ヤンデレ彼女に刺し殺されたので異世界で素朴な彼女を作ろうとしたけど、ここでもヤンデレに愛されて命が危ないです

タイロク

第1話 嵐の後の……

 催眠術にかければ前世の記憶を辿れるそうだが、そんなことをするまでもなく、俺はただ目を閉じるだけで前世の記憶……もとい、一人の女の顔が思い浮かぶ。


 だが、今は思い出すよりも先に、考えなきゃならないことがあった。



「はあ……」


 思わずため息が漏れる。


 目の前に広がるのは、瓦礫の山。そして――




「ああっ! 大丈夫ですかユウ様!? お怪我は!?」


 白い肌と髪が特徴的な少女が俺の右側から抱き着いてくる。


「だいじょうぶ、ゆーくん!? ケガはない!?」


 今度は、長い黒髪の少女が、俺の左側から抱き着いてきた。



「大丈夫? 怪我はない? 何を言っているんですか貴女は。こうなったのは貴女のせいでしょう?」


「はあ? 先にけしかけてきたのは貴女でしょ? ていうか、なに当たり前みたいにゆーくんの傍にいるの? 離れてよ……ねえ……」


「それが当たり前だからです。ユウ様は、私の、伴侶ですもの。貴女こそ離れなさい。全く、汚らわしい」


「あはっ! あはははっ!! ゆーくんゆーくん、この女おかしいよ! 汚いのは自分なのに! おっもしろぉい!」




 一触即発の、ヤバい女が二人。


 ヤバいよヤバいよ。


 このままじゃ俺また死んじゃうよ。


 俺は現実から逃げるように目を閉じると、深い深いため息をつく。


 これからどうすっかな。マジで。



 他人事のように考えつつ、俺はどうしてこんなことになっているのか、記憶を辿るのだった――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る