのが間に合ってよかった」
グレコはカイの背中に手を回して、背中を抱き寄せました。その間も、ポスポスは続いています。でも、振りほどくような様子もありません。
グレコは、なんだか今日はイケそうな気がしました。
「今後はちゃんと守るって、完璧な囮役になって、絶対に私のところにモンスターがこないようにするって、約束する?」
「ああ、約束するさ!」
「絶対だよ! ・・・さて、コボルトの遺体を回収するか」
「えっ、あれっ?」
カイは何事もなかったかのように、早速手際よく、転送印でコボルトの遺体を冒険者ギルドの回収倉庫に転移させていきます。
「今の流れで・・・?」
グレコはがっくりとその様子を眺めるのでした。
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