第4話 探魂の首飾り

「グレコ、赤字だ。冒険者ギルドに依頼を探しに行こう」


 武器屋で剣を物色していたグレコのところに、突然、カイがやってきました。


「うわっ、びっくりした! なんで、俺がここにいることがわかった? ていうか、いつもいつも、俺のいるところにすぱっと現れるよな、カイは」


「女の勘だ」


「まじで」


「嘘だ」


「嘘かよ」


 武器屋の店主が怪訝そうな顔をしたので、二人は店を出ました。そして、近くの喫茶店のテラス席に座り軽食を頼みました。


「魔道具の力だ」


「人の居場所がわかる魔道具があるのか?」


「私が開発した。もともとダンジョンなどで遭難した者の行方を探すための、探魂の魔法というものがあるのだ。東西南北の方向と大雑把な距離がわかる。これを使えば、居場所を探したい相手の付近に近づくことができる。探魂の魔法を繰り返せば、徐々に精度を上げて居場所に近づいていき、ついには見つけられるというわけさ」


「その魔法を魔法石に封入して、魔道具として回数無制限に使えるようにしたと?」


「そうだ。私の首にかかっているのがそれだ。名付けて、探魂の首飾りだ」


「そういうレスキュー的な仕事に役立つのはわかるけど、平時に使用するのはどうかと思うんだよな・・・だって、どこにいても居場所が見つけられてしまうんだろ。つまり、その、プライバシーとかそういう面がさ・・・」


「そうだな。よく、旦那の浮気を疑った女房、あるいはその逆の旦那が、大枚はたいて買っていくな。うちの売れ筋商品ではある」


「世も末だな・・・そういえば、例のカイの魔道具威力倍増の効果は、探魂の首飾りでも発揮されるのか?」


「うむ? されるが、それがどうかしたか?」


「ひとつ聞くが、どれぐらいの精度に増大するんだ?」


「方位が360度を1度単位、距離が1m単位でわかるようになるな」


「おい! それだと、俺が家の中にいたとしても・・・」


「うむ、家の中でさらに、寝室にいるか、トイレにいるかまでわかるな」


「オー・マイ・ガッ!!」


 カイは、だからどうしたとでも言うように、軽食をほおばっています。


「カイ・・・普段威力倍増はかけてないよな?」


「何を言う、かけるに決まっているじゃないか? 戦闘中に使用するものと違って、破損などしてもさしせまった危険があるわけでもないし、攻撃性の高い魔法ではないから暴走の危険もない。フルパワーで威力倍増するに決まっているだろう?」


「うわぁーーーー!!!」


「そういえば、昨晩は花街の中にいたようだが、何をしていた?」


「ち、ちがう! あれは先輩に誘われて・・・飲んでただけだし。それ以上のお店には行ってないし!」


「私は花街の正確な地図を持っていないのでな、地図と突き合わせないと、花街のどの店にいたかまでは特定できないが」


「そうか! 助かった! いや、別にやましいことはない。大丈夫だ、俺。しっかりしろ」


「今度、花街の地図を買っておくよ」


「ぐっはぁぁーーー!!!」


「で、赤字補てんのモンスター狩りだが・・・」


「はい、誠心誠意、喜んでつきあわせていただきます」


 こんなわけで、グレコはカイの頼みを断れないのです。

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